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官庁速報


2008年 7月23日

人的損失額、2億円超へ引き上げ
公共事業の費用便益分析−国土交通省

 国土交通省は、公共事業の費用対便益(便益÷費用、B/C)に関する分析方法を見直した。交通死亡事故の減少効果を金銭換算する際の単価となる1人当たりの人的損失額について、従来の約3600万円から2億円超へ大幅に引き上げたほか、地球温暖化防止に向け、二酸化炭素(CO2)の削減効果を算定するための単価を新たに設定する内容。同省は「公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針」を改定、見直し内容を盛り込んだ。

 内閣府が2007年にまとめた「交通事故の被害・損失の経済的分析に関する調査研究報告書」によると、先進諸国の公共事業評価で適用されている1人当たりの人的損失額は、米国約3億9300万円、英国約2億7400万円などで、いずれも「精神的損害額」が大半を占める。これに対し、同省が道路事業などの費用便益分析に適用していた人的損失額は、過去の類似事故の慰謝料などを基に算定し、約3600万円と低い水準だった。こうした状況を踏まえ今回、「精神的損害額」を2億2600万円と設定。逸失利益などを含めると約2億4200万円となる。

 道路事業の場合、新規採択時評価と事業中の再評価における費用便益分析は、(1)走行時間短縮(2)燃料費などの走行経費減少(3)交通事故減少―の3種類の便益を金銭換算し、道路整備や維持管理といった費用と比較。便益が費用を上回れば事業を推進できるが、下回れば事業中止となる。

 3便益のうち9割程度を占めるのが、道路整備前後の走行時間を比較し、運転者らの労働時間や余暇の増加分を金銭換算する「走行時間短縮便益」。一方、高速道路整備などで交通事故死亡者が減少する「交通事故減少便益」については、過小評価されているという指摘があった。ある国道整備事業の3便益を見ると、総便益780億円のうち走行時間短縮が760億円、走行費用減少が19億円に対し、交通事故減少は1億円にとどまる。冬柴鉄三国交相は国会答弁で「日本の交通事故減少便益は先進国で最も少ない。人間の命をそんなに軽くしてはいけない」などと述べている。

 今回の改定指針をそれぞれの公共事業に適用するかどうかは、担当部局が検討することになっている。道路局は「道路事業の評価手法に関する検討委員会」を設け、道路版の「費用便益分析マニュアル」の改定作業を進めている。

 このほか、公共事業によるCO2削減効果を貨幣換算するため、炭素1トン当たりの単価を1万600円に定めた。同省が従来用いてきた炭素1トン当たりの単価は、鉄道整備事業は2300円、官庁営繕事業は8140円などと不統一だったが、英国の水準を参考に算定した。改定指針は「排出権取引市場が成熟すれば、排出権取引価格に基づき価値を設定する方法も検討する」としている。

 冬柴国交相は「CO2削減などの幅広い道路整備の効果をできるだけ定量的に表現する」ことが必要だと指摘していた。今回定量化されたCO2削減効果を道路事業の費用便益分析に使う場合、3種類の便益に加えて第4の便益項目が加わることになるが、数千トンの炭素を削減しても数千万円の効果しかないため、百億円単位の大規模事業の便益計算に与える影響は軽微。さらに道路建設時のCO2増加効果を差し引けば、トータルの削減効果はさらに限定的となりそうだ。 


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