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府職労ニュース


2009年 9月 8日

生活保護費との乖離解消を
 京都の最賃12円引き上げに異議申し立て

京都総評が京都労働局に

 京都総評は9月4日、京都地方最低賃金審議会の答申について「異議申出」を行いました。以下のその全文です。なお、本日7日に審議会が開催され異議申出について審議されますが、最低賃金の発効予定は10月17日となる予定です。

異議申出書
 最低賃金法第11条の2項にもとづき、平成21年8月20日に京都地方最低賃金審議会から貴職に答申された最低賃金の改正答申に関して以下の通り異議申出を行ないます。

【異議の内容】
(1)今年の答申は、中央最低賃金審議会が示した目安どおり12円引き上げ、時間額729円とするものです。これは、目安が示した京都での生活保護との乖離額23円を2年間で解消するとしたことからくる引き上げ額です。生活保護との乖離の出し方は、県庁所在地の級地でみることをはじめ、働いて収入を得るということを前提とした試算を行なうなどによって、最低賃金が生活保護よりも下回るということがないようにすべきで、最低賃金法9条3項について「最低賃金は生活保護を下回らない水準にする」(柳澤厚生労働大臣<当時>07年6月6日国会答弁)という趣旨が生かされることが求められていると考えます。ところが、目安は実際の生活保護の運用とは異なる方法の試算による乖離額を示しただけで、改定最低賃金法の趣旨を歪めてしまいました。 私どもは、あらためて正確な生活保護の試算を提示し、乖離額を出し直し、乖離の解消に向けて具体的にどのようなプロセスをふんでいくのか明らかにすることを求めます。

 (2)「ワーキングプア」の解消のためには、少なくとも年収200万円以上は必要であり、答申額は、こうした貧困解消にはほど遠く、大幅な引き上げを求めます。

【異議の理由】
1、生活保護との比較試算については、すでに意見書として提示しました。あらためて要点を整理しなおすとともに、若干の追加的意見を提示します。

1)乖離を出すためには、実質的な比較が必要です。実質的な比較について、あらためて新聞報道された事例(7月10日付朝日新聞)を提示します。

@ 大阪市営地下鉄で働く清掃員の男性(53歳)が6月中旬に生活保護を申請して受給が決まりました。

A この男性はビルメンテナンス会社の契約社員で、時間給は760円。大阪府の最低賃金は748円。勤務時間は午前8時30分から午後5時30分までで、実働7時間。時間外手当を含む月収は約14万円。税金や社会保険料を差し引いた手取りは約12万円。アパートでの一人暮らしで、家賃は3万4千円です。

B 生活保護の認定では、勤労控除をした男性の収入認定は91,389円。一方、生活保護の最低生活費は、家賃3万4千円を含めて11万5610円。したがて、収入との差額である2万4221円が保護費として支給されました。

C なお、大阪市は京都市と同じ1級地の1です。また、注意を要するのは、この男性の場合、住居費が大都市としては低いこと、生活保護の期末一時扶助費と冬季加算は含まれないことです。そのため、通常の試算より低くなっています。しかし、それでも、大阪の最低賃金に130円強をプラスして生活保護基準になったこととなります。

 京都総評は9月4日、京都地方最低賃金審議会の答申について「異議申出」を行いました。以下のその全文です。なお、本日7日に審議会が開催され異議申出について審議されますが、最低賃金の発効予定は10月17日となる予定です。生活保護との比較試算を実態に合わせるよう求め異議申出書を提出 こうした実質的な比較を参考として、乖離額の試算を行なうべきであるというのが私たちの主張です。

2)生活保護の試算について、私どもの考え方の要点は以下の通りです。

@ 生活保護水準以下の最低賃金となる地域を無くすためには、生活扶助費は府内級地の人口加重平均ではなく、京都市内1級地の1の扶助費を採用することが必要です。

A 生活保護制度では、働いた場合はそれに伴う経費を認めており、それに該当する勤労控除が算定されなければなりません。

B 住宅扶助費を実績値とすることは、あまりにも実態とかけ離れます。生活保護の住宅特別基準は実際に合わすためにつくられており、私どもは、その基準の最大限度額42500円を採用しましたが、これは、京都市内の住宅事情を配慮したものです。

