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官庁速報


2009年 2月 2日

「年度内に可能」「連休明け」
支給開始の見通しまちまち−定額給付金

 総務省が総額2兆円の定額給付金と支給事務費約825億円の補助金交付要綱のほか、支給対象者などに関する質疑応答集を通知したのを受け、各市区町村は支給に向けた準備作業を本格化する。給付金本体の交付は財源を賄うための関連法が成立した後になるが、事務費については市区町村の申請に応じて速やかに概算交付する方針。同省は年度内の支給開始に向け、補正予算編成や、世帯ごとの給付リスト作成といった準備作業を急ぐよう要請している。

 これに対し、「年度内に支給を開始できる」とみる市区町村がある一方、給付リスト作成のためのコンピューターシステム改修などに時間がかかるとして、「早くても支給は5月の連休明け」とするところも。これから作業が本格化するためスケジュールは流動的だが、支給開始時期は市区町村によって開きが出そうだ。

◇補正提出、関連法後も
 焦点の一つは、各市区町村が、給付金本体と事務費を盛り込んだ補正予算をいつ編成するか。総務省は給付金の財源を賄う関連法の成立前でも、補正予算の編成は可能としている。契約や支出を伴う事務作業について補正予算成立後に着手する市区町村も少なくないとみられるため、編成時期が支給開始時期に与える影響は大きい。

 東京都狛江市(約3万8000世帯)は、給付金約11億円と事務費約5000万円を盛り込む補正予算案を定例議会初日の2月26日に提案する方針。関連法案は可決されていないが、「国の補正予算が成立したことで、給付金(事業の実施)は担保されたと判断した」という。

 しかし、中には、補正予算案の提出時期について頭を悩ます市区町村も。昨年12月、市議会が給付金の撤回を求める意見書を可決した同調布市(約10万8000世帯)は、「3月定例議会への提出を検討しているが、基本的に国会で関連法が通った後でないと出せないのでは」と話す。やはり同様の意見書が可決された兵庫県西宮市(約20万1000世帯)でも提出時期は決まっておらず、「これから議会と調整する必要がある」としている。

◇「他町村に遅れぬよう」 
政府は準備作業について、「(関連法成立前に給付金を)交付する寸前までは(実施)できる」(鳩山邦夫総務相)との見解。世帯ごとに氏名や支給額などを記した給付リストの作成をはじめ、申請書類の郵送や受け付け、庁内の出納手続き、振り込みに関する金融機関との調整依頼といった流れで作業を進め、後は住民の指定した口座に給付金を振り込むだけという状態で関連法成立を迎えることを期待している。

 兵庫県南あわじ市(約1万8000世帯)の給付金総額は約8億2000万円となる見込み。「事務処理にどれぐらいかかるか精査してみないと分からないが、年度内支給を目指したい」と担当課。「関連法が成立したら、できるだけ早いうちに支給を始めたい」と意気込む。

 高知県馬路村(約500世帯)は、給付金総額を1500万円程度と試算している。「うちの場合はほとんどが窓口(支給)になると思う」とし、「年度内に支給を開始できるのではないか」と予測する。「先行してやるつもりはないが、近隣の他町村に遅れないようにしたい。住民から、あっちは出ているのにうちは出ていないと言われるのは、お互いに嫌なものだ」と話す。

 東京都足立区(約29万3000世帯)の給付金総額は約98億円の見込み。3月中の支給開始を目指している。ただ、要綱では給付金の申請期間を各市区町村の受け付け開始から6カ月と定めているため、「(申請書の発送から)何日後に返送してくださいとは求めにくい」と担当者。システム改修や申請書の印刷などにかかる期間を想定すると申請書の発送は3月中旬ごろになるとみているので、同月中にある程度の数の申請書が戻ってこなければ支給開始が遅れる可能性もある。 

 とはいえ、金融機関への振込依頼書の持ち込みは、一定数の申請書が出そろってから行う方式でなく、毎週決まった曜日に行うことを検討しており、「3月末までに第一弾の振り込みまで持っていきたい」としている。

◇申請書チェックなどに時間
 年度内の支給開始には課題も少なくない。その一つは、多くの市区町村が給付金リストを作る上で必要となるシステム改修だ。さいたま市(約49万3000世帯)の担当者は「改修だけで2、3カ月はかかる」とし、相川宗一市長は年度内の支給開始について「非常に困難と言わざるを得ない」との見方を示している。名古屋市(約96万1000世帯)は補正予算の提出に向け議会との調整に入っているが、やはりシステム改修に2、3カ月かかるとし、担当者は年度内支給開始に対し「実現性は非常に薄い」と悲観的だ。

 一方、システム改修について「(リスト作成は)手作業ですぐできる」(長野県王滝村、約400世帯)、「業者に委託せず庁内で処理でき、それほど大変ではないと聞いている」(狛江市)とする市区町村もある。

 このうち狛江市の場合、補正予算は2月26日の提案日に即日可決される見通しのほか、3月上旬には申請書類を全世帯に郵送する予定。しかし、それでも支給開始時期は「5月の連休明けになる」と担当者。職員が手作業で行う、振込先の金融機関名や口座番号のチェックと記入ミスの修正に時間がかかることが予想されることなどを理由に挙げている。

 新潟県刈羽村(約1500世帯)などによると、これまでの窓口事務の経験から、「申請書類には○○信用組合と書いてあるのに(本当は)○○信用金庫だったり、口座番号のけた数が違ったりすることがあり得るので丹念なチェックが必要」という。年度末は転出・転入の多い時期で通常業務も忙しいため、同村でチェック作業に当たる職員は1人の予定といい、「3月中に申請受付まではできるだろうが、振り込み開始は3月末に間に合えば御の字」という。

◇細かい課題、なお山積
 一方、要綱や質疑応答集では、どの市町村にも住民登録がないホームレスらに対する特例措置や、支給基準日の2月1日以降に死亡したり、他の市区町村に転出したりした人らの扱いを示した。住民税などの滞納者に支給される給付金の差し押さえができないことや、給付金は生活保護の収入認定から除外される見込みであることも明記されている。

 市区町村からは、「要綱が出るのを待っていた」といった評価の声が上がる一方、「要綱が出ても分からない部分がある。すぐに作業に入れる状況ではない」との意見も出ている。

 2月1日より後に他の市区町村に転居した住民も、同日時点で住民登録していた自治体から給付金を受けとることになるが、市区町村には「申請書類は新住所に送るのか、旧住所に送るのか」といった疑問も。ホームレスやネットカフェ難民らが住民登録を申請してきた場合、どのようなケースなら認めるのかについても、「全国統一の基準や事例を示してほしい」と話す担当者もいる。

 また、給付金の支給事務や年度内の支給開始見通しについて慎重に考える市区町村がある背景に、何かトラブルが起これば、「市区町村の責任が問われる」との意識があるとみられる。このため、今後もさまざまな事態を想定した質問が出てくることが予想され、給付金の早期支給に向けては、こうした市区町村の不安解消もカギを握りそうだ。


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