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府職労ニュース



2012年 8月30日

天ケ瀬開発優先ではなく中小河川の整備を
治水対策の抜本的転換必要

宇治市の治水対策の抜本的転換を求める声明―宇治防災を考える市民の会 

 8 月13 日から14 日の豪雨でなくなられた方、被災された方々に心からお見舞いを申しあげます。また、2000 人を超えるボランティアの方々が駆けつけてくださった事に、地元の一員として深く感謝致します。

 新聞報道によれば、14 日午前3 時からの1時間に78.5 ミリ、同3 時30 分からの10 分間雨量では20.5 ミリを記録、13 日午前7時から14 日10 時40 分までの総雨量は311 ミリに達しており(宇治市災害本部発表)、死者・行方不明者2 人、被災家屋は2060 戸を超えています。山間地域での孤立や、基本生活資産への打撃のほか、これまで水害に見舞われる事がほとんど無かった、東宇治地区の戦川流域での広域的な越流・内水被害、堂の川の氾濫、弥陀次郎川の2 度の決壊など、歴史都市宇治の防災上の弱点が浮き彫りにされた事態になりました。

 今回の水害をもたらした雨は、確かに記録破りではありますが、それ故にこそ、災害の実態を正確にとらえるとともに,これまでの災害対策の検証を厳密に行う必要があります。

 今回の水害の特徴は宇治川に流入する中小河川の氾濫が大きな被害をもたらしたことです。氾濫した河川では多くの橋に流木が詰まって流れを堰き止めたため、溢れた水が住宅を直撃し、広い範囲を浸水させ、大量の土砂を堆積させました。被災者の体験から、このような形での水害が、降雨の極めて早い段階におきたと考えられます。それ故、何時に、何処で氾濫が始まり,被害がどのように拡大していったかを正確に知り、防災上の問題点を明らかにする必要がある
と考えます。

 今回の水害の背景には、間違いなく山地、丘陵部における開発があります。山稜部にはゴルフ場があり、丘陵部では宅地開発が急激に進行してきました。東宇治地域にはかつて多くの水田や茶畑がありました。それが生産緑地法の改正や、農地の宅地並み課税実施に伴って、宅地開発がすすみ、農地が大型マンション、住宅、駐車場等に変わっていきました。宅地化した地域の排水は既存の農業用水路や、旧来のままの河川水路につなげられ、下流に行くほど排水の負荷が増す状態にありました。河川の状態は、新しい開発地の水路は規模が大きいのに、下流の改修は遅れており、しかも河川を横断する道路や線路でさらに断面が絞られています。

 弥陀次郎川決壊箇所上流においては奈良線の橋脚や旧道の橋に流木が引っかかり、同様に戦川にかかる橋の部分に流木が詰まって流れをせき止め、一気に住宅を直撃したり道路に溢れたりして被害を拡大させ、6車線化された府道の暗渠の部分でも流木と土砂の堆積がありました。

 これらの流木の多くには紛れなくチェンソーの跡があり、上流山地・丘陵地の開発に伴って放置された林地からもたらされたことが推察されます。また、木幡地区松峠付近では、山中に産廃を積み上げた造成地で土砂崩れが発生し、生じた産廃土石流が民家を押しつぶしています。

 こうした事から、山地・丘陵部における開発の実態はどのようなものだったか徹底的に調査する必要があります。
 天ヶ瀬ダム再開発計画においては、430 億円もの巨費を投入して、天ヶ瀬ダム1500 トン/秒放流計画を進めていますが、2007 年(H19)11 月4 日の塔の島地区河川整備についての淀川河川事務所の資料の中で時間あたり100 年確率で75.5 ミリ、150 年確率で82.1 ミリを想定しています。
 それには内水対策は含まれておらず、中小河川は一括してモデル化され、個々の河川がどのような特徴を持ちどのような対策が必要なのかが示されていません。

 また、宇治市発行のハザードマップに示された丘陵傾斜地における浸水範囲は、実際の被害地域と重なるところが多いことから、宇治市において、少なくともこの内容で浸水・内水対策をとっておれば、被害を大きくせずにすんだと思われます。

 今回の集中豪雨被害で、明らかになった優先すべき水害対策は、天ヶ瀬ダム再開発・1500 ㌧/秒放流計画の遂行よりも、宇治川に流入する中小河川に起因する浸水・内水・氾濫やそれらの流域対策である事が一層明瞭になってきました。

 各河川の上流部では、新しい斜面の崩壊が随所に見られ、砂防ダムは土砂・礫で埋まりきったところがあります。山地斜面で発生した崩れは新な斜面崩壊の原因になります。今後は今回ほどの雨量はなくても、大量の土砂礫の流出、土石流などの発生が懸念されます。

 今回の水害は決して「想定外」ではありません。水害対策を天ヶ瀬ダム再開発計画におぶさり、宅地開発を無計画なまま放置して浸水・内水対策を軽視してきたこと、山地開発に十分な規制を行ってこなかった事、市内の治水対策をすすめるべき重要な課である河川課を廃止するという、極めて疑問のある行政機構の改変を行ってきたこと、同様に京都府においても宇治土木事務所を京田辺市の山城北に統廃合したことなどに被害を拡大させた要因があります。早急に危険箇所の点検を行うことを始めとし、あわせて宇治市の行政機構の中に流域を含めた河川管理を総合的に扱う部署を確立し、京都府においては地域密着型の機構にあらため、国が進める天ヶ瀬ダム再開発計画を鵜呑みにせず、治水対策を抜本的に転換することをもとめます。