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官庁速報


2009年 1月26日

人事院めぐる移管交渉難航
代償機能低下と猛反発−公務員制度改革

 各省庁の幹部人事一元化を目的に、政府が2010年4月の設置を目指す「内閣人事局」への機能移管をめぐる交渉が難航している。旗振り役の国家公務員制度改革推進本部は、昨年11月に決定された顧問会議の報告書を基に人事院や総務省、財務省などの関係機能を人事局に移管させる方針。しかし、人事院は公務員の労働基本権問題が解決していないことを理由に移管を拒否。総務省は行政管理局を内閣官房へ移管することには合意したものの、人事局との統合には反対している。

 これまで移管が決定しているのは総務省人事・恩給局の人事行政部門のみ。政府は改革スケジュールを定めた「工程表」を1月末に閣議決定し、人事局の組織構成も盛り込みたい考えで、甘利明行政改革担当相が関係省庁トップとの直接交渉に乗り出している。

◇「憲法上の問題」も
 移管交渉の焦点となっているのは、国家公務員法で中央人事行政機関と位置付けられる人事院。改革推進本部は幹部人事一元化の実現には、人事院が持つ給与や任免、試験などの権限を人事局へ移管させることが不可欠と考えている。同本部は公務員の労働基本権が制約されている現状を考慮し、代償機能である勧告権を人事院に残したまま、給与などの企画立案機能を人事局に移管するよう求めた。

 しかし、人事院は移管要求に「代償機能を低下させるもので、憲法上の問題もある」としてゼロ回答を突き付けた。人事院幹部は「企画立案に携わる多数の職員が人事局に移ると、官民の精密なデータ比較を必要とする給与勧告制度を維持できない。移管要求は人事院廃止と同じだ」と話す。

 同本部は省益にとらわれない幹部公務員確保のため、人事院の採用試験に関する企画立案機能の移管も求めている。しかし、これには中立・公正性に重大な問題が生じるとの指摘もある。

 独立第三者機関である人事院の行う採用試験ではこれまで不正採用などの問題が起きていないとされるが、ある政府関係者は「実は政治家らから不正採用絡みのさまざまな依頼があったが、人事院が試験を所管していたため断れた」と明かす。この点について同本部は、人事院が試験の実施や事後チェックをすることで中立・公正性を保てると説明。それでも政府関係者は「試験問題を作成する専門委員の選任などで政治からの圧力を完全排除できるか疑問がある」と指摘する。

 人事院の谷公士総裁は「内閣が各省庁の幹部人事にどう政治主導性を確保するのかという根本的な議論が顧問会議ではなかった」と批判。機能移管について「人事局の具体的な機能が明らかでない。全部移管するというのでは交渉にならない」と強硬姿勢を崩さない。

 人事院のこうした対応について甘利担当相は「今までの権限を全部温存したいという考えでは改革ができない」「人事局で戦略的に幹部人事を一元化するには人事院の機能が必要だ」と反論、移管交渉に応じない場合は「政治決断」も辞さない構えだ。

◇内閣人事局の名称変更も
 政府は、幹部人事の一元化には組織・定員管理機能も必要だとして総務省行政管理局の移管を求めた。甘利担当相とのトップ交渉に応じた鳩山邦夫総務相は、幹部人事の一元化には賛同したが、「組織・定員の査定と人事をやるところが一緒になるのはおかしい。誰それの行くところをつくらなくちゃという組織になる危険性がある」と難色を示した。

 甘利担当相は、人事と組織査定の間に「仕切り」が必要との鳩山総務相の指摘に配慮し、行管局をひとまず内閣官房までの移管にとどめた。人事局に取り込むかどうかは引き続き検討するとしている。甘利担当相はさらに、「新しくつくる局は人事、組織、両方をにらみながら機動的に対応していくということが分かるような名称にできればと思っている」と述べ、内閣人事局の名称変更に前向きな姿勢を見せた。

 移管交渉は総務省と人事院のほかに、総人件費の配分・調整機能を所管する財務省主計局や内閣官房内閣総務官室が残っている。しかし、あくまで移管交渉の最大のヤマ場は人事院。甘利担当相は「人事院は100年ぶりの改革の本質を理解していない。理解していただかないとすべてが瓦解する」と警告している。


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