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2014年12月28日

ワークルールを学ぼう
〈働く・最前線からの告発〉

ジャーナリスト・東海林 智

 高校や大学の教育現場で、生徒・学生に労働基準法を教えるなど労働教育への取り組みが広がっている。12月20日東京都内で、労働教育の実践を紹介するシンポジウムが開かれ、100人を超える教育者や弁護士、学者、労組員が参加、関心の高さをうかがわせた。

▼違法企業から身を守る

 シンポを主催したのは、労働法学者や教員、NPOでつくる「労働教育研究会」など。研究会は、労働法を無視して若者を使いつぶす「ブラック企業」の広がりに危機感を持つ人々が、「若者の身を守るためにも労働法を学校で教えなければ」と、学習会を重ねて準備を進め、最近発足させた。

 ある高校教諭は「生徒は、8時間休憩なしとか残業代がきちんと払われないなど違法な状況でアルバイトしている。労働者の権利や法律を学校できちんと教えなければ、それが普通なのだと思ってしまう」と危機感を露わにしている。研究会の呼びかけ人の一人、宮里邦雄弁護士は「ブラック企業に見られるように、労働法が守られない状況が常態化してしまえば、ルールなき雇用世界になってしまう。きちんとルールを覚え、使えるようにするのは大事で、教育現場の取り組みの重要性が増している」と話す。

▼高校生も意義を実感

 シンポでは、神奈川県立田奈高校の吉田美穂教諭がワークルール授業の実践を報告。アルバイトを体験している生徒が多い現状を考え、最低賃金や残業代不払いといった事例をクイズ形式で教えている。次の授業にはNPOの「POSSE」のメンバーも参加、ワークショップ方式で討論しながら、問題を抱えた際の相談先や解決法を具体的に学ぶ。

 授業後、最低賃金以下で働いている生徒が相談に訪れた。新しい最賃額に更新されず、古い最賃のまま働かされていた。バイト先に連絡すると、新しい最賃額が適用されたという。吉田教諭は「生徒は知識を身に付け、それを使うことで賃金が上がった。ワークルールの意義を感じている」と話した。

 働く者の権利を知り、ワークルールを有効に使うことは、人の尊厳を守り、人間らしく働くという意味においても重要だ。ブラック企業に使いつぶされ、メンタルを病む若者が増えている現状では、なおさらそう思う。

▼働く者にも不可欠

 ところで、ワークルールを学ぶのは、学生だけで良いのか。そんなことを思ったのは、厚生労働省が先日発表した労働組合の組織率のことが頭にあったからだ。

 推定組織率は4年連続で低下し、17・5%(前年比0・2ポイント減)だった。組織率が長期間にわたり下がっている。10年以上、労働問題を取材しているが、かつて組織率の低下は大きなニュースになった。ところが、近年は短いニュースとしてしか扱われなくなってしまった。それだけ、労組の存在感が低下しているとも言える。

 だが、本当は違う。安倍政権下で労働規制が緩和されようとしている今、労組は必要とされる存在だ。ワークルールも有効に使うには労組の存在は欠かせない。労働三権の意味、団結することの意義、働く者が連帯することの重要性……。そのことを、まだ知らない多くの“仲間”に語っていこう。

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