京都府職員労働組合 -自治労連-  Home 情報ボックス 府政NOW 京の写真館 賃金 料理 大学の法人化
府職労ニュース


2010年 1月 6日

草の根から「反貧困」の世論と運動を
京の師走にボランティア活躍

京都に「反貧困ネットワーク」誕生

●貧困には負けない

 年越し派遣村≠ゥら1年。日本の社会保障の貧弱さを誰の目にも明らかにし、労働者派遣法改正の動きにもつながりつつあります。新政権も誕生しましたが、未だ深刻で多様な「貧困」が続いています。一方で「反貧困」のネットワークも確実に大きく広がっています。京都での年末1か月を振り返って、「貧困」と「反貧困」の現場を点描しながら、新しい年を展望します。

●命を奪いとるほどの貧困

 「命を奪いとるほどの貧困が現実の日本にあるということ、それは社会の仕組みに欠陥があるからです。生活保護を申請する権利も手立ても知らされていない人たちが、数百万人いるということ、それは制度の欠陥です。それを知っていて、知らん顔することは、人としての責任と尊厳を自分から棄てさることです」
 12月5日、市民ら210人が参加しての設立集会の冒頭で高らかに読み上げられた「『反貧困ネットワーク京都』からの挨拶」の一文です。
 年越し派遣村≠ナ迎えた新年から1年が経過しました。未だ深刻で多様な「貧困」が続いている一方で、草の根からの「反貧困」の世論と運動は広がるばかりです。設立集会から1週間後の12日朝。財団法人ソーシャルワークセンター(国道十条下ル・京都高齢者会館内)が行うホームレスの人たちを支援する月1回の炊き出しの日には昨年の同時期よりも多い、数10人の列ができました。中高年層に混じって青年の姿も見られます。ここの炊き出しの特徴は、ボランティアもホームレスも、一緒になって食事するところです。
 「最も若い人は20歳。去年よりも人数が増えています。相変わらず派遣切りも多くて」とは、青年主体のボランティアを束ねる事務局長の中西さん。一方では「これまでからあった『ホワイトハウス』(京都市が中央保護所とは別に臨時保護所として借り上げた旅館)に加えて、11月からは新しく『ゲストハウス』(同上)が開設され、わずか1週間限定とはいえ、衣食住について保障される施設が増えたことは、この間の世論と運動があったから」と話します。1月23日には恒例の餅つき大会も含めた炊き出しを予定しています。

●今日の体調はどうですか?

 「今日の体調はどうですか?元気ですか?」。同じ日の夜10時。京都駅八条口では15人のボランティアが参加し「反貧困ボランティア」による炊き出しが行われました。すっかり定着した毎週土曜夜恒例のとりくみとあって、既に待っておられたホームレスの人たちが順番に並び、豚汁とおにぎりを受け取ります。25人分あった食材はあっという間に無くなりました。
 ボランティアの青年たちは声をかけながら、公的サービスの一覧が掲載された手作りの冊子(「困ったときの情報パンフ(京都)」)と防寒用のマット、衣類などを配っていきます。
 当日の夜回りでは、ボランティアの女子学生3人がホームレスの女性と対話。「訳あって、府外の療養施設から退所してきたが、また戻れるなら戻りたい」との声が返ってきました。早速、同ボランティアでは施設に連絡を取って、女性の受け入れが可能かどうかを照会しています。

●「うまい!」焼き肉クッパに舌鼓

 「うまいわ。これ」「暖まるわ。ええなぁ」。
 焼き肉クッパに舌鼓を打つホームレスの人たちの幸せそうな声が飛び交います。18日夜10時近く。京都市役所前広場に時ならぬ人混みができました。気温3度の暗闇の中、炊き出しに並ぶ列です。「胃薬は、いらない?」「靴下は?」。ボランティアが声をかけて回ります。
 「初めて来た」というホームレスの男性の一人は30代前半。今風に髪の毛を後ろで束ねた青年です。お腹もいっぱいになり、やっと人心地ついたこともあってか、そこかしこで談笑も聞こえ、一気にアットホームな雰囲気が漂います。10時30分には50食分を用意した鍋が空になり、「ありがとうございました」「また、お世話になります」「元気でね」のあいさつとともに、再会を約束して人混みは消えました。
 ホームレス支援機構「京都寄り添いネット」は、日本バプテスト京都教会の信者と地域住民で作る団体です。2001年4月からスタートした炊き出しも、現在では月2回(第1月曜は教会、第3土曜は京都市役所前)とりくまれています。代表の大谷心基さん(牧師)は、この日も一家3世代揃って参加。「急に寒くなったので心配」と、みんなの体を気遣います。1月2日には、医師やケースワーカーとともに、おにぎりを持って鴨川河原と御所の「パトロール」を行います。「一番、次につながるとりくみ」です。

●行政こそ屋外相談会を

 翌19日、同じ京都市役所前広場で京都弁護士会主催の「いのち・健康大相談会」が行われました。弁護士はもちろん、医師、社会保険労務士、労働組合など約70人がボランティアとして参加しました。炊き出しは100人、健康や生活保護の相談は約40人が利用しました。
 相談者からは「行政のワンストップ・サービスというのができたのは知っているが、風呂にも満足に入っていない身としては、立派な建物の中に入るのさえ、気後れがする」「相談会を弁護士さんがやるのもいいが、行政こそ屋外でやるべきではないか」との声も寄せられました。ボランティアとして参加した京都市職労の南さん(書記次長)は、「やっています≠フポーズだけではなく、当事者の立場にたった対応こそが必要だ」と指摘しました。

●つながりを大切に

 先月に立ち上ったばかりの「反貧困ネットワーク京都」は、1月21日に第1回の全体会議を開催し、いよいよ本格的なとりくみをすすめていきます。非正規労働者、ホームレス、子ども、母子家庭など、多様な現場からの貧困が告発された12月5日の設立集会における「挨拶」は、次の決意にあふれた文章で結ばれています。
 「『反貧困』の答えは与えられていません。もたもたと、四苦八苦して、『反貧困』の答えを求めていく道のりこそ、わたしたちが一番大切にしたい活動目的です。わたしたちは、貧困にある人と共に生きる≠ネどとは言いません。ただ、貧困から目をそらさず、貧困にある人が同じ社会の一員であることに痛みを感じ、少数者の視点に立ち、わたしたちにできるつながり≠作り続けていきたいと思います」
 今年も忙しくなります。


府職労ニュースインデックスへ