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官庁速報


2008年 6月 3日

不安材料は高齢化、道州制
特集・平成の村事情(上) 揺れる「地域最前線」−193村、活路模索


  昭和、平成の大合併を経て、現在全国に残る村の数は193。その平均の姿は、人口4841人、高齢者比率30.5%、財政力指数0.33、実質公債費比率16.7%―。少子高齢化や財政事情の厳しさが鮮明だ。個別に見れば、人口200人から5万人、財政再建団体一歩手前から全国最高の財政力を誇る村まで、その差は大きい。これまで合併せずにきた背景、理由もさまざまだが、社会システムの変化の影響を最も受けやすい「最前線」の自治体として、少子高齢化の進行や、地方分権・道州制などの動向への危機感は共通している。活路を模索する「平成の村」を追った。(3回連載)

◇5年で人口3割減も

 2007年3月末現在の住民基本台帳人口によると、最も人口が少ない村は東京都青ケ島村(197人)で、6番目まではいずれも島嶼(とうしょ)部。島以外では高知県大川村(502人)が最少で、人口1000人未満の村は計22存在する。

 一方、最も人口が多いのは岩手県滝沢村で5万2798人に上り、同村を含め1万人超の村は17ある。しかし、全体を見れば、人口1000人以上3000人未満が67と最も多く、全国の村のほぼ7割が人口5000人未満だ。

 住民全体に占める65歳以上の高齢者人口比率は、平均30.5%。全国の村民の3人に1人が高齢者となる計算。40%を超える村も29あり、群馬県南牧村に至っては54.4%に上る。

 2000年と05年の国勢調査で比較した人口増減率を見ると、平均は4.0%減。最も減少幅が大きかった群馬県上野村(32.8%減)を含め、10%以上減った村が27。全体の7割以上の142村で人口減となっている。

◇81村が「イエローカード」

 高齢化、人口減が進む村の「懐具合」はどうなっているのだろうか。各村が公表した06年度の財政状況等一覧表を基に時事通信社が集計したところ、財政力指数(3年間平均)は全村平均で0.33。標準的な活動に必要な財源を村の自力で3割程度しか調達できない計算で、地方交付税への依存度が極めて高い。

 財政力指数が最も低いのは鹿児島県三島村の0.05、最高は愛知県飛島村の2.78。飛島村を含め1を超える不交付団体も10村あるが、8割の156村が0.5未満と厳しさは歴然としている。

 税収に占める地方債の償還額などの割合を示す実質公債費比率も、村運営の厳しさを如実に表している。村全体の平均が16.7%に達する上、地方債の発行に都道府県知事の許可が必要となる18%以上のいわば「イエローカード」を出された形の団体が81に上っている。

 その81村の中でも、単独事業の地方債が制限される25%以上が15村。うち全国で最も実質公債費比率が高い長野県王滝村は、財政再建団体の北海道夕張市以上の42.2%だ。

◇半数以上が合併協経験

 少子高齢化への対応、行財政基盤の強化などを目的に、1994年から本格化した平成の大合併では、93年時点で577だった村の数が、およそ3分の1に減少した。この結果、「村」が消えた県は、栃木、石川、静岡、兵庫、愛媛、佐賀など13県に達した。

 合併の波をかいくぐって残った193村のうち、現在合併計画があるのは、▽北海道新篠津村▽群馬県富士見村▽長野県清内路村▽同阿智村▽大阪府千早赤阪村▽福岡県矢部村▽同星野村―の7村。加えて、具体的な計画には至っていないが合併の協議、検討を行っている村は11で、2010年の合併特例法(新法)の期限内に合併が進む見込みがあるのは、残り18村程度だ。

 ただ、これまで合併をせずにきた村も、多くが周辺市町村との検討、協議を経験している。現在検討中の18村と合併により新たに村になった3村を除く172村について調べると、05年度までの旧合併特例法、06年度以降の新法の下、93村が合併の任意協議会や法定協議会に参加。地域存続のため、合併を選択肢の一つとしつつも、条件や住民意識の面で折り合いが付かず、単独で生き残りの道を歩んでいるのが実情だ。

◇小規模自治体の苦悩

 東京の中心部から私鉄駅でおよそ1時間、そこからさらにバスで約30分の場所にある埼玉県東秩父村。山林が約8割を占める人口約3700人の同村は、03年以来周辺市町村と合併協議を繰り返し、実現しなかった経験を持つ。

 03年3月、同村、東松山市、滑川町など比企地域の1市4町3村の任意協議会で広域合併を模索したが、2町の離脱で同協議会は解散した。次に同地域の3町3村で法定協議会を設置し、8回にわたる議論で合併計画を詰めたが、滑川町の住民投票で反対が上回り、これも解散。そして04年には、隣の小川町から吸収合併を持ち掛けられたが、条件が合わず破談となった。

 「昨年は死亡者が多くて51人が亡くなった。でも、生まれたのは15人。これだけで1年間に36人減った」。少子高齢化の「最前線」にある同村で、磯田博安村長は「できるだけ早く合併をやりたい」と考えてきた。03年2月に全戸を対象に実施した意識調査でも合併賛成が67.7%を占めている。

 しかし、一連の合併協議は不調に。その経緯について磯田村長は、「あまり話したくない」と言葉少なだ。「合併しなければ」という気持ちは強いが、「合併をしたことによって不便になったりしてはならない」とのみ語る村長に、財政基盤も弱い小さな村が、村民の求める条件を確保しながら合併する難しさがにじむ。

◇自助努力も限界

 同村は、昔からの和紙の産地で、年間およそ16万人が訪れるキャンプ場など観光施設もある。しかし、財政力指数0.27は県内最低水準。同村は、歳出圧縮、業務効率化に力を注ぎ、役場職員も「これ以上減らすと仕事ができない」という約60人まで削減した。ただ、その人員削減にしても「人口当たりの職員数にすれば、まだ多過ぎることになる」と磯田村長。小規模自治体の限界を痛感している。

 「もう小さな村ではやっていけない時代」と、改めて合併に活路を求める東秩父村は08年4月、東松山市との合併に向け、村議会に合併推進特別委員会を設置。近く同村と同市、滑川町各議会の協議会も設けられる見込みだという。実現すれば「飛び地合併」となるのだが、東松山市との合併はアンケートにも裏付けられた「住民の意向」。これまでの同市側との対話からは「基本的な条件では合意できそう」といい、「今度こそ」の合併に向け、視界は良好のようだ。


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