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府職労ニュース


2011年 3月 8日

「開国」「改革」の政治ことばに騙されるな 
内橋 克人氏(経済評論家)が講演

TPP問題で京都食健連学習講演会

 2月19日、370名超を集めて開催された学習講演会で「TPPは日本に何をもたらすか―『日本開国論』をきる!」と題して京都市内で講演した経済評論家の内橋克人さんは、TPPは13年前に当時の米国のクリントン政権が画策し、世界中からの反対運動で撤回に追い込まれた「多国間投資協定」の変形版だと喝破。狙いは外資への圧倒的優遇策の付与であり、これを許すことは日本という国の米国への明け渡しに等しいと厳しく指摘しました。
 以下、内橋氏の講演の要旨を紹介します。(文責:編集部)

TPPは米国への日本明け渡し

 1990年代半ば、「多国間投資協定」(MAI)をめぐる大きな騒動があった。アメリカのクリントン政権が多国間で資本、マネーに関する協定を結ぼうと画策した。これに対し、全世界1000を超えるNGOが猛烈な反対運動を展開して結局、クリントン大統領は構想の撤回に追い込まれた。
 このMAIの狙いがTPPに姿を変えていまに蘇った、と私は考えている。

外資への圧倒的優遇策の付与

 MAIの狙いは協定批准国が外資に内国民待遇を与えることを義務付ける。
 第1に、たとえば日本の自治体が不況対策として地場の中小企業に制度融資などを行った場合、これを協定違反とみなす。
 第2は、投資に対する絶対的自由の保障で、外資に対して天然資源の取得権まで含めて投資の自由を保障する。つまり国土の切り売りを認めなさいということ。
 第3は、たとえば地場産業育成のための公的支援を差別待遇だと外国人投資家が判断すれば、当該国政府を相手取って賠償を求めることができる。

 これらの背景にウォール街の意思があることは、いうまでもない。13年後の今日、形を変えてMAIが息を吹き返した。

日本の「4つの異様」

 菅首相はTPPへの参加を「平成の開国」と呼んでいる。前原誠司外相は「(日本の第1次産業の割合は)1・5%。そのために(これを守るために)残り98・5%が犠牲になっている」と発言したが、これを問題にするジャーナリズムは皆無だった。
 私はこれを「3つの異様」と呼ぶ。第1に菅首相の開国論の異様、第2に前原発言の異様、そして第3に新聞・メディアの異様、そして、こうしたあり方になびく日本社会全体の異様、これを含むと「4つの異様」となる。
 「構造改革」がそうであるように、「改革」や「開国」という政治ことばに騙されてはいけない。政治ことばの「ウソ」をきっちりと見抜く力をもつことが大切だ。「日米安保」以来、日本はアメリカに対し開き過ぎているほど、開いている。食料自給率が現在の40%から13%に減少するということも重大だが、TPPはけっして農業だけの問題ではない。これ以上の「開国」は日本という国をアメリカに明け渡すことと同義だ。

 東京発マスコミによる両手をあげたTPP賛成の論調は異様だ。これに対し、地方に密着するジャーナリズムの論調は違っている。京都でも、これだけの参加者が集まっておられることは、誤った東京発マスコミの発信内容を変えていく大きな力になると確信する。

国民皆保険制度の完全崩壊へ

農業だけではない〝病気の沙汰も金次第〟が現実のものに

 日本医師会や民医連など医療団体は、混合診療の全面解禁などにより、医療に市場原理が持ち込まれ、国民皆保険が崩壊しかねないと指摘しています。
 2月19日の学習講演会では京都民医連・副会長の三浦次郎さんが、米国では仮に救急車が出動しても当人がクレジットカードを所持していなければ収用せずに引き返すという事例を紹介しながら、「米国は先進国の中でも極めて特異な国でありながら、この〝スタンダード〟を世界に広げようとしている」と指摘しました。その上で、日本の国民皆保険という現状のままでは儲けの対象にならないことが明らかな元で、TPPによって自由診療を大原則に医療法人を株式会社化し、日本の医療「市場」を儲けの場に変えようとしているのが米国のねらいであり、金持ちではない人間が医者に診てもらうのは死にそうなときや、死んだときという大昔の世の中に戻りかねないと警鐘を鳴らしました。

TPP参加で農業は崩壊農水省試算で350万人が失業/北上地協が学習会

 2月25日、北上地協は「TPPで私たちの暮らしはどうなる?」と題しての学習会(11春闘連続学習会第1弾)を開催。60名の組合員が参加しました。

 講師の上原実さん(京都農民連副会長)は、この間の中東各国の政変の背景の1つに、小麦やトウモロコシが3倍、大豆が2倍など、干ばつや洪水などの影響を受けた穀物相場の異常な高騰があることを指摘。加えて、この20年間で世界人口が30%も増加している一方で耕作面積が逆に30%減少し、在庫率も35%から15%に激減している事実を指摘しました。こうした下で、各国が農地の囲い込みを進めており、「食料分担論」はもはや、絵に描いた餅であると強調しました。

 そして、▽日本は既に穀物自給率が27%という世界最大の農水産物輸入国であること、▽農産物の関税も米国に次ぐ低さであること―を指摘した上で、仮にTPPに参加することになれば、農水省試算でも350万人の失業者が発生するなど、日本の農業は文字どおり崩壊すると、具体例を挙げて指摘しました。最後に、現在、全中は1千万署名をとりくんでいること、当面のいっせい地方選挙の結果はTPPの議論に重大な影響を与えると結びました。