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官庁速報


2009年 8月11日

 期末・勤勉手当、0.35カ月減
過去最大、月給は中高年のみマイナス−人事院

 人事院(谷公士総裁)は11日、2009年国家公務員一般職給与について、月給を0.22%、期末・勤勉手当(現行は年4.50カ月)を0.35カ月それぞれ引き下げるよう国会と内閣に勧告した。月給と期末・勤勉手当両方の引き下げは6年ぶり3度目で、景気悪化による民間企業の給与水準低下を反映した。特に期末・勤勉手当の減額幅は過去最大で、年収ベースのマイナスも過去2番目の規模となった。月給は、4年ぶりに公務員が民間を上回る「官民逆格差」が生じたが、比較的小幅だったため、初任給を含む若年層の俸給表を据え置き、中高年層に限り引き下げる。

 また、現在60歳となっている国家公務員の定年を65歳まで段階的に引き上げる定年延長を採用する方向性を打ち出した。13年度からの導入を目指す考えで、定年延長に向けた国家公務員法や給与法などの改正は来年の勧告時に求める方針だ。

◇若年層の俸給表据え置き

 今年の民間給与実態調査(民調)は、従業員数50人以上の事業所のうち、約1万1000カ所を対象に実施。調査完了率は87.8%で、約46万人の個人別給与を実地調査した。月給は、行政職俸給表(一)適用の公務員(平均41.5歳、39万1770円)が民間を0.22%(863円)上回る結果となった。

 官民逆格差を是正するため、行政職俸給表(一)は平均0.2%マイナス改定する。ただし、逆格差が比較的少額だったことや、若年層の給与水準が民間より低いことを考慮し、初任給から30歳までの俸給表を据え置きとする。

 準課長級(7級)以上の幹部職員については、一般職員より高い平均0.3%の引き下げとする。その他の俸給表も行政職俸給表(一)と同様にマイナス改定するが、医師職員の処遇確保の観点から医療職俸給表(一)は据え置く。若手研究者を対象とした任期付研究員俸給表の引き下げも見送る。

 官民逆格差863円のうち、209円を自宅の取得後5年間支給している住居手当(月額2500円)の廃止に振り向ける。国家公務員の自宅所有者向け住居手当を廃止することで、同様の手当を支給している地方自治体でも廃止が相次ぐ可能性が高い。都道府県や一般市町村では国と同様に月額2500円を支給するケースが多いが、1万円程度支給している政令市もある。

◇民間ボーナス、大幅減に

 民調結果によると、今夏の民間ボーナスは前年同期比0.27カ月の大幅減で、リーマンショックを発端とする不況の影響をもろに受けた形だ。昨冬も前年同期比0.07カ月減で、年間の民間ボーナス支給月数は4.17カ月となった。特に製造業の落ち込みが激しかった。このため、現行4.50カ月の公務員の期末・勤勉手当を、民間準拠のため0.35カ月引き下げる。この減額幅は1999年の0.30カ月を上回り過去最大となる。

 今夏の民間ボーナスの大幅減を受けて、公務員の今夏の期末・勤勉手当は5月の人事院の臨時勧告を経て、本来の支給予定だった2.15カ月から0.20カ月分が既に凍結されている。臨時勧告による凍結分は今夏の給与勧告で生じた0.35カ月の引き下げ分の一部に充当。このため、今冬の期末・勤勉手当は0.15カ月減の2.2カ月となる。

 月給および期末・勤勉手当の引き下げが勧告通り実施されると、平均月給が39万907円。平均年間給与が15.4万円減(2.4%減)の635万6000円となる。年収の減額幅としては、03年の16.5万円減(2.6%減)に次ぐ規模となる。

 月給と期末・勤勉手当の引き下げは、今回の給与勧告を受けた改正給与法の公布日の翌月から実施される。 

◇手当割増で超勤縮減へ

 超過勤務の縮減と、労働者のワークライフバランス(仕事と生活の調和)を充実させることを目的に、10年度から国家公務員の超勤手当について、月60時間を超えた場合の割増率を50%に引き上げることも盛り込んだ。民間企業や地方公務員を対象とした改正労働基準法(10年度施行)に準拠する形で、今回、給与法と勤務時間法の改正を勧告した。

 月60時間を超えた超勤分は、手当として現金支給のほか、休暇で代替する制度も取り入れる。国家公務員の代替休暇は4時間単位か1日単位となっており、例えば月76時間の超勤で4時間分を取得できる計算となる。

 また、2時間の代替休暇相当分が発生する月68時間の超勤だと、1時間単位で取得できる年次休暇2時間分と足して計4時間の代替休暇を認める。

 東京の本府省で勤務する職員は、国会対応などで連日深夜に及ぶ超勤が常態化。さまざまな政策課題を抱えているため、繁忙期に月100時間以上の超勤をこなす職員も多数いる。超勤手当の引き上げが人件費増大という本末転倒な結果を招く恐れもある。

