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府職労ニュース


2008年10月29日

淀川水系整備計画への賛同意見書の撤回を
「宇治市の防災を考える市民の会」が抗議

市民にとって危険で無駄な計画

  「『淀川水系河川整備計画案』に対する宇治市意見」について抗議と撤回の要請

 新聞報道によれば、宇治市は、10月20日、京都府に対し、国がすすめる430億円の放水路トンネルを建設する天ケ瀬ダム再開発事業や塔の島地区の改修・河道掘削を「治水対策上不可欠な事業で速やかに事業を進められたい」とする意見書を提出したとのことである。
 私たち「阪神大震災の教訓を忘れず市民のための防災のあり方を考える会」(略称「防災を考える市民の会」)は、この事業計画の中身、特に放水路トンネルを建設し1500トンを毎秒放流しようとする計画や、塔の島地区の河道を掘削して毎秒1500トン流下を可能にしようという計画の問題点を十分検討もせず、国の言い分だけを鵜呑みにした宇治市の意見書提出に強く抗議するものである。
 「会」は、数年にわたる調査・検討の結果、現在の国土交通省の再開発計画を推進することは、宇治市民にとっていかに危険で無駄な事業であるかを示してきた。
 市が意見書を提出した同じ日に、河川法に基づいて国土交通省が設置した諮問機関である「淀川水系流域委員会」は、「天ヶ瀬ダム再開発事業の実施を『河川整備計画』に位置づけることは不適切」とするなどの最終意見書を知事に直接提出した。そして国土交通省が流域委員会の最終意見を待たずに計画案を決めたことに「知事も整備局に不満」を表明している。

 以下の点で、宇治市の意見書に抗議し、撤回のうえ再提出を要請する。
 @10月16日夜に、槙島地域で整備局と宇治市の計画説明会が開催され、「水管橋より上流左岸の堤防は安全とする」整備局の説明に、疑問や問題点が続出し再度説明会を開催することになっている。

 A10月17日に開催された市議会建設水道常任委員会で市の意見書が初めて提示され、議員から多数の意見・疑問が出されたにもかかわらず、市からは納得ゆく説明がなされていない。同時に市民の疑問・質問・意見をすべて無視した意見書になっている。

 B市は、「宇治市が2月に提出した意見書の内容は計画案に盛り込まれている」と言うが、計画案は原案から何の変更もない。それどころか10月16日に槙島地域で説明された堤防強化方法は、長期間続く後期放流に有効と説明していたドレーン工が全く無い詐欺的な内容となっている。2月の市の意見書の内容がどう盛り込まれたのか明確にすべきである。

 C宇治市の治水対策で最優先すべき課題は、22qが脆弱といわれる宇治川・槇島堤防の強化である。わずか3.4qの改修で了解している宇治市の態度のどこが治水最優先といえるのか。

 D宇治地域に関わる計画案の中身について、「会」はもとより市民一般にも説明懇談会が、全く開催されていない。

 E「会」は、天ケ瀬ダム堤体直下のF−0断層を始め多数の断層群が存在することおよび活断層の存在からから見て、周辺地盤の劣悪さなどから見て、天ヶ瀬ダムそのものが元々不適当なところに造られており天ヶ瀬ダム自体の安全性に問題があることを指摘し、同時にここに内径26mの放水路トンネルを設けることのリスクを指摘している。また天ヶ瀬ダムから3km以内で3つの活断層を確認した調査結果を踏まえ、「天ヶ瀬ダム周辺3km以内に活断層はない」という近畿地方整備局の説明は間違いであることを指摘し公表している。このような重大なことも全く検討もせずに意見書が提出された。

 F計画案では天ヶ瀬ダムの前期放流は下流淀川枚方地点のために1,140d毎秒放流の計画であるが、現在のダムの放流能力は1,100d毎秒であり、琵琶湖沿岸の浸水被害の軽減のための後期放流1500d毎秒についても1兆9千億円を費やした琵琶湖総合開発事業によって浸琵琶湖沿岸の浸水被害は激減しており、後期放流1500d毎秒は必要性・緊急性がない。430億円の巨大な放水路トンネルの建設は必要性が希薄であり巨大な無駄である。

 G宇治市が自らの検証検討責任を放棄しながら、淀川水系流域委員会の最終意見書案(08年9月27日)および最終意見書(08年10月6日)を全く無視していることは異常な態度である。最終意見書は、「天ヶ瀬ダム再開発事業は適切でない」と計画の見直しを求めている。塔の島地区の1500d毎秒改修・河道掘削計画の見直しを求めている。宇治川堤防対策計画についても疑問を呈し見直しを求めている。つまり国の計画案の宇治川河川整備に関する根幹についてすべて見直しを求めているのである。

  「会」は、国交省の計画推進が、天ケ瀬ダム周辺、志津川地区、塔の島周辺などから広く宇治川沿岸、旧巨椋池地域にわたる宇治市民の生命と生活に危険をもたらすものであることを知り、市長に対しても繰り返しこれを指摘してきた。とくに最近、私たちの報告、指摘は、非常に多くの市民に理解されるところとなり、天ヶ瀬ダム再開発・1500d毎秒放流の中止・見直しを求める要請署名人が国・府市合わせて8,378人に至った。この署名はすでに去る10月9日、市長にも届けられている。
 上記のような事実を知りながら宇治市が国交省の天ケ瀬ダム再開発案の推進を求める意見書を提出としたとすれば、市民に対する大変な背信と言わざるをえない。

 私たちは、宇治市が市民の生命を守ると言うのならば、もう一度、科学的事実を事実として直視し、背信的な意見書を撤回されるよう求めるものである。   


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