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府職労ニュース



同和奨学金の返還の肩代わりを継続

30人程度学級の実現など府民要求も反映

08年京都府当初予算案についての府職労見解

 京都府は2月7日、一般会計8223億7300万円、特別会計と公営企業会計を合わせて総額1兆850億1900万円の2008年度当初予算案を発表しました。一般会計は対前年度比100・2%です。特別会計等は、独立行政法人化で医大特別会計がなくなるので、対前年度比98・5%となります。
 府民の暮らしの実態や要求運動が府政を動かし、切実な要求が前進する事業が予算化されました。30人程度学級の実現(79億円)、原油価格高騰で業績が悪化した企業への特別融資の創設、医師確保対策の強化(5・2億円)、後期高齢者医療の保険料軽減対策(府独自施策として7800万円)、省力・省エネなど経営改善につながる農業資材の共同購入等への助成、緊急雇用創出のための道路緊急安全確保小規模改良事業(10億円)、はあとふるジョブカフェの開設などがそれです。また、高すぎる水道料金が問題となっていた乙訓の府営水道についても、基本推量の見直しを拒むという政治的な判断をしつつも、府営水道料金を1トン当たり5円引き下げる条例提案がされています。一方、京都高速道路や舞鶴和田埠頭など批判の多い大型公共事業も引き続き進める予算になっています。
歳入・歳出の特徴
 歳入は、府税収入が26億円減、地方交付税等が14億円増で、差し引き12億円の減。府債(借金)発行は948億円で、前年度より90億円増え、府債残高は過去最高の1兆4287億円となる見込みです。これだけでは足りず、府債管理基金を対前年度比50億円減の190億円取崩しています。
 歳出では、4月から始まる後期高齢者医療制度など福祉分野での義務的な経費増により、民生費が前年度比5・5%伸びています。主な歳出の増は、後期高齢者医療費等60億円、教育・福祉・病院・警察施設等の施設整備費27億円、中小企業融資5億円で、合計92億円の増額を見込んでいます。

 知事は、「景気が停滞する中で府民生活を守るための緊急対策と、地域力再生の進展に重点を置いた」(京都新聞)とし、4つの重点施策で、「安心・安全、希望の京都」をめざすとしています。
 第1に、府民生活を守る緊急対策として、@緊急雇用対策、A障害者の就労支援対策、B原油価格高騰対策等特別融資対策による中小企業者・農家の経営支援対策、C後期高齢者医療の保険料軽減対策を行う、

 第2に、地域力再生の進展をめざし、@「きょうと元気な地域づくり応援ファンド」を創設し、10年間に渡り7500万円を中小企業に助成、A医師確保対策として奨学金制度の貸与枠の拡充(15名↓45名)と府立医科大学定員を3名増やす、

 第3に、中期ビジョンの推進として、@2年かけて全小学校で、30人程度学級の実現をめざす(教員を2年で80名増)、A地球温暖化対策費(2・7億円)を計上し、庁舎への太陽光発電設置、京都産業エコ推進機構の設立などを行う、

 第4に、府民視点に立った行財政改革の推進として、府大学法人化事業仕分けによる暮らしの予算削減など「経営改革プラン」のいっそうの推進をうたっています。
 知事には、職員犠牲の「経営改革」による予算確保ではなく、全国知事会などとも連携し、府民・国民に呼びかけて政府に攻め上る姿勢が求められます。

●京都府は正規雇用、安定した雇用に結びつく実効ある対策を

 緊急の課題である緊急雇用対策については、「経済・雇用対策会議の設置や企業開拓員の配置を柱にした雇用対策で、どれだけ目に見える成果を上げられるかが問われる」(京都新聞)とされています。また、緊急雇用創出として、道路緊急安全確保小規模改良事業に10億円をつけていますが、現場で働く労働者の時給を1000円以上にするなど「公契約条例」の検討が求められます。昨年京都産業立地戦略21特別対策事業補助金制度が要求運動で大きく改善されて障害者雇用や正規雇用に優遇措置が取ら
れましたが、実際の地元での正規雇用拡大に結びついているか、府としても検証が求められます。

●地球温暖化対策のいっそうの強化を

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次報告書は、「過去半世紀の気温上昇のほとんどが、人為的温室効果ガスの増加による可能性がかなり高い」と明言しました。二酸化炭素の増加は、80%が石油・石炭などの化石燃料の使用によるものであり、20%が森林減少によるものです。そのため、温暖化緩和策としては、温室効果ガスの排出削減、すなわち化石燃料の使用量を減らすことが根本であり、他方、全く違ったアプローチで二酸化炭素を減らす方法が森林による吸収です。
 府は、05年12月に地球温暖化対策条例を制定しました。条例は、温室効果ガスの削減数値目標の設定、家電販売店に省エネラベルの貼付義務づけ、地球温暖化対策推進本部、地球温暖化防止活動センターの設置などを定めています。新年度予算では、京都環境行動促進事業(京都CO2削減バンク=エコポイントシステム、府庁舎への太陽光発電の設置、京都産業エコ推進器この設立、地球温暖化防止府民ネットワーク会議の開催など)に2・8億円を計上しています。しかし、条例は義務等を伴った具体性のある施策は極めて少なく、努力義務などにとどまっており、「平成22年度までに、府内における温室効果ガスの総排出量を平成2年度の温室効果ガスの総排出量の90パーセントに削減することを当面の目標とする」いう目標に見合う温暖化ガスの大幅削減が期待できるものにはなっていません。地球温暖化対策のいっそうの強化がもとめられています。

