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鳥獣被害で山の崩壊≠煖Nきている
被害つづき農家に深刻な打撃

野生鳥獣の被害対策について聞く

 実家のまわりを猪がうろつき夜は出られなくなったこと、舞鶴での猿シンポに参加したこと、京都大学芦生研究林のすさまじい鹿被害を見たことなどから、野生鳥獣の被害対策に関心をもったという府職員OBにお話を聞きました。

●京都の被害は全国でワースト5、生産額に対する被害率は全国1

Q:鹿や猪、猿等が増えて農業に影響が出ているそうですね。
A:最初に、お断りしなければなりません。私は、普及センターでの現職時代に問題の本質をつかむことなく過ごしてしまった反省も込め、この問題に取り組んでいます。ご質問の野生鳥獣の被害は、拡大する一方で深刻な状況にあります。特に府の中北部の中山間地区では、農業が続けられるかどうかに関わる最大の問題の一つになっています。
(民家の中まで入り込む野猿)

Q:府内全体では、どの程度の被害となっているのですか。
A:農水省の発表によれば、平成20年度、京都府における野生鳥獣による農作物被害は金額で7億4千万円、面積では830ヘクタール。被害額・面積ともに近畿最悪、金額では全国でもワースト5に入っています。しかし、農家の実感に近い「生産額に対する被害率」で見れば、京都府はダントツの全国一です。さらに注目すべき事は、被害に耐えられなくて作らなかった分は計算に入らないし、何よりも農業生産に希望が持てなくなる「精神的被害」こそ最大の被害でしょう。被害の実態は、数字よりもはるかに大きいと言うべきです。

●農業、地域経済、環境面でも深刻に

Q:原因は何ですか。
A:人工林がふえたこと等から山に餌が少なくなった、ハンターの減少と高齢化、温暖化で獣の生存率が高まった等、多くの原因が言われていますが、より根本的には農業・林業の衰退によって山の獣がせり出し≠トきたことにあると思います。

Q:問題の重大さを強調されていますね。
A:はい。このままでは、獣が中山間地域における農業と集落の「最後の追い出し役」になりかねません。その上、府内の一部では山肌の植物を鹿が食べ尽くす深刻な事態がはじまっており、山肌の露出から土砂崩壊の兆候が全国的に見られると指摘されています。農業と食料、地域経済、さらには環境問題としてもゆるがせに出来ない問題に発展していると思います。

Q:行政としての対応はどうなのですか。
A:国も含め認識が甘かった、立ち遅れた事実は否めないと思います。国の担当者も「農業被害よりも保護中心で考えて来たことは事実」とあっさり認めています。

Q:京都府の対応はどうでしょうか。
A:対策に従事している府の職員や関係者は大変な苦労をしていますが、被害の広がりを押さえられない現状があります。それというのも、当局が、事態の重大性に見合った方針と体制をとってこなかったからだと思います。

●トップの姿勢が決定的に重要

Q:といいますと。
A:奈良県では、早くから県レベルでの現地指導チームを編成して、集落ぐるみの対策に乗り出していました。兵庫県では、独自の研究機関として19名体制の「森林動物研究センター」を設置して研究や獣害に強い集落づくりに乗り出しました。京都府では、例えば研究機関には、昨年4月になってやっと農林センターに実質1・5人を配置。それまでの6年間は3年ずつ2回、任期つきの研究員1名を配置していました。ここにも、獣害問題の重大性を見ない、現場軽視の姿がよく出ています。「府は、農業法人を重視する一方で、中山間地における小規模農業を軽視し事実上安楽死を黙認している」という指摘があります。やはり府の鳥獣害対策には、知事が先頭に立った全庁的な位置づけと施策がなかったのではないでしょうか。トップの姿勢が決定的に重要だと思います。

Q:どんな対策が必要なのでしょうか。
A:被害の集中しているところからは、あきらめと行政への不信の声が聞こえてきます。まず、府のトップが現場の実情と意見をよく聞き、明確な方針と体制を打ち出すこと。獣の種類によって事情は違いますが、全体として言えば、まず増えすぎた獣を思い切って減らす方針が緊急に必要です。その上で、地域ぐるみでの取り組みが不可欠であることを大胆に提起することでしょう。あわせて、中山間地を活性化するための施策に本腰を入れること、国に言うべき事をしっかり要求することが必要です。府がやるべき事をやり、言うべき事を言って、関係者が一体となって取り組む以外に方法はないと思います。


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