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府職労ニュース


2009年 1月 5日

生き生き仕事できる環境をづくり大切に
宮本博司淀川水系流域委員に府職労森委員長が新春インタビュー

現場に行くことで見えてくるものがいっぱいある

 森 宮本さんが、府職労の自治研集会で岡山の苫田ダムと長良川可動堰が「私の人生を変えた」といわれましたが。

●ダムで住民に犠牲と心労
 宮本 1990年から苫田ダムに行ったんですが、それまでは建設省で全国のダム計画についてデータを見て議論し決めていく仕事が主だったんです。机の上での仕事ですね。ところが、苫田ダムの現場に勤務してショックを受けた。もし、苫田ダムの現場に行ってなかったら、私のその後の人生は変わっていたと思う。
 ダムに反対している住民だけでなく、町そのものがダム建設に反対している。当初は腹を割ってダムの話をさせていただく状況ではなかった。ダム建設による移転に同意した住民も心を痛めておられる。ダム問題で大変な犠牲と心労をかけているのが分かった。
 ダムというのは、大きな事業だし効果もあるけれども一方で大きな犠牲を強いていることを、理屈ではなく実感しました。
 再び本省に帰りダムを担当するんですが、前から決まっているからダムを造る、あるいは数字の議論だけでダムを造るなんてことは到底できない。自分自身悩みに悩んで、どうしても造らざるを得ないというダムでなければ、造るべきではない。多くの人々の納得が得られないのならば計画決定はできないと思った。そのためには計画段階の早い時期から対話することが大切。建設が始まってからではどうしようもない状況になってしまう。その思いは、長良川に行ったときにさらに強くなりました。
 そんな経験から、淀川に来たときは住民の意見に徹底的に耳を傾け、想いのキャッチボールをすることから出発して計画づくりをするという姿勢を大切にしてきました。
 森 住民の意見を大事しようという時、大切なことはどんなことでしょう。
 宮本 長良川で私が強く思ったのは、情報公開です。計画するほうに有利なことは公開するが、不利なものは隠すというのでは、情報公開ではなく情報操作です。情報をすべて出すことで、はじめて住民の方が信頼してくれる。だから情報を公開すればするほど、いい仕事ができて、やりがいもでてくるのです。
 森 京都府も土木事務所が広域的に変えられたんですが、現場が遠くなった。住民との距離も遠くなる。職員も悩んでいる状況にあります。

●現場でこそ見えるものがある
 宮本 現場行ったほうが仕事はスムースに行くんですよ。部屋の中で図面だけ見ていても、あーだ、こーだとなかなか進まないですね。そんな時、現場に行けばすぐに課題と対策がわかる。
 森 宮本さんが大阪に赴任してから淀川の自然を生かした計画をいろいろ進めたでしょう。そこでどんなことを基本にしたんでしょう。
 宮本 植物の先生や魚の先生とよく現地に行きました。単に水を流すだけの排水路を造るのなら部屋の中で設計できるんです。しかし、川は排水路ではありません。そこには無数の生き物が生きていて、まわりに多くの人々が住んでいる。川を触るのなら現地に行かないとわからない。川と付き合うには常に現地に行かないとだめ。
 森 川は生き物ですよね。ダム建設では、近畿整備局の計画に京都・滋賀・大阪の知事が大戸川ダム建設に反対した。これについてどんな考えをお持ちですか。
 宮本 大戸川ダムについてノーという意見を3知事が表明したことは画期的ですね。国がやることに知事が反対したことはあまりない。もう国は計画を押しつけるな、地域のことは地域で決めるという強い意思表示であり、大きな意味があると思います。これからの公共事業のやり方や国と地域の関係を変えるきっかけになってほしいですね。
 3知事の意見は河川整備計画策定のスタートだと思います。これから「地域力」、「住民力」によって計画の再検討を求めていく必要があると思います。流域委員会も再開して議論を進めたいと思っています。
 森 天ヶ瀬ダムの改修計画に反対する運動があるんですが、強行するのではなく、地元でどんな問題があるのか、議論してすすめる必要があると思うんですが。

●地域のことは地域が主体的に
 宮本 そうですね、今回提示された計画には、様々な課題があります。それらについて、住民の意見を聞き、住民が安心できるように対応してほしいですね。
 森 いま道州制や分権の議論がすすんでいますが、宮本さんは、どんなお考えですか。
 宮本 広域連合だとか道州制とか様々な議論がありますが、何が一番大切かというとダムの問題、川の問題もすべて地域の問題なんです。これを誰が決めているのか、一番問題なのは地域から一番遠くて、地域の実情が分からない、地域の痛みがわからない霞ヶ関が決めていることです。地域のことは地域が主体的に決めていく、公務員制度は公務員が、地域住民のために生き生きと目を輝かして仕事できるようにすることが肝心ですね。
 森 伊根町は、合併しないと選択した自治体なんですが、集落ごとに住民懇談会を持って出された意見や声を行政に生かしている。この中でいろんなものも見えてきて、住民のための行政を進めている。やっぱり住民の暮らしのところから行政を考える必要があると思っています。
 宮本 個人や家庭、そして地域ができることを行い、それを支援するのが自治体であり、国の仕事ではないでしょうか。
 森 最後に家業のことですが、木材を使った樽や桶をつくる努力をしているそうですね。
 宮本 なかなかうまくいきません。伝統的な技ですが、いまは職人さんが非常に少なくなりました。京都には昔から培ってきた技術がありますが、これを引き継いでいかなければと思っています。時間がかかるかもしれませんが、子どもや孫のためにやるだけのことをやっていきたいと思っています。  


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