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府職労ニュース


2010年 7月26日

最低賃金を生活保護を上まわる水準に
当面次官級を1000円以上に改善せよ

京都総評が京都労働局に意見書

 7月7日、京都労働局長が京都地方最低賃金審議会に最低賃金の引き上げの諮問をし、京都での審議がはじまりました。これを受けて京都総評は7月21日に「意見書」を提出しました。中央最低賃金審議会は、早くて今月末に地方での審議の目安となる答申を出す予定です。京都総評は7月27日に請願行動を実施するとともに最低賃金審議会開催日にアピール行動を実施します。

最低賃金改定審議にあたっての意見書

 京都府最低賃金改定にあたって、最低賃金法第25条5項にもとづき意見表明します。
 なお、京都の審議会として自立した審議、とりわけ、生計費を重視した審議を行うよう求めるとともに、意見陳述の場を設けるべきであり、閉鎖的な審議を抜本的に改善することを強く求めます。

                                             記

一、京都府最低賃金を、少なくとも生活保護を上回る水準に改善すること。私たちの試算では、就労することを前提した就労以前の生活保護を算定すると時間あたり978円で、就労後に生活保護を算定すると時間あたり1114円となる。(いずれも労働時間は厚生労働省の示した時間で割った場合)そのため、当面、時間額1000円に引き上げることを求める。

一、審議にあたり、広範な関係者の意見が反映するよう、最低賃金法第25条6項、同施行規則第11条2項にもとづく意見陳述の場を持つこと。

一、審議会については、専門部会も含めて公開とすること。

【趣旨】
1、 雇用戦略対話は最低賃金について「2020年までに平均で名目3%、実質2%を上回る成長」を前提に「できる限り早期に全国最低800円、景気状況に配慮しつつ全国平均1000円をめざす」としました。また、今回の諮問については、中央段階でも、地方段階でも、最低賃金法9条にもとづく3要素や生活保護に係る整合性に配慮することを前提に、雇用戦略対話の合意も踏まえた審議を求めています。
 私たちは、これらについて、以下の諸点を指摘したいと思います。
① 「早期に全国最低800円、景気状況に配慮しつつ全国平均1000円」について「政労使」が合意したことについては歓迎します。

② しかし、全国一律についてはあいまいであることをはじめ、「2020年までに」としたことや「平均で名目3%、実質2%を上回る成長」を前提としていることについては、現在の経済情勢から見れば吟味再考することが必要です。

③ 生活保護に係る整合性については、この間私たちが指摘してきたことはまともに検討されておらず、法の趣旨に反する事態が続いています。

2、私たちは、経済成長が前提の最低賃金引き上げではなく、最低賃金の引き上げによる需要の拡大をおこなうべきだと考えます。最低賃金を大幅に引き上げることを先行し、並行して政府による中小零細企業への支援をおこない、地域経済の底割れとも言うべき状況と、経済の悪循環を断ち切ることが必要です。

 京都府内、とりわけ北部地域での経済の疲弊は大きく、地域経済の自立的な循環が崩れています。私たちが今年5月に北部地域の自治体や経済団体などと懇談をしたときには、「空き店舗率は50%以上」(福知山)「商店街はのきなみだめに」(舞鶴)「(織物の)生産がピークの5%。織機の部品も手に入らない状態に」(与謝野)「企業の撤退が相次いだ」(綾部、福知山)など深刻な実態がどの地域でも出されました。

 同時に、地域での基幹産業の崩壊、公共事業の激減などによる需要の減少が、地域経済の悪循環を起こしているという点で認識がそれほど異ならないことも分かりました。

 「大切なのは需要の創出。民需をつくるために公共事業が必要」(舞鶴市)「グローバルの視点からみると国内の中小の生き残りの方向をどうしたらいいかという根源的課題がでてきている」「賃金、このままでいいとは思わない。あげていくこと必要。自立できる地域の活性化が大切」(京丹後)「マイナスの連鎖に対する克服策として、自立循環型の経済社会づくりが必要」(宮津)など率直に出されました。

 そのため、私たちが提起した最低賃金の大幅な引き上げについて、「最賃引き上げは効果があると思う」(舞鶴)「おっしゃることは理解できる。経済が弱い中、補填してもらえるならできるが」(京丹後)「意味合いはよくわかる」(宮津)など、自治体でも経済団体でも、需要の拡大のために賃金の底上げが必要だという点では大きな意見の違いはありませんでした。もちろん、雇用に関して、若年労働者が定着しないなど、他の深刻な問題も関連してあることも出されました。