●「事業仕分け」「税共同化」「給与費プログラム」一層の府政リストラおしつけ「事業仕分け」で暮らしの予算削減

 40の事務事業の廃止・休止、94事業の削減で総額48億円を減らしています。廃止事業の中で、難病患者療養見舞金支給事業費(年間1万円、総額1・2億円)、特定疾患患者等療養費見舞金事業費(年間6500円、総額1650万円)は、それぞれ「重症難病患者療養支援事業費」「小児慢性特定疾患児家庭支援事業費」に組み替えるとしていますが、新規事業費は、廃止額の2分の1にも満たず、また、議会直前の予算説明の中で初めて廃止を告げるという乱暴なやり方にも問題があります。また、近隣府県の私立高校生への学費軽減補助の新入生からの段階的廃止(年間4万円×550人)も盛り込まれています。これらは、いずれも「事業仕分け」という手法で廃止の方向が検討ものです。

●ムダや環境破壊など問題のある大型公共事業は継続

 地元の与党議員からも「船が来るのか」と整備が問題視されている舞鶴湾和田埠頭整備に13・8億円、過大な水需要予測を指摘されている畑川ダム、先の京都市長選挙でも大きな争点となった京都市内高速道路関連に3億円、国直轄事業とはいえ、淀川水系流域委員会からも事業の見直しが述べられている2つのダム建設に48・1億円、総事業費500億円以上とされるいろは呑龍に3・9億円など、ムダや環境破壊など、問題の多い大型公共事業は継続させています。

●商工行政の空洞化を懸念

 中小企業金融支援費として前年度比1・07倍の615億円を計上しています。原油の高騰など原材料の高騰をコスト転稼できない中小企業を下支えする融資の拡充は、積極的に行う必要があります。京都府はこの間、融資業務をすべて金融機関に委託していますが、中小企業者が融資制度を利用しやすくなったのかが問題です。

  「きょうと元気な地域づくり応援ファンド」が地域力再生の目玉のひとつと位置づけられています。「応援ファンド」は地域密着型の事業で、地域コミュニティへの貢献度が高い新たな事業への取組、地域資源を活用した事業創出などが目的であり、財団法人京都産業21が管理運営法人となっています。制度を活用していくためには地域の現場をよく知る職員が企業を掘り起こし、プロデュースする必要があります。「応援ファンド」では商工会・商工会議所が経営相談を行うことになっていますが、北部産業活性化拠点・京丹後の運営主体も財団法人京都産業21であるなど、財団に業務を移管する傾向が強まっています。京都府の職員が現場に足を運び、地域や中小企業の実態をつかみ、より活用しやすい制度にしていく、より実態に見合った府の施策を展開していくことと事業者が必要とする商工相談に応じられる職員の育成が不可欠です。

●学研都市関係に予算

 (株)けいはんな(資本金100億円)は07年11月に大阪地裁に民事再生手続きを申立てました。負債は約109億円で、府出資3セクで初の破たんです。京都府など株主も減資を求められる見通しです。府は、同社が所有、運営する文化学術研究交流施設「けいはんなプラザ」について「公益機能を維持するには経営を圧迫する減価償却費などを解消する必要がある」とし、再生計画案に沿って、施設のラボ棟を府が無償で譲り受け、10年間無償で同社に貸すとともに、同社が運営し、関西学研都市推進機構が施設を所有する住友ホール(メーンホール1000席)も所有権を府に移し、運営は「指定管理者も有力な方法」としています。また、「私のしごと館」も民間委託の方向が出されるなど、大型開発プロジェクトとして進められた学研都市そのものの矛盾が顕在化してきています。今後学研都市をどうしていくのか、京阪奈丘陵のあり方をどうするのか、抜本的な見直しが必要です。学研都市発新産業創出・交流推進事業費が、2000万円計上されていますが、今のやり方では、京都府や関連自治体の今後の負債を増やし続けていくおそれがあります。

