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2014年11月18日

13年勤めた派遣先をクビに
これじゃあ輝けない

専門業務のベテラン女性

 「残酷な仕組みです」

 13年間同じ派遣先で働いた末「仕事がなくなった」の一言で雇い止めにされた女性は、「派遣労働」をこう表現した。50歳を過ぎ、オフィス事務の求人を探すのは極めて難しい。今は雇用保険で命をつなぐ。

▼若い女性に取り替え

 30代後半で、ODA(政府開発援助)など建設技術コンサルタント業務を行う派遣先で働き始めた。契約は、期間制限のない専門26業務。派遣会社は業界最大手だ。

 社員は海外出張が多く、留守がち。どんな仕事でも引き受けた。進捗表、外注文書の作成のほか、出張費清算、電話応対、パソコンのウィルス対策。契約にない業務も多い。社員の結婚式は二次会にも出席し、出産祝いも贈った。意識も仕事の与えられ方も「同じ職場の同僚」だった。

 「期待されたり、頼りにされることが嬉しかった」と振り返る。

 だが、転機が訪れる。同い年の上司の就任を機に、今年初め、新しく来る年下の派遣の女性と仕事を共有するよう言われ、「彼女がいけそうであれば契約を終了する」と言われた。頭が真っ白になった。

 新しい上司はずっと同じ部署だった。「13年前、当時、彼が無断欠勤の常習犯だったことを知っている。そのことを何気なく他の同僚に話してしまっていた私に、『いてほしくない』と思ったのではないか」と思い返す。

 以前、10年間働いてきた別の部署の派遣の女性が、上司と行き違いがあり、1カ月後に辞めさせられたことがあった。その女性は悔しさのあまり泣いていた。今の自分の姿と重なる。

 「結局、上司にとって使いやすい、若い女性に取り替えたかっただけではないか」。この疑念は今も消えない。 

▼労働者守らない仕組み

 派遣会社は全く頼りにならず、まず労働局に相談したが、「私たちは調査はできても労働者の雇用は守れないのです」と済まなそうに言われた。その後訪れた労働基準監督署では「派遣先は『業務がなくなった』と言っている」と伝えられるばかり。契約打ち切りの本当の理由は分らなかった。

 派遣契約は商取引であるため、派遣先に「任せる業務がなくなった」と言われれば、「労働行政としてそれ以上踏み込んで検証する仕組みにはなっていない」(関口達也東京ユニオン書記長)という。

 奔走むなしく、ユニオンと出会う前に女性は雇い止めの憂き目に。最後の出勤日には仕事のメールを全て削除し、誰にもあいさつをせず職場を去った。

 「社員と同じように働かせながら、辞めさせる時だけ派遣制度がにょきにょきと立ち上がる。13年勤めたのに何の実績も残らない。残酷な仕組みです」。現在、「派遣先は直接雇用を申し込む義務があった」として、都労委で係争中だ。

▼「女性の活躍」は困難

 現行の派遣制度は、女性のケースが示すように、働くことの尊厳や雇用を守る仕組みにはなっていない。雇用責任を負いたくない企業にとって便利な制度なのに、雇用が派遣で一色にならないのは、「派遣労働は臨時的・一時的な業務に限る」という大原則が辛うじて保たれてきたからだ。だが、安倍政権はこの最後の歯止めに手をかけた。企業の利用制限を取り払う法改正を進めたのである。

 派遣就業者数は、製造業務への派遣解禁(04年)以降男性が一定増えたが、一貫して女性の方が多い。法改正で真っ先に影響を受けるのは女性の労働だ。

 「女性の活躍推進」と言いながら、他方で不安定雇用に突き落とす安倍政権。この矛盾への疑問に今も何も答えていない。

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