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2014年 12月08日

首相らの歴史認識に「不信感」
米国内の受け止め

マイク・モチヅキ氏が講演

 ジョージ・ワシントン大学教授のマイク・モチヅキさんは「安倍政権の歴史認識に、米国では今も深い不信感がある」という。シンクタンク「新外交イニシアティブ」が12月3日、都内で開いたシンポジウムでの発言だ。その要旨を紹介する。(文責・編集部)

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 戦前の日本は侵略的な国家であり、誤った外交政策からアジアに大きな苦しみを与えたという見方は、日米両国民の間で広く共有されています。1993年に細川護煕元首相が記者会見で「(あの戦争は)侵略戦争だった」と発言したとき、日本国内で大きな論争には発展しませんでした。ほとんどの日本人にとって常識だったためです。

 それ以後の首相も同じ認識でしたが、安倍首相は2013年に国会の答弁で「侵略の定義は定まっていない」など、侵略を否定するかのような発言をしました。そのような歴史観に、米国政府は深い不信感を持っています。

▼「慰安婦に強制なし」

 安倍首相は、従軍慰安婦制度について謝罪を表明した「河野談話」を覆す運動団体のリーダーの1人だと、米国でも知られていました。そのため06年に安倍首相が就任した後、米国下院で「慰安婦に対する日本政府の謝罪を求める決議」が提出されました。

 決議が採択されないよう、安倍首相はワシントンを訪問し、「河野談話を支持する」とブッシュ大統領(当時)に直接伝えました。日本大使館のロビー活動もあり、決議は採択されないかと思われましたが、その折、米紙「ワシントン・ポスト」に日本の保守系知識人らが「慰安婦募集に日本政府や軍の強制はなかった」などとする意見広告を掲載。これが引き金となり、一気に決議採択へと進んだのです。

 このような米国の動きを「反日的」とする見方は間違っています。慰安婦問題は人権問題であり、20世紀初頭から、人身売買や戦時の残虐行為を禁止する国際社会の取り組みが続けられてきました。

 例え強制的に連行されなくても、だまされたり、親に売られたりして慰安婦のシステムから出られず、そこにとどまることを要求された場合、それは性奴隷(sex slave)であるというのが、国際的な規範です。

▼「記憶と教育」が必要

 被害者への補償金を支払っているので、既に決着済みという見方もありますが、大事なことは謝罪と補償だけではなく、「記憶すること」と「教育を行うこと」を通じ、過ちを繰り返さないために積極的に努力することです。

 過去の過ちに正面から向き合うことは、恥ずべきではなく、むしろ誇るべきことです。例えば米国は第二次大戦中に、日系人を強制収容するなどの人権侵害を行いました。その後被害者への謝罪と補償を行い、元収容所を税金と寄付で復元させて、記憶と教育を保障しています。

▼米国にもの言えぬ日本

 米国の外交政策に対して声をあげることに、日本の政策立案者は根強い不安感があるように思います。

 03年のイラク戦争開戦に、ほとんどの日本国民は反対しましたが、政府は支持しました。現在のイラクの混迷状態を鑑みると、もし03年に日本政府がNOと言っていたら、いま米国は日本を尊敬していたでしょう。 (連合通信)                                                           
 

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