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府職労ニュース


2009年10月 2日

新たに2人の教員の安全配慮義務違反を認定
 大阪高裁

京教組・京都市教組超勤裁判

 京都市教組超過勤務是正裁判 大阪高裁判決に当たっての声明

 10月1日、大阪高等裁判所第12民事部の安原清蔵裁判長は、京都市内の小中学校教員9名が、「無定量な超過勤務の是正」を求めて行った超勤是正裁判の判決で、新たに2名(合計3名)の教員に対して、京都市に安全配慮義務違反があったことを認定し、損害賠償を認める画期的な判決を行いました。京都市教組の声明を紹介します。

 10月1日、大阪高等裁判所第12民事部の安原清蔵裁判長は、京都市内の小中学校教員9名が、「無定量な超過勤務の是正」を求めて行った超勤是正裁判の判決で、新たに2名(合計3名)の教員に対して、京都市に安全配慮義務違反があったことを認定し、損害賠償を認める画期的な判決を行いました。

 新たに認定された小学校教員について判決は、週案等の管理職のコメントで、「毎日遅くまでありがとうございます」等の記載があったこと、さらに、研究発表校の教員としてその準備に相当の時間を費やしたこと、学年主任として野外活動の準備に労力を費やしていたことなどの過重な勤務実態を認定しました。そして、校長が勤務実態を認識していながら、勤務が過重にならないよう配慮しなかったことを、安全配慮義務違反があったとしました。さらに、もう一人の中学校教員について判決は、生徒指導部長として生徒指導が困難な学校で、空き時間のパトロール、下校指導、夜店のパトロールなどを行ったこと、また、養護施設担当として養護施設での学習補充指導等に従事していたこと、そのため、教材研究やテストの採点などが時間外や持ち帰りにならざるを得なかったことなどの勤務実態を認定しました。そして、同じくこれらの実態を校長は把握していながら、勤務が過重にならないよう配慮しなかったことを、安全配慮義務違反があったと認定しました。同時に、京都地裁で認められた教員については、京都地裁の判断を維持し、安全配慮義務違反があったとしました。

 今回の大阪高裁判決には大きな意味があります。ひとつは、中学校だけでなく、小学校教員についても安全配慮義務違反が認められたことです。さらに、仕事内容についても決して特殊な例ではなく、全国のほとんどすべての学校の教職員が、日常的に行っている業務や持ち帰り仕事をせざるを得ない実態を含めて、その勤務実態を正確に認定し、安全配慮義務違反による損害賠償が認められたことは、極めて画期的な判断と言えます。

 さらに、大阪高裁判決はいくつかの点で京都地裁判決に追加・修正を加えています。
@安全配慮義務の認定に関わって、「・・使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことのないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の上記注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである」との最高裁判決を引用し、市教委の責任を明確にするとともに、現場の校長の管理監督責任をいっそう明確にしました。

A京都地裁判決が、教員に対して超過勤務手当を支給する必要がないことを理由に、「詳細な時間管理までは必要ない」とした点について、大阪高裁判決は、「平成15年時点において・・・詳細な時刻を記録することまで求まられていると解することは相当でない。」と、「平成15年時点において」との文言を挿入ました。これは、その後の労働安全衛生法の改正(医師の面接指導)を考慮し、「詳細な時間管理が必要ない」ことをその時点に限定し、現時点では勤務時間管理が使用者に求められていることをいっそう明確にしたと言えます。

 その一方で、他の6人について安全配慮義務違反を認めなかった点は大変遺憾と言わざるを得ません。判決文では、裁判所が「校長が原告教員の仕事の状況を十分把握していたかどうか」を判断基準に考慮していることが伺えます。しかし、勤務実態を把握する義務のある管理職が、勤務状況を把握していなかったことそのものが安全配慮義務違反であり、把握していないことを理由に安全配慮義務が認められないとしたら、決して容認できるものではありません。この点から、他の6人全員も認められて当然と言えます。また、「給特法」違反の無定量な超過勤務が放置されている点については、教職員がおかれている困難な状況や教育を取り巻く状況の変化に言及しつつも、従来の判決の解釈通り、「自由意志を強く拘束するような状況下でなされ」た場合に当たらないとして、その違法性について認めませんでした。

 現在、子どもの貧困問題や新しい学習指導要領の実施などによって、教職員の長時間・過密労働はますます深刻になっています。認定された3人を含む9人の原告のような労働実態は、全国のどの学校にも存在する一般的な状況です。そのことは文部科学相の調査でも明らかにされています。今こそ、文部科学省を含む教育行政は、この判決を真摯に受け止め、教職員の大幅増、30人学級の実現、教職員の勤務時間管理と超勤縮減の具体化をはかり、実効ある労働安全衛生体制の実施に足を踏み出すべきです。  

 ご支援いただいた全国のみなさんに感謝申し上げるとともに、引き続くご支援をよろしくお願いします。


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