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官庁速報


2008年12月 5日

交付税総額確保が焦点
増額は調整難航も−09年度地財折衝本格化

 2009年度予算編成の基本方針が決まり、同年度の地方財政対策をめぐる総務、財務両省の折衝が本格化する。地方自治体は「三位一体改革」で大幅に減った地方交付税の増額・復元を要望。自民党の道路特定財源の一般財源化に関するプロジェクトチーム(PT)は現在の臨時交付金に代えて公共事業に使途を限定した1兆円規模の交付金を創設することを決めた一方、麻生太郎首相の意向に配慮し、報告案に「交付税の増額」を明記。鳩山邦夫総務相が「1兆円確保」を掲げるなど、交付税の上積みが期待されている。しかし、景気後退で交付税の原資となる法人税収などが落ち込み、地方財政の財源不足額が大幅に膨らむ見通しが強まっており、多額の赤字国債と臨時財政対策債を発行しなければ不足額の穴埋めができない状況が見込まれる。このため、交付税の増額に向けた調整は難航が予想され、まずは交付税など一般財源総額の確保が焦点になりそうだ。

◇財源不足、10兆円超も
 総務省が8月にまとめた09年度地方財政収支の仮試算では、「骨太方針2006」以来の歳出削減路線に沿い、給与関係経費や投資的経費を中心に地方一般歳出を引き続き抑制。一般歳出を前年度比0.3兆円減の65.5兆円、歳出総額を82.8兆円と仮置きした。

 歳入は地方税と地方譲与税を合わせた「地方税等」をほぼ前年度並みの41.4兆円(うち地方税39.5兆円)と見込んだほか、地方交付税(出口ベース)は交付税原資となる国税の減額精算が増えた影響で0.6兆円減の14.8兆円、これらに臨財債などを含めた地方一般財源総額を0.4兆円減の59.5兆円と試算。これに臨財債を除く地方債6.6兆円や国庫支出金10兆円などを加えた歳入合計を77.3兆円と見込んだ。

 この結果、歳出総額に対する財源不足額を5.5兆円としたほか、このうち財源対策債の発行などを行っても埋め切れず、国と地方が半分ずつ負担する「折半対象財源不足額」は7000億円になるとはじいた。
 しかし、その後、「100年に1度」ともいわれる世界的な金融危機で、経済状況が急速に悪化。国税の今年度の税収は法人税を中心に落ち込み、当初予算(53.6兆円)から6兆円以上下振れするとの見方が強まっている。

 交付税は法人税の34%など国税5税の3割程度を原資としており、国税が6兆円程度落ち込んだ場合、交付税の法定率分は2兆円ほど減る計算。景気後退で09年度はさらに税収が落ち込み、法定率分が一層減る可能性も小さくない。また、法人二税などの減少で、地方税も仮試算で見込んだ39.5兆円を大きく割りかねない状況だ。

 この結果、地方の財源不足額が見込みの5.5兆円より大幅に膨らみ、06年度の不足額の8.7兆円を上回る恐れも。「(仮試算段階の倍の)11兆円ぐらいになるかもしれない」(自民党総務部会の幹部)との見方も出ている。財源不足が増える部分の大半は、7000億円と試算していた折半対象財源不足額の大幅拡大につながることが想定され、折半ルールに基づく協議で補てん額を固めることになる。

◇実際の財政需要と乖離

 麻生首相は当初、09年度から道路特定財源を一般財源化する際に、地方が自由に使える財源として交付税を1兆円配分する考えを示した。しかし、自民党PTは、何にでも使える財源に変えれば自動車ユーザーや業界から暫定税率維持に対する理解を得られないことなどを理由に、約7000億円の臨時交付金に代えて、道路整備を中心とする公共事業に使途を限った1兆円規模の「地域活力基盤創造交付金」(仮称)を創設する方針を決めた。 

 ただ、首相は交付金について、地方が自由に使える財源とは「全然別の話だ」と強調。交付税など地方一般財源を増やす意向を示していることを踏まえ、自民党PTの報告案には、「交付税は予算編成過程で増額」と明記された。

 PTの方針に対し、全国知事会など地方六団体は「(交付金では)追加経済対策に盛り込まれた『1兆円を地方の実情に応じて使う新たな仕組み』が創設されたとは言えない」との声明を発表。「交付金とは別に地方交付税による1兆円を増額確保」するよう求めている。

 一方、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が09年度予算編成に関する建議で、地方全体では「むしろ財政体質は改善している」と指摘するなど、財務省は交付税増額に消極的。巨額の折半対象財源不足額の発生も見込まれる中、国の一般会計からの繰り入れと臨財債の発行により不足額を埋めた上で、どこまで交付税を増額できるか不透明だ。財源不足額の補てんや交付税増額をめぐる折衝では、地方の財政需要の実態をどうとらえるかが論点になり、政府・与党内でぎりぎりの調整が続きそうだ。交付税総額の確保には、地方の実態を踏まえ、安定的な財政運営に必要な歳出を基準財政需要額に適切に積むことが求められそうだ。

 全国知事会は11月にまとめた提言で、小中学校教職員などを除く地方単独の給与関係経費や投資的経費の地方単独分などが大幅に減少している実態を取り上げ、「交付税総額が抑制される中、国の制度創設に伴う交付税措置や社会保障関係経費が増え、地方単独経費を圧迫している」と指摘。実際の財政需要と乖離(かいり)した状況を見直すほか、「経済対策などにかかる新たな財政需要の増大は避けられない」として財源確保を訴えている。

 総務省は、骨太方針の路線を維持しつつも地方六団体の要望を踏まえて地方財政計画に適切な歳入・歳出を積み上げたい考え。また、政府の追加経済対策に盛り込まれた住宅ローン減税の延長・拡大といった減税が行われたり、自民党PTの報告案に盛り込まれた自動車関係諸税の時限的な軽減が自動車取得税にも及んだりした場合、地方税や国税5税がさらに減少。経済対策の実施に伴い自治体の負担も増すため、減収に対する確実な補てんや新たに生じる財政負担への財源の手当てを求めていく考えだ。

◇金融機構の創設・活用も課題
 折半対象財源不足額の補てんに伴う臨財債発行残高の増加への対応も課題になる。地方の歳出削減努力などにより、財源不足額は03年度の17.4兆円をピークに減少。07、08年度には折半対象財源不足額は生じなかった。しかし、過去に多額の臨財債を発行して財源不足額を埋めてきたため、01年度に1兆2269億円だった自治体全体の発行残高は、05年度には15兆6557億円に急増している。

 このため、政府の追加経済対策や09年度予算編成の基本方針に検討することが盛り込まれた、「自治体の一般会計に長期・低利の資金を融通できる、地方共同の金融機構の創設」と活用が課題になりそうだ。総務省の検討会は、現行の地方公営企業等金融機構の機能を拡充して共同金融機構を設ける方向で議論しており、地方財政審議会(総務相の諮問機関)が近くまとめる提言に盛り込まれる予定だ。

 このほか、個別テーマでは、(1)へき地の不採算地区病院や、産科、小児科、救急医療といった採算を確保しにくい診療科に対する特別交付税を充実する一方、病院建設費への財政支援に上限を設けるなど、医療分野での地財措置の重点化(2)経営不振の第三セクターの処理を加速するため、一定の要件を満たす場合は特例地方債の発行を認める−などの実現が、課題になりそうだ。


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