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府職労ニュース


2008年 7月30日

359項目を市町村に権限委譲
早ければ09年度から実施

京都府が調整会議設置

 京都府が市町村への権限移譲を検討する組織を立ち上げました。359項目もの事務を早ければ来年度から移譲していくという方針です。しかし、財源や人の担保も無いままの提案には市町村からはもちろん、府庁の職場からも不安と心配の声があがっています。

●先行移譲に市町村から心配の声
 「京都府権限移譲、来年度にも調整会議設置 市町村と検討」(日経)、「権限移譲の在り方検討府・市町村推進会議が始動」(京都)。7月17日付の各紙の見出しです。

 当日の調整会議には府から麻生副知事のほか、京都市を除く府内25市町村の副市長らが出席しました。記事によれば、参加した市町村からは「行政改革で職員を減らしており、財政や人の問題をきちんと押さえてほしい」(向日市)、「一番気かがりな財政改革が地方分権推進委員会でも後回しだ」(木津川市)との声や、国よりも府が先行して移譲しようとすることに対し、「財源や人的資源についてしっかり担保した上でスタートできるのか」(宇治市)といった「心配や注文が続いた」といいます。

 政府は、今年5月の地方分権改革推進委員会による第一次勧告に盛り込まれた359項目の事務について、法改正を経て2010年度からを目途に権限移譲を行う方針を固めています。京都府はこれに先行して、独自に特例条例を改正することで09年度中にも市町村への権限移譲を行う方針を明らかにしたものです。

 この間、京都府は推進会議(知事、市町村長で構成)と調整会議(麻生副知事、25の副市町村長、府の総務部長や行政経営改革課長などで構成)を立ち上げるとともに、「総括」と「まちづくり」「福祉・保健」「環境その他」「町村移譲等」の4つの作業部会(府、市町村の事業担当課長などで構成)を設置し具体的な検討をスタートさせようとしています。

 そして、これと連動して該当の主管課と事業担当課毎に作業部会での市町村との検討に向けた準備がスタートしています。今後は該当の事務毎に@移譲の時期を09年度中とするのか、それとも10年度からとするのかの仕分け作業、A円滑な∴レ譲にむけたマニュアルづくりも含めた実務作業が予定されているといいます。

●大規模な権限移譲で仕事が一変?
 こうした中、職場回覧された作業部会関連の資料に目を通した職員の中からは、「こんな規模で権限移譲することになったら府の仕事は一変する」との驚きの声や、「新聞で報道されているように、財源も人も示されない中で仕事だけ渡します≠ニいう提案に素直に応じる市町村がいるだろうか」との声があがっています。また、「1500人削減≠掲げている給与費プログラムの一環として位置づけているのでは」との心配の声も聞かれます。

 「住民生活にかかわることは市町村の皆さんにお願いする」「広域的なことを全部仕切れる関西の司令塔が必要。1秒でも早く道州制を」「めざす方向は広域連合。府を発展的に解消する」。これらは、あの大阪府・橋下知事の最近の発言です。京都府の山田知事は一刻も早い道州制≠竍府の発展的解消≠ニまでは明言はしていないものの、先の6月府議会では「5年後には、社会保障関係費250億円、公債費300億円が必要、単年度200億円の収支不足、大阪は対岸の火事ではない、今年度中に新たな改革プランを策定」と強調しました。

●道州制への地ならしか?府の役割はどこへ
 この間、都道府県から市町村への権限移譲、指定都市への運用上の人口要件緩和、中核市要件の規制緩和、保健所業務の特例市への移譲検討など、様々な角度から都道府県の役割と機能の縮小・解体がすすめられており、道州制導入への地ならしが進められています。今年5月以降の政府と大阪の「橋下維新プログラム」、そして今回の京都府の事態は、これらにさらに拍車をかける動きです。

 財政再建≠ニ地方分権≠サして住民に身近なサービスは基礎自治体で≠フ掛け声を隠れ蓑に、行政経費の削減を真のねらいとして福祉・医療・都市計画・土木などこれまで府県が担ってきた行政分野のことごとくを基礎自治体に移していく、その受け皿づくりのためのさらなる市町村合併の強行が危惧されます。しかしサービスの安定的な供給や人材育成、何よりも財源の保障がないまま進められるのは問題です。

 サービスの提供主体としてのみ自治体を見るのではなく、市町村の自治を基本にそこへの財政的・人的支援を行える広域自治体と国の枠組み議論こそが求められています。
 「いまが、府の仕事がどうあるべきかを考えるラストチャンスではないだろうか」。職員のつぶやきを、職場全体の大きな声にしていく時がきています。

■権限移譲が計画されている主な事務
※5月の地方分権改革推進委員会による第一次勧告をふまえて、6月20日に地方分権改革推進本部(本部長・福田首相)によって、「基礎自治体への権限移譲を行うべき事務」として示され、事実上、「都道府県から市町村への権限移譲の検討」が指示された事務(抜粋)
○都市計画決定
○まちづくり・土地利用規制分野

 開発行為の許可(都市計画法)、緑地保全地域への立入検査(都市緑地法)、事業計画の認可(土地区画整理法、都市再開発法)、2f以下の農地転用の許可(農地法)、工事許可(宅地造成等規制法)など
○福祉分野
 養護老人ホーム等の設置の認可(老人福祉法)、児童福祉施設の設置の認可(児童福祉法)、第一種社会福祉事業の許可(社会福祉法)、身体障害者手帳の交付(身体障害者福祉法)、知的障害者相談員への委託による相談・指導等(知的障害者福祉法)、母子福祉資金の貸付け(母子及び寡婦福祉法)、指定居宅サービス事業者の指定(介護保険法)、育成医療費の支給の認定(障害者自立支援法)、児童相談所:設置自治体の範囲の見直し(児童福祉法)など
○医療・保健・衛生分野
 未熟児の訪問指導(母子保健法)、薬局の開設の許可(薬事法)、専用水道の布設工事の設計の確認(水道法)、衛生措置基準・条例制定(美容師法)、保健所:設置自治体の範囲の見直し(地域保健法)など
○公害規制分野
 ばい煙発生施設の設置の届け出の受理(大気汚染防止法)、浄化槽の設置等の届出の受理(浄化槽法)、規制地域の指定(騒音規制法、振動規制法、悪臭防止法)など
○教育分野
 教職員定数の決定・条例制定(地方教育行政の組織及び運営に関する法律)など
○生活・安全・産業振興分野
 販売事業者の届出の受付(高圧ガス保安法)、販売営業の許可(火薬類取締法)、店舗への立入検査(JAS法)など
○その他
 特定工場の新設の届出の受理(工場立地法)、商店街整備計画の認定(中小小売商業振興法)、砂利の採取計画の認可(砂利採取法)など 


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