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2020年2月22日

2020春闘
カジノ/「成長戦略の目玉」は幻想

鳥畑与一静岡大学教授に聞く


 

 さまざまな問題が指摘されるカジノ。安倍政権は「成長戦略の目玉」と位置付けていますが、海外のカジノ事情に詳しい鳥畑与一静岡大学教授は「幻想に過ぎない。むしろ地域経済を荒廃させるビジネスモデルです」と批判しています。

カジノは「ゼロサム」/勝者に奪われる消費購買力

 鳥畑教授がまず指摘するのは「カジノはゼロサム」。一方が得をすれば、他方は損をする、つまりプラス・マイナスはゼロ。新たな富を生み出す営みではなく、単に所得が移動するだけと指摘します。
 ギャンブルをする人々から、カジノ業者にお金が吸い取られていくということです。もちろん、施設ができれば雇用やゲーム機器などの需要は生まれますが、効果は限られます。
 「ギャンブルで移動するのは、生活費や貯金など、本来別の目的に使われていたであろうお金です。これによって負けた人の住む地域から消費購買力が失われていくのです」と鳥畑氏。
 カジノ業者にプラスの効果があれば、敗者にはマイナスの影響がある――それがゼロサムの意味です。業者がもうけるために、多くの人たちが貧乏になるビジネスモデルが成長戦略になることはありえません。

「共食い効果」無視/囲い込みで廃れる地域経済

 カジノ誘致を目指す自治体は、税収増や経済波及効果を強調します。でもそれらの試算では「共食い(カニバリゼーション)効果が考慮されていません」と、鳥畑氏はいいます。
 共食い効果とは、カジノ開業によって周辺地域の消費が減少すること。統合型リゾート(IR)の形でカジノをつくれば、施設内のレストランやホテル、娯楽施設などの料金を安くし、施設内に客を囲い込むのが一般的な手法です。この結果、周辺の地域経済はさびれます。
 「ラスベガスに次ぐ規模のカジノがある米アトランティックシティーは人口5万人。年3千万人が訪れますが、周辺のホテルやレストランはつぶれ、荒廃した街になっていました」。
 ギャンブル依存症や犯罪に対処しなければならない社会的コストも増大します。マイナスの経済波及効果は大きいのです。

海外富裕層は来ない!/日本の中間層が食い物に

 カジノが経済的に成功するとすれば、外国人観光客があふれるほどやってくるケースだけです。でも鳥畑氏は「難しいのではないか」。
 推進派はマカオやシンガポールのカジノを参考にしているといわれます。中国の富裕層を呼び込んで一定成功しているためです。
 問題は、そうした中国富裕層が日本のカジノに来るかどうか。「両国は中国と地理的にも近く、中華圏という文化的言語的近似性もある。富裕層が大金を持ち出してマネーロンダリングする『ジャンケット』という裏技も使える。日本とは決定的に異なります」
 百歩譲って日本の富裕層はどうでしょう。鳥畑氏は「日本の税務署に目を付けられるくらいなら、マカオへ行きますよ。結局、カジノ業者の食い物にされるのは、年金生活者を含む日本の中間層でしょう」と警鐘を鳴らします。(連合通信) 


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