 人事院の調査によると、08年の平均年間超勤時間数は前年比3時間増の234時間。うち本府省は前年と同じ357時間、本府省以外は2時間増の213時間だった。人事院や各府省は、超勤手当が支払われていない時間も含む「在庁時間」について、1割削減計画に取り組んでいる。

◇地域別の格差は縮小

 06年度から5年計画で実施中の給与構造改革をめぐっては、全国6地域ごとの官民格差を改革開始後初めて公表した。改革前は、民間給与が最も低い北海道・東北地域と全国平均の差は4.8%だった。今年は全国平均で0.22%の逆格差が生じ、地域別でも4地域で逆格差が発生した。逆格差が最も大きかったのは北海道・東北(2.80%)と中国・四国(2.82%)。両地域の逆格差から全国平均分を差し引くと約2.6%となり、改革前より地域間格差が2.2ポイント程度改善したことが判明した。

 給与構造改革は、民間給与の実態を公務員給与に正確に反映させるため地域間給与配分を見直すのが目的。このため、改革では公務員の基本給を平均4.8%引き下げていた。

◇定年延長、人件費抑制が課題

 年金の受給開始年齢が13年度から段階的に65歳まで引き上げられることに伴い、国家公務員も高齢期の雇用形態について再考が迫られている。人事院は「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」(座長・清家篤慶応義塾長)が7月にまとめた最終報告を踏まえ、現在60歳となっている国家公務員の定年を65歳まで段階的に引き上げることが適当との基本認識を示した。人事院は秋以降、本格的な制度設計に着手する。

 定年延長の条件を整えるため、中高年層と60歳以降の給与引き下げで総人件費増大も抑制する必要があるとしている。給与の引き下げ幅は、60歳までの中高年層の給与は段階的に引き下げ、60歳以降で一気に引き下げ幅を拡大する。

 また、幹部職員については、職場の活力維持のため60歳をめどとした役職定年制を導入を検討。役職定年後は(1)専門職として省庁で働き続ける(2)公務員の身分を残したまま公益法人や大学に現役出向する(3)加算された退職手当を受け取り早期退職する―のいずれかを選ぶことになる。

 民間企業を対象にした男性の育児休業促進策や介護中の短期間休暇制度の創設などを盛り込んだ改正育児・介護休業法が通常国会で成立したことを踏まえ、国家公務員を対象とした関係法令についても改正を求めた。

 これまで一度しか取得できなかった育児休業について、夫が妻の出産後8週間以内に休業を取った場合、再度の取得を可能にする。また、配偶者が専業で育児をする場合でも休業できるよう、妻の産後8週間を除き休業できないとしている従来の規定を廃止する。

 子どもの看護休暇制度も拡充し、小学校就学前の子どもが2人以上いれば年10日の休暇取得を認める。このほか、介護が必要な家族1人につき年5日、2人以上で年10日の短期間休暇制度も創設し、仕事と介護の両立を支援する。

◇中立・公正性踏まえた改革を

 国家公務員制度改革にも言及し、中立・公正性の確保と成績主義に基づく任用が公務員制度の根幹であると指摘。政府はこれらの基本原則を踏まえて改革を進めるべきだとした。情実人事の懸念がある幹部公務員については、日本と同じ議員内閣制を採る英国などの例を参考にして、政治からの中立・公正性を確保する人事管理の仕組みを検討する必要があるとした。

 公務員制度改革をめぐっては、政府が各府省の幹部人事を一元管理する「内閣人事局」設置などを盛り込んだ関連法案を通常国会に提出したが、廃案となった。政府案では、人事局創設のため人事院の機能移管が盛り込まれていたが、人事院は「公務員の労働基本権制約の代償機能が損なわれる」として強く反発していた。

 公務員制度改革では、公務員の労働基本権制約の見直しも検討課題に挙がっている。労使交渉で勤務条件を取り決める「協約締結権」を一般公務員に認める可否について、有識者検討会が今年中に結論を得ることになっている。一般の公務員に協約締結権が認められれば、人事院勧告制度は廃止される可能性が高い。

 人事院は労働基本権制約の見直しについて、賛否は示さないものの、(1)勤務条件決定をめぐる議会関与のあり方(2)使用者側の当事者能力(3)市場の抑制力がない中での給与決定のあり方―などを「検討を要する事項」として挙げた。

 民主、共産、社民の各党は今夏の衆院選マニフェスト(政権公約)などで労働基本権制約の見直しに賛成の立場を表明している。


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