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官庁速報



政府・与党 消費税増税迫るタイムリミット
年金国庫負担引き上げで−歳出削減に修正の動き

  「財政再建の旗は内外に示せた」―。額賀福志郎財務相は2008年度予算案の編成作業を振り返り、こう胸を張った。参院選惨敗を受け、与党の歳出増加圧力が増大。景気の失速で税収も伸び悩む厳しい環境の中、財政再建路線を堅持して新規国債の発行額を4年連続で減らした。ただ、プライマリーバランス(基礎的財政収支、PB)の赤字幅が5年ぶりに拡大するなど借金体質は相変わらず。 しかも、基礎年金国庫負担を2分の1に引き上げるとした09年度が間近に迫る中で、不安定な政局を受けて消費税増税論議はめどが付いていない。与党の圧力で歳出改革路線にも軌道修正の動きが広がっており、小泉内閣の末期に定めた財政再建の枠組みは正念場を迎えつつある。

◇「引いても、進んでも…」
 政府・与党は「骨太方針2007」などで「07年度をめどに抜本的な税制改革の結論を得る」との方針を掲げ、その公約通りに経済財政諮問会議や政府税制調査会などが消費税増税の必要性を検討。「安心できる社会保障・税制改革に関する政府・与党協議会」も発足した。
 だが、福田康夫首相は09年度以降に結論を先送りすると言明。諮問会議や政府税調も高齢化で増大する社会保障費の財源確保の必要性を唱えたが、増税の時期や規模などは明示しなかった。年末の与党税制改正大綱も08年度改正を「抜本改革に向けた橋渡し」と位置付けるにとどまり、腰砕けに終わった。
 その理由は参院選の惨敗。参院で与党が過半数を大きく下回る結果に終わり、早期の総選挙も取りざたされる不安定な政局の中で、「国民に痛みを求める増税論議は当分難しくなった」(財務省幹部)ためだ。
 とはいえ、4年前の年金改革で「基礎年金国庫負担を2分の1に引き上げる」と定めた09年度までに残された時間は少ない。約2兆3000億円に及ぶ財源の確保には消費税率アップを含めた税制改革が不可欠だ。
 このため、与党は税制改正大綱で「国民生活の安心確保という共通利益の実現には与野党が胸襟を開いて取り組むことが求められる」と異例の文言を盛り込み、参院第一党を占める民主党との協議に期待感を示した。だが、消費税の増税反対を貫く民主党は「自民党とは根本的に考えが異なる」(藤井裕久税制調査会長)として協議に応じない構えで、視界不良が続いている。
 一方、国庫負担引き上げを見送る場合、保険料水準の固定やマクロ経済スライドの導入などを定めた4年前の年金改革の前提が崩れ、基礎部分の全額税方式を掲げる民主党と、年金制度をめぐる政策論争が再燃する可能性が出てくる。  政府は今後、社会保障制度の将来像を探る国民会議を設置する方針だが、「引いても年金で地獄、進んでも増税で地獄」(与党議員)という袋小路に政府・与党が追い込まれる事態も考えられる。

◇景気、税収の動向に不透明感
 低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローン問題や資源価格の急騰を引き金に、景気に失速感が出てきた結果、05年度から増加基調だった税収が伸び悩んでいるのも懸念材料だ。
 06年度決算の税収は補正後比で1兆4000億円、07年度補正は当初比で1兆円弱の減額となり、08年度予算も当初対比で税収は微増にとどまった。 今後も経済成長が期待できない場合、「11年度に国・地方のPBを黒字化」という政府目標について、「自然増収と歳出削減のみで達成が可能」とする内閣府の試算に暗雲が垂れ込むことも予想され、財政再建のかく乱要因となりそうだ。

◇歳出改革、軌道修正相次ぐ
 「ある一点で原理・原則を踏み外すと、全体の規律が崩れる」―。昨年11月の諮問会議。参院選の惨敗を受けた与党から歳出増を求める声が強まっていることを懸念し、こんな意見が民間議員から示された。福田首相は「歳出改革に例外を設けない」と言明したが、その意思とは裏腹に歳出改革の軌道修正を図る動きが各分野で見られた。  見直しの「号砲」となったのは高齢者医療費負担増の凍結。福田首相が自民党総裁選の公約で凍結を含めた見直しを言明したことで、半年―1年の凍結が決まり、07年度補正予算案で必要経費が計上された。 農業分野も軌道修正された。同分野では「担い手」に支援を集中させる「品目横断的経営安定対策」が小泉政権の末期から進められているが、参院選惨敗と米価低迷に危機感を抱く自民党の意見を受け入れ、コメの買い入れ増額などに要する経費が補正予算案に盛り込まれた。

◇揺らぐ小泉政権の「書き置き」
 これらの動きは当初予算案の編成作業にも波及し、歳出増を求める動きが拡大。5年間の歳出改革を定めた骨太方針06や行政改革推進法の軌道修正を余儀なくされた。
 まず、社会保障費については、「国費1兆1000億円を5年間で圧縮」との目標を定めた骨太方針06に沿って、08年度予算編成の概算要求基準(シーリング)では2200億円の圧縮目標が定められ、「政府管掌健康保険に対する国庫負担の暫定的な削減」「退職者医療制度の加入者適正化」などの施策を並べることで目標額を何とかクリアした。
 だが、医師らに支払われる診療報酬本体に関しては、主計局が削減を求めたのに対し、与党や日本医師会は増額を主張。最終的に0.38%と8年ぶりの増額に追い込まれた。財務省内からは「やはり、厚生相を何度も経験した小泉(純一郎元首相)さんがいないと診療報酬カットは無理なのか…」と恨み節が聞こえる。

◇教育では目標実現が困難に
 公立小中学校の教職員定数も調整が難航した。行革推進法で「純減」、骨太方針06で「1万人減」を定めているが、文部科学省が3年間で約2万1000人の増員を要求。財務省は「行革推進法と骨太方針06は財政改革の枠組みを守る防波堤。増員は受け入れられない」と反対したが、最終的に純増1000人分を含む1195人の増員と寄り切られた。
 主計局幹部は「純増分は06〜07年度に給食調理員らを削減した数と同じ数なので、総計では純増にならない。行革推進法を改正しない範囲でのギリギリの対応」と説明。その上で「特別支援教育の関係者に対する調整額の見直しなど新たな削減項目もあり、人件費改革の枠組みは維持できる」と強調する。
 だが、1万人の純減を定めた骨太方針06の目標達成は事実上困難になった。引き続き現場の負担軽減などの掛け声が大きくなり、増員要求が高まることが必至とみられるだけに、09年度以降も激しい攻防が繰り広げられそうだ。
 加えて、地方交付税の増額や整備新幹線の新規着工を求める声も高まってきており、歳出圧力にさらされている財務省幹部は「小泉内閣以来7年も我慢してきた族議員の恨みが爆発している」と愚痴をこぼす。  今後、政局の流動化が一層進めば歳出増を伴う施策をマニフェスト(政権公約)に並べる民主党との対抗上、与党の歳出増を求める声が高まる可能性も。「小泉政権の書き置き」(ベテラン与党議員)とされる行革推進法や骨太方針06が軌道修正されたことで、その枠組みは曲がり角を迎えつつある。


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