●トップダウンで進む「税務共同化」

 税務共同化推進費として新規に2億円弱を計上しています。全国初≠ニなる課税・徴収を合わせた「税務共同化」は、自治体の職員の労働条件や身分を大きく左右する問題であるだけではなく、今後の京都府における税務行政の根幹を左右し府税の納税者にとっても重大な影響を及ぼす問題です。ところが、この間の京都府当局のすすめ方は、「拙速すぎる。押し付けはしないでほしい」などの各市町村の理事者や現場の声を無視して、トップダウンのすすめ方に終始しています。広域連合準備組織への経費負担等の事業は、こうした流れを決定的にするものであり問題があります。税務共同化推進費の中には、支援システムの開発と府電算システムとのネットワーク化の事業が含まれています。しかし、この1月から稼働した新税務電算システムは、トップダウンで安上がりのパッケージを安直に導入し「けっして手戻りさせない」式で十分なテストも保障しないままにすすめられました。その結果、現場で大変な混乱を引き起こしています。京都府庁内での混乱を全府の自治体に拡大することにはならないか、大きな危惧があります。

●京都府でも同和奨学金の返還の肩代わりを継続

 先の京都市長選挙では、同和奨学金の返済肩代わりが大きな問題になりました。08年度予算では、「地域改善対策修学奨励事業国庫返還金」に2億円、「高等学校等奨学金償還対策事業費」に3・8億円と、京都府でも国の制度の収入基準を超えた世帯に対し、税金を使って、事実上の給付事業を継続しているのは大問題です。また、住宅新築資金等貸し付け事業の償還についても、国の制度廃止後も府の独自施策として9400万円の補助金が計上されています。

●経営改革プランの推進で人件費はじめ172億円の削減

 給与費プログラムの推進(06〜2010年度の5年間に事務部門職員定数を約17%減)の3年目に当たる08年度は、240人の職員削減や給与構造改革などで97億円削減しています。総務省は、05年3月に「新地方行革指針」を定め、自治体に05年度中に定数削減計画など「集中改革プラン」(05〜09)の策定を押しつけ、人員削減の攻撃を強めています。全国の自治体では、施設や事業の民間化や、臨時職員の雇用が広がっています。京都府でも、同様に正規職員の非正規化がすすんでいます。府当局は、内部管理業務の非正規への置き換えで、府民サービスを低下させないと主張してきましたが、08年度は、保健所や土木事務所、家畜保健衛生所、土地改良事務所など現場の第一線で、非正規への置き換えがすすめられようとしています。このようなやり方で、公務職場の専門性の確保・向上が図れるのでしょうか。また、京都府自らが、不安定・低賃金の非正規労働者を増やし続けているのも大きな問題です。

●財政健全化法が施行へ

 財政健全化法が08年度決算から本格適用されます。この法律は自治体財政に対する行政的統制強化策であり、総人件費削減や公立病院・公社・第3セクター等のリストラにより地方経費の削減を図るものです。「財政健全化至上主義」ともいうべきもので、「自治体の仕事を捨てることによって赤字を解消せよ」というものです。いま自治体で財政健全化法に過剰反応したり、先取りをした動向も生まれています。今こそ自治の精神に立ち返り、財政情報の徹底した公開と、住民による財政学習、財政再建の取り組みが必要です。

●くらし・福祉で切実な声が出される 08予算案で府職労が府政懇談会を開催

 3月4日夜、府職労は府民懇談会を開催しました。2008年度の府予算案と組織の内容と問題点等を報告し、府政のあり方について懇談を行いました。
 森委員長は、2008年度予算について、国の3つの悪政のもとでの予算になっていることを指摘。地方交付税削減や国庫負担削減等の引きつづく地方財政への攻撃やしわ寄せ、後期高齢者医療制度等の国の制度改悪に対する緩和措置を講ぜざるを得なくなっている問題、そして政府・総務省の集中改革プランの強制のもとでの自治体「構造改革」の推進が2008年予算に大きな困難と問題をもたらしていることを報告しました。
 昨年6月に実施された行政改革推進部局が推進した事業仕分で、外部委員による1事業10分から20分の議論で、トップダウンで予算削減の方向づけがされ、今回の予算案で削減された難病患者見舞金事業、府外通学者分の私学助成金についての職場に対する頭ごなし、関係者不在のやり方を厳しく批判しました。

 同時に緊急雇用・経済対策、30人程度学級、耐震住宅助成など暮らしの厳しい現実、府民の運動、職場での真剣な政策議論を通じ予算化された事業について確信を持ち、実効あるものにし、さらに積極的な提案も府民の皆さんとともに行っていきたいとよびかけました。ひきつづき多田副委員長が2008年予算案と組織の内容や問題点・課題について報告・提案しました。

 討論では、京都生活と健康を守る会の高橋事務局長が、「福祉灯油について市町村を支援する形で応援すること。公営住宅法が改悪されたもとで入居者が死亡した際の親族承継の厳格化について、行政がホームレスをつくりだすことになりかねず、踏み切らないこと。生活保護基準引き下げについて昨年12月知事は「見直しを慎重に」の意見書も出された。地方経済や財政にとっても影響は大きく、市町村も含めひきつづき地方からの声を上げること。税共同化は、国保税も視野にいれていることや福祉と税行政が切り離され、強大な税の徴税機構がつくられることに大変な危惧をもっている。急いで、知らせたたかいを広げていくことが重要。」と発言、この他、京都総評や府会議員の方、教育関係者から発言がありました。


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