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府職労ニュース


2011年 6月13日

原告の請求を棄却・トステム綾部・22歳中田衛一君過労死事件 
 京都地裁の不当判決に抗議する声明

中田さんの過労死・労災を求める会など

 京都地方裁判所(大島 眞一裁判長)は、2011年5月25日、「トステム」綾部工場で長時間の時間外労働を強いられ、帰宅後に急性心停止で死亡した故中田衛一さん(当時22歳)の遺族が、死亡は過労死として同社に損害賠償を求めた訴訟で大島眞一裁判長は、原告の請求を棄却する極めて不当な判決を下しました。私たちはこの不当な判決に対し強く抗議するものです。

 中田衛一さんは、2001年6月16日、夜勤明け自宅にて就寝中に急性心停止により22歳の若さで死亡しました。両親は、常態化した長時間労働、劣悪な作業環境と精神的負担ともなう業務、過酷な深夜交替制勤務、で働かされていた」として、会社側の安全配慮義務違反を訴えていたものです。
 
 判決は遺族、元同僚のトステム綾部工場での長時間労働、劣悪な作業環境など真実を明らかにする証言についても、同工場にタイムカードが設置されていない下で、深夜帰宅していたという両親や同僚の証言は「裏付けのあるものとも言い難い」、業務が深夜交替制であったことや騒音、冷暖房がない、精神的ストレスがかかるなどの劣悪な労働環境も「ことさら重視するものではない」として、「業務が過重であったものといえない」とし、会社側の証拠を採用するだけのものでした。

 中田さんがトステム綾部工場に就職し、長期間深夜交代制勤務のもと常態化した時間外労働のもとで、疲労困憊で帰宅し就寝につく息子さんの姿、体重が極端に減少していく状況を日々見ながら、ともに生活し、最後は過労死という悲惨な最期を遂げた事実、「22歳の健康であった息子がなぜいのちを失わなければならなかったのか」を明らかにしたいという、両親の想いに向き合いあわず、司法の場での真相究明は全く行われていません。

 また、弁護団から提出された滋賀医大垰田医師の意見書に対しても、作業形態のみを引用しているだけで、深夜交代制勤務によって生じる疲労蓄積、睡眠の質の問題、業務における精神的負担など科学的根拠に基づく、医学的見地からの意見を全く評価されていません。

 本来、使用者が果たすべき客観的な労働時間管理(タイムカードの設置等)に対する責任に対しては、なんら言及せず被告会社が提出した時間外労働時間を採用し、さらに死亡前6ヶ月以前では月80時間を超える時間外労働があったとしながらも、死亡時には疲労は回復できたとして業務が過重ではなく会社の安全配慮義務違反はなかったとしています。

 以上の通り、判決は客観的証拠に基づかないばかりか、過労死基準を上回る時間外労働を会社が労働者に強いても、疲労回復さえしていれば、なんら会社に安全配慮義務はないということで、極めて不当で、ご両親の司法の場で真相を明らかにしたいという想い、これだけ働かせれば過労死だという多くの青年の想い踏みにじり、これまでの判例にも逆行する不当判決であり断じて許すわけにはいきません。

 今日の労働者を巡る労働状況と健康破壊は極めて深刻です。労働時間管理がなされず過酷な長時間労働を強いられている多くの若者がいます。私たちは引き続き、中田衛一君の過労死が会社の安全配慮義務違反であったという事を認めさせるとともに、すべての青年が健康で働き続けられる職場、過労死のない社会にできるよう、取り組みをすすめるものです。