 雇用戦略対話が、最低賃金を大幅に引き上げることが必要だという点で一致したのは大きな前進です。これを一歩進めて、現在の日本の地域間の経済格差、地域での経済と生活が崩れてきていることをどのように再生していくのかについての議論をすることが求められます。地域ではさまざまな努力が行われましたが、この10年余りの経済の動向は、69ヶ月続いた好景気が地域経済に波及しなかったことを教えています。いわゆる経済のトリクルダウンが実現しませんでした。地方の中小企業の活性化を中心とした地方経済再生戦略が必要なのは明らかだと考えます。

 その点で、「実質2%の経済成長」を前提にした最低賃金の引き上げではなく、政府による中小企業支援を実施することを前提としての最低賃金の大幅な引き上げが重要であると考えます。
 
3、なお、最近、最低賃金の引き上げが景気対策として有効であるとのシンクタンクなどによる報告や発言が増えてきました。富士通総研・研究レポート「どのような成長戦略が求められているのか?最低賃金引き上げは最大の成長戦略だ」(根津利三郎取締役エグゼクティブ・フェロー 2009年12月2日)では、「(最低賃金は)米国ではわが国と同じだが、ヨーロッパ各国は1000円を超える。これを例えば800円ぐらいにすれば、低賃金の労働者には相当の購買力の拡大になる。
  低所得者の限界消費性向は高いという経済学の常識が当てはまるとすれば、これは相当な需要拡大につながる」などと指摘し、他にも雇用との関連、コストアップとの関連にもふれ、「最低賃金の引き上げは一考に価する」としました。東京財団・政策提言「新時代の日本的雇用政策~世界一質の高い労働を目指して~」(2010年3月)では、「最低賃金の引き上げで、それを生産性向上の起爆剤とする」との提言をかかげ、雇用への影響についてどのようになるのかなどについてふれながら、「(最低賃金は)先進諸国の中で最も低い部類に属する。この事実は、日本が国として質の低い労働を許すというメッセージになってしまっている。最低賃金の引き上げを生産性向上に結び付けるという政策対応の可能性が見えた今、わが国は低賃金労働に依存する経済から転換し、生産性をより高めていくべきである。雇用の『質』において、世界一を目指すことが今後の日本の国家目標の一つとして考えるべきではないだろうか」と他のいくつかの施策と重ねあわせながらの提言をしています。

 アイリスオーヤマの大山健太郎社長は、新聞のインタビューで「市場原理が経済の基本だが、弱者を生み出す。そこを補うのが最低賃金引き上げだ。低所得者は収入が増えれば大半を消費に回す。賃金底上げで低所得者の生活水準があがり、消費市場も拡大する。一石二鳥だ」(日経「インタビュー領空侵犯」2010年3月22日)と述べています。

4、現在厚生労働省でナショナルミニマム研究会が開催され、その中間報告も出されました。この研究会には最低生計費試算のワーキンググループもつくられ、経過的な報告が出ていま戦略が求められているのか?最低賃金引き上げは最大の成長戦略だ」(根津利三郎取締役エグゼクティブ・フェロー 2009年12月2日)では、「(最低賃金は)米国ではわが国と同じだが、ヨーロッパ各国は1000円を超える。これを例えば800円ぐらいにすれば、低賃金の労働者には相当の購買力の拡大になる。

 低所得者の限界消費性向は高いという経済学の常識が当てはまるとすれば、これは相当な需要拡大につながる」などと指摘し、他にも雇用との関連、コストアップとの関連にもふれ、「最低賃金の引き上げは一考に価する」としました。 東京財団・政策提言「新時代の日本的雇用政策~世界一質の高い労働を目指して~」(2010年3月)では、「最低金の引き上げで、それを生産性向上の起爆剤とする」との提言をかかげ、雇用への影響についてどのようになるのかなどについてふれながら、「(最低賃金は)先進諸国の中で最も低い部類に属する。この事実は、日本が国として質の低い労働を許すというメッセージになってしまっている。最低賃金の引き上げを生産性向上に結び付けるという政策対応の可能性が見えた今、わが国は低賃金労働に依存する経済から転換し、生産性をより高めていくべきである。雇用の『質』において、世界一を目指すことが今後の日本の国家目標の一つとして考えるべきではないだろうか」と他のいくつかの施策と重ねあわせながらの提言をしています。

 アイリスオーヤマの大山健太郎社長は、新聞のインタビューで「市場原理が経済の基本だが、弱者を生み出す。そこを補うのが最低賃金引き上げだ。低所得者は収入が増えれば大半を消費に回す。賃金底上げで低所得者の生活水準があがり、消費市場も拡大する。一石二鳥だ」(日経「インタビュー領空侵犯」2010年3月22日)と述べています。

