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府職労ニュース

憲法踏みにじる有罪判決

社会保険庁職員のビラ配布事件

全国から抗議の声広がる

 言論活動抑制・表現の自由犯す
 社会保険庁職員の堀越明男さん(52)が休日に政党機関紙号外などのビラを自宅周辺で配布したことが、国家公務員の政治的行為を禁止した国家公務員法に違反するとして起訴された裁判で、東京地裁は6月29日、罰金10万円、執行猶予2年の有罪判決を言い渡しました。被告弁護団は「表現の自由を保障する憲法二一条に反する判決」と指摘、控訴しました。
 堀越さんは03年、「憲法守れ」「イラク派兵反対」などと書かれた日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」号外などを配布し、逮捕、起訴されました。国家公務員が同法違反で起訴されたのは1967年の猿払(さるふつ)事件以来です。
 弁護側は@国公法自体が違憲・無効A警視庁公安部による長期の隠し撮りや尾行など違法捜査に基づくもの――などとして堀越さんの無罪を訴えてきました。 判決は公務員の政治的行為を放任すれば、公務員や行政の政治的中立性が侵されると指摘。政治的行為の制限は正当としました。
 堀越さんのビラ配布については「職務等とは無関係に行われたものであり、かつ、政治的文書の配布の受け手となるべき市民にとっても、行為者が公務員であると認知することができないものであった」などと認定しました。一方、文書配布は政治活動の中でも特に「政治的偏向の強い行動類型」などとし、堀越さんの活動について「公務員の政治的中立を著しく損なうものといって差し支えなく、このような行為が放任された場合に生じるであろう弊害は決して軽微とはいえない」と断定しました。

 警視庁公安部の捜査にかかわっては、一部を除き「適法」と判断。
 判決はまた、「本件各行為によってその職場に何らかの悪影響が及んだことはなく、(略)その行為は直ちに行政の中立性とこれに対する国民の信頼を侵害したり、侵害する具体的な危険を発生させたりするものではなかった」などと指摘。執行猶予付き罰金という異例の判決を言い渡しました。 弁護団によると、今回の判決では猿払事件最高裁判決の引用が目立つといいます。北海道猿払村の郵便局員が社会党(当時)候補の選挙用ポスターを掲示板に張ったことなどが国公法違反とされた事件です。最高裁は74年、政治的行為の禁止は合理的でやむを得ないものとして同法を合憲としました。

 判決は「憲法違反」として強く批判を受けたため、これ以降、国公法は適用されていませんでした。
 この事件の本質は「国家公務員法違反」を口実に、「戦争をする国づくり」に反対する言論活動を抑圧し、同様な言論活動・反対運動を躊躇(ちゅうちょ)させることをねらった政治的弾圧事件です。だからこそ「憲法を守れ」「イラク派兵反対」のビラを配布した堀越さんを逮捕したのです。 今回の事件は逮捕・起訴の段階で公安警察の異常・不当な捜査があり、そのことは公判廷でビラ配布の様子を盗撮したビデオが証拠として上映され、マスコミでも捜査方法の異常さが取り上げられました。この異常捜査を正当化し、その証拠をもとに有罪判決を言い渡したことに断固抗議します。
 このような捜査がまかりとおれば、公務員はもとより一般市民も、警察の監視下に置かれることになり、断じて許すことができません。

●抗議の声、相次ぐ/堀越さんも勝利へ決意

 判決後、支援者は東京地裁の門前で抗議。堀越さんは「不当な判決。今後もみなさんの協力をいただき、大いに運動を盛り上げて無罪判決までがんばる」と語っています。被告側の石崎和彦弁護士も「猿払事件最高裁判決をそのまま引用した、手抜き判決だ」と批判。執行猶予つきの罰金を命じたことについては「自信のなさのあらわれだろう」と指摘しました。
 全国からも「憲法順守義務を負った国家公務員に(表現の自由など)憲法が適用されないのは理不尽」「戦前の警察監視社会への逆戻りだ。改憲反対勢力を国公法や共謀罪で取り締まるという構図がはっきりした」などの声が相次いでいます。


●憲法踏みにじる判決/弁護団が声明
 国公法弾圧・堀越事件弁護団は6月29日、東京地裁での判決について「憲法を踏みにじる不当判決」と強く抗議する声明を発表しました。
 国家公務員の政治的行為を刑罰をもって禁止する国公法一〇二条一項などはアメリカ占領軍の圧力によって制定されたものであり、成り立ちからして憲法に違反するものだと指摘。政治的行為を包括的かつ一律に禁止することは、表現の自由を保障する憲法二一条に反することが明らかであると強調。
 そのうえで、判決は「国家公務員について憲法二一条の保障を否定するに等しい暴論」と述べ、国際人権条約(B規約)やILO(国際労働機関)条約など「公務員の政治的自由を確立しようとするこの間の流れに完全に逆行するものであり、国際的な批判も免れない」と指摘しています。

 
●京都自治労も「抗議声明」 
 京都自治労連は、判決の翌日の30日、「国公法弾圧・堀越事件での不当判決に断固抗議する」との声明を発表。
 「公務員の政治的活動禁止についての今日的な判断を行っていない」
 「歴史に逆行するあまりにも不当な判決である。私たちは、無罪勝利判決を求めるたたかいに引きつづき結集するとともに、公務員労働者の政治活動の自由を制度的に担保させる国内外での運動を引きつづき強化する決意である」と抗議の意思を示しました。


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