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2014年11月20日

限定正社員は「派遣」よりまし?
〈働く・最前線からの告発〉

ジャーナリスト・東海林智

 解散風の影響か、臨時国会に提出されていた労働者派遣法「改正」案が、先の国会に続いてまたしても廃案が確実になった。衆院・厚生労働委員会で「改正」案についてギリギリの攻防を続けているとき、一つの興味深い論争があった。

▼常用型派遣の正社員

 きっかけは、派遣会社のスタッフサービスが始めた「ミラエール」という常用型派遣を用いた新たな事業についてだ。同社は労働者の募集に際して、「正社員から始める未来」をキャッチコピーに、システムを説明する図でも常用型派遣の労働者を「今回採用する正社員」と表現している。

 これに民主党の山井和則議員がかみついた。山井議員は「常用型でもあくまで派遣先で働くのだから正社員ではない」というのだ。議員によれば、就活中の大学生が正社員との触れ込みに申し込んだら実際は派遣だと知りショックを受けたなどの例もあるという。

 確かに、常用型派遣は「一年以上の雇用見込み」があれば、常用型として扱える。そういう意味では、期間の定めのない雇用を正社員と規定すれば、正社員とは呼べないケースがあり、同社が「正社員」と触れ込むならば、その中身が問われるところだ。

 同社広報に取材すると、ミラエールで雇用する常用型派遣の契約は、期間の定めのない無期雇用だと言う。では、派遣先の都合などで仕事がない期間の賃金はどうなるのか。仕事が無い時でも60%の賃金が補償されるという。基本給は20万円で、派遣先の仕事の内容により、賃金は上下し、賞与や退職金、交通費なども規定により支払われるのだという。こうなると、働く場所は派遣先でも、派遣会社から見れば正社員と言ってもうそはない。これまでは、無期雇用ではない「なんちゃって常用型」が多く、08年のリーマンショックの時に、次々と解雇されたことは良く知られる。そういう意味では、このケースでは安定した雇用に変わると言える。

▼解雇の不安は消えず

 ただ、もう一つ重要なことが分かった。ここで雇われる人は「限定正社員」の扱いになる。事業は首都圏、名古屋、大阪で展開するが、それぞれの地域限定雇用であり、首都圏は東京、神奈川、埼玉、千葉の各都県ごとの限定社員になるという。
 安倍政権が鳴り物入りで広めようとしている限定社員。もしかしたら、ここに秘密があるのかも知れない。限定正社員は、非正規より安定はするものの、勤務地や職務など限定の要件がなくなれば、解雇しやすいのではないかと指摘されている。休業補償があるというが、限定正社員であることを理由に「派遣先がなくなった」と解雇されてしまうのではないか。また、地域限定を理由に同じ常用型なのに、東京と他の地域で賃金が違うなどということも予想される。

 こうみてくると、安倍政権は相当考えて規制緩和を提起しているのではと思う。もちろん考え過ぎかも知れないが。いずれにせよ、甘くみてはいけない。衆議院解散を機に改めて、そう思った。

〈用語解説〉限定正社員

 職種や勤務地、労働時間などを「限定」して働かせる社員のこと。無期雇用とはいえ、正社員より安い賃金が想定されています。リストラでその人の職種がなくなったり、事業所が閉鎖されたりした場合、職種転換や配転を検討せず解雇しやすくすることを狙っています。財界団体の経団連が要望し、政府の規制改革会議や産業競争力会議が提言するなど、安倍政権の下で導入の動きが強まっています。

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