4、現在厚生労働省でナショナルミニマム研究会が開催され、その中間報告も出されました。この研究会には最低生計費試算のワーキンググループもつくられ、経過的な報告が出ています。家計調査をもとに、「抵抗線」から導き出された二つの試算は、消費支出165545円+税・社会保険料、消費支出157700円+税・社会保険料の二つです。私たちも2006年7月にマーケットバスケット方式による最低生計費試算を発表しましたが、結果としてほぼ同じ数値となっています。この間、全国で最低生計費試算が行われましたが、注目すべき内容は、都市部でも地方部でも、ほぼ同じ生計費が必要であることが明らかになったことです。私たちが生計費試算をした時に予想していたことですが、実際の試算で証明されました。これは、主に、地方で働くためには交通手段として自動車が必要になってくるためです。
 いずれにしても、これらの最低生計費がクリアーされないと、労働力は、雇用があり賃金も比較的ましな都市部に流れ、地方での疲弊が進むことになります。

5、生活保護の最低生活費と最低賃金との逆転現象は1980年代初頭からです。もともと最低賃金と生活保護とは連動していました。特に、国の失業対策就労者の賃金と最低賃金、生活保護とは連動していたため、最低賃金が生活保護を下回るということは許されませんでした。昨年示された最低賃金と生活保護との京都での乖離額は23円で、このうち12円が引き上げられました。また、今年、厚生労働省が試算した乖離額は20円としています。しかし、私どもは、この乖離額については実際とは異なるものであるため、再度乖離額を試算しなおすべきだと考えます。私たちは、改正最低賃金法の趣旨を生かすためには、少なくとも以下の諸点を指摘します。

(1) 生活扶助費について、府内級地の人口加重平均が利用されていますが、平均を採用すると生活保護水準以下の最低賃金額となる地域がでてきます。特に1級地の1はそうならざるを得なくなりますが、この地域は府内全体の人口の過半数となります。法の趣旨に反する実態をなくすためには、京都市内1級地の1の扶助費を採用することが必要です。また、先に最低生計費試算についてふれましたが、働く場合に都市と地方で生計費がほとんど変わらないということに留意することが必要です。

(2) 勤労控除が算定されませんでしたが、これも法の趣旨に反する実態をつくりだすこととなっています。生活保護を受ける場合、就労前だと基礎控除の70%が就労に伴う必要経費として「加算」され、就労優秀な場合(特に問題なく仕事をしている)は、基礎控除100%と特別控除(基礎的な生活扶助分の1割)が「加算」されます。この控除を入れないこと
には、働いて得た賃金が生活保護を下回り、生活保護を受けることができることとなります。
(3) 住宅扶助については、実績値を採用していますが、これでは、京都市内で賃貸住宅を借りることは例外的な物件であり、通常は存在しません。生活保護の住宅特別基準は、最低限、実際に合わすためにつくられており、この数値を採用すべきです。

 さらに、試算にあたっては、現在、月約150時間という所定内労働時間の実態をふまえるべきなど、あらためて試算をやりなおすべきです。生活保護制度は行政によって厳密に算出される制度であり、比較するにあたって恣意的な試算は論外です。さらに、昨年、生活保護制度については、運用改善の通達が出され、働いていても生活保護を適用することを鮮明にしました。昨年も指摘しましたが、実際に働いていても生活保護水準以下のため、生活保護を申請し受給するという事例が発生しています。京都でも、非正規労働者が生活保護を申請し、受理された人が存在しています。これは、現在の最低賃金が生活保護以下の水準であることを明らかにしたもので、こうした実際の生活をふまえた審議を行うよう求めます。

6、年収200万円以下の労働者は、国税庁調査で1067万人(2008年)存在するとともに、非正規雇用の比率が34・3%に達していることからも明らかなように、ワーキングプア対策は急務です。労働者の3人に1人が低賃金では、内需が冷え込むのは明らかと言えます。

 最低賃金の引き上げは、貧困対策として、そして、景気刺激策としても有効です。低所得層の賃金引上げによる経済波及効果については、昨年も述べましたが、以下に試算を載せておきます。京都府内の時間給1000円未満労働者88431人(一般32793人、パート55638人。平成18年版賃金構造基本統計調査より)の賃金改善(時間額1000円にする)をした場合、一人当たり平均の賃金増額は、一般で27586円、パートで20881円となり、府内全体での賃金増加総額は、一般で108.6億円、パートで139.4億円、合計248億円で、先にふれたように低所得層の場合、ほとんどが消費需要に回ることや、主として中小企業分野の需要を拡大することから、地域経済の循環を促すこととなります。(試算は10円刻みで行っています)低所得層ほど消費性向は高く、地域経済への貢献度は高いものがあります。