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官庁速報


2008年 3月21日

社会保障費抑制の「限界論」台頭
骨太方針2008での扱い焦点に

 年金や医療、介護などの社会保障費の抑制をめぐり、政府・与党内から「限界論」が台頭している。政府の骨太方針2006は、2007年度から11年度までの5年間に社会保障費の自然増を1.1兆円圧縮する方針を盛り込んでいるが、舛添要一厚生労働相は「(09年度予算編成では)2200億円のマイナスシーリングをやめたい」と発言。与党内では「たばこ税の引き上げで代替すべきだ」(幹部)との声も上がっている。今年の骨太方針08などで、社会保障費をどう取り扱うかが焦点となりそうだ。

◇機械的なシーリングに疑問符

 政府予算は近年、社会保障費の自然増を毎年度2200億円圧縮する枠組みが続いている。これに対して昨年は、与党の厚労族議員が「機械的に2200億円のマイナスシーリングとするのは問題だ」と主張。骨太方針07には、「歳出改革の内容は、機械的に5年間均等に歳出削減を行うことを想定したものではない。(中略)歳入改革もにらみながら、5年間の間に必要な対応を行うという性格のものである」との文言が盛り込まれた。

 政府は、骨太方針07を策定した後の08年度予算概算要求基準(シーリング)でも、社会保障費を引き続き2200億円のマイナスに設定した。しかし、シーリングを達成するために厚労省が提案した、中小企業の従業員らが加入する政府管掌健康保険(政管健保)の国庫負担削減案は、負担を肩代わりすることになる健康保険組合の猛反発に遭遇。同年度の予算編成では、1年間の暫定措置という異例の形で決着させる羽目になった。

 政府は、政管健保の国庫負担削減の09年度以降の扱いについて「別途検討する」とし、継続実施する青写真を描いているが、さらなる負担を求められる健保組合の猛反発は必至。暫定措置に道筋を付けた与党からは「09年度以降も継続実施するのは難しいのではないか」との声も聞かれる。ただ、社会保障費の自然増圧縮は単年度ではなく継続的に実施することが前提となっており、政管健保の国庫負担削減が08年度1年限りとなれば、09年度予算編成ではその分、他の施策で歳出をカットしなければならなくなる。

◇介護報酬はむしろ増額

 09年度には3年に1度の介護報酬改定が予定されており、一定額のカットを介護で見込む向きもあるが、与党では「介護現場の厳しさを踏まえれば、介護報酬はむしろ増額すべきだ」との声も出ている。

 福田康夫首相は2月下旬の衆院予算委員会で、社会保障費の抑制について「今まで財政改革、歳出改革という一環から対象とせざるを得なかったが、ずっと続けることは難しい。難しい段階に来ているという認識を持っている」と答弁。「よく点検をさせる必要がある」として、1月末に設置した「社会保障国民会議」(座長・吉川洋東大大学院教授)でも議論するよう促した。同会議は6月をめどに中間報告をまとめる方針で、社会保障費の今後の抑制方針について、何らかの形で言及する可能性がある。

◇代替財源はたばこ税で

 社会保障費のこれ以上の削減に強い難色を示す厚労族議員の間では、たばこ税の引き上げで代替すべきだとの案も浮上している。幹部議員は「たばこ税は、1本1円の引き上げで1000億円程度の増収(国税ベース)になる。1本2円引き上げれば、2000億円の財源が生まれる」として、2200億円をほぼカバーできると指摘する。

 ただ、骨太方針は、社会保障費の抑制を歳出改革として位置付けており、たばこ税という歳入面での対応は想定していない。このため同議員は「骨太方針を修正する必要がある」との考えだ。

 社会保障費抑制の既定方針からの転換を目指すこうした動きに対して、政府・与党内では「歳出改革の手を緩めるべきではない」との声もある。福田首相が任命した伊藤達也社会保障担当首相補佐官はかねて歳出改革に積極的とされ、社会保障費抑制の枠組みを撤廃することには本来慎重とみられる。骨太方針08での扱いをめぐっては、歳出改革派と厚労族議員との間で、激しい綱引きが展開されることも予想される。


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