C 上記以外に労働時間問題、負担費修正問題がありますが、これらは、できるだけ実態に合わせたものとすべきです。

3)以上のように、目安の最大の問題は、現行の生活保護との乖離額は実質的には約260円以上あるにもかかわらず、不当に低く計算していることです。実際には、最低賃金を超えた収入のある労働者が、生活保護を申請し受給する事例が生じているのです。こうした事例は、京都でも発生しており、率直に、審議会としてこうした事態を認識し、改めていくべきだと考えます。

2、最低賃金の引き上げは、「ワーキングプア」対策として最も重要な位置を占めていると考えます。現在「ワーキングプア」と一般的によばれるのは、年収で約200万円前後以下とされています。これは、この水準以下では、自立した経済生活が困難であることからきています。現在の最低賃金の水準は、こうした点からもきわめて低いものです。年間2000時間働いても、年収で150万円にならない水準です。これでは、「ワーキングプア」をなくしていくこととはなりません。早急に時間額1000円以上へと引き上げることを強く求めるものです。

3、私たちは、本来働いて得る最低生計費の水準はどうあるべきなのかをこれまでも示してきました。私たちが試算した最低生計費試算はきわめて重要だと考えています。生活実態調査や手持ち財調査をおこなうとともに、何が今日における最低生活なのかを議論しモデル設定をおこない、マーケットバスケット方式で試算したものです。2006年7月に発表した京都市内での最低生計費は、月額税込みで197,779円、年額税込みで2,373,348円でした。また、これ以降、2008年に首都圏で、2009年に東北圏での試算が実施されました。首都圏と東北圏での生計費の違いで最大のものは交通費で、地方では自動車が必需品のため、東北圏では首都圏の2倍強となりました。いずれの試算でも、年額換算すれば280万円前後となりました。
 京都の試算との違いは、一つは交通費で、京都では職住一体を基本としたため、首都圏よりマイナス約6千円、東北圏よりマイナス約3万円でした。また、京都での住居費は首都圏よりマイナス約1万3千円、東北圏よりプラス約1万1千円でした。そして、これらの結果として、消費支出が約2万円強、京都が低くなったとともに、非消費支出が、この間の制度変更もあって、東北圏と首都圏で約1万円ほど京都より高くなっていることです。このことは、京都での試算以後3年から4年あまりの間の変化を示すとともに、生計費が低くなってきている傾向が少なくとも存在しないことを示していると考えています。私たちは、こうした最低生計費試算の結果からも最低賃金の大幅な引き上げが求められていると考えます。

4、経済危機が深刻な影響を与えた中、持続可能な地域経済を形成していくためには、低所得層の賃金の底上げを行うことが重要です。京都府内で時間額1000円に改善する場合の直接的経済効果は合計約250億円で、ほとんどが消費需要にまわり、中小企業分野の需要拡大となります。こうした点からも、中小零細企業への最低賃金大幅引き上げに伴う必要な援助策をとり、経済の底上げをはかっていくことが必要だと考えます。グローバル化の中で、「ワーキングプア」が世界各国でも広がっていますが、海外では、最低賃金の大幅な引き上げが相次いでいます。経済界も歓迎する国も出てきています。

 全国中小企業団体中央会が実施している中小企業労働事情実態調査報告では、昨年の最低賃金引き上げによる影響は、「全くない」19.7%、「ほとんどない」45.9%、「多少ある」13%、「大いにある」4.9%です。
(京都の結果も傾向は変わりません)この結果から言えば、大幅引き上げを行う場合、零細事業所を中心に必要な援助策を取れば可能であることを示しています。
                                                                              以上


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