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2014年 5月16日更新

企業の食い物になるだけ 
東京都足立区は市場化の実験場?(下)
 
外注化の「先駆」か

 仕組みづくりに金がかかり、サービスの質の面でも不安材料の多い足立区の大規模民間委託。同区は民間委託の先駆になってきた。小泉政権時に民間のノウハウを活用するとして「市場化テスト(民間競争入札)」が導入された2006年に戸籍業務への導入に名乗りを上げたが、「公権力の行使が必要な業務にはなじまない」としてとん挫したいきさつがある。当時も現在も区長を務める近藤やよい氏は、市場化テストの具体化を検討した「官民競争入札等監理委員会」に、自治体首長で唯一名を連ねていた。

 その後、一昨年には同区が幹事の「日本公共サービス研究会」を発足。当初約150の自治体を集め、それぞれの委託の現状を持ち寄り、最大限の可能性を探ろうとしてきた。

 昨夏まとめた中間報告では、行政特有の専門知識が必要だとして従来は委託の対象外だった国保や戸籍業務から「定型的業務」を抜き出し、委託を広げることを提唱した。その上で、同区は外部化指針を4月に策定。そこでは「足立区は、(略)他自治体と共有可能な外部化モデルを構築し、全国自治体に発信できるよう、業務ノウハウの標準化や共通化を積極的に目指すべき立場にある」と述べるなど、外注化の「先駆」になろうとしている。

 興味深いことに、同研究会の中間報告は、民間委託の拡大が必要という立場から、賃金の底支えを行う公契約条例も検討事項に上げた。足立区は昨年夏、公契約条例を制定済みだ。

▲行政が企業の食い物に

 区では図書館などの小規模な業務にも、外注化を進めてきた。民間委託された2つの図書館で労働争議が起きている。区立竹ノ塚図書館では、従業員に、蔵書への「防犯用シール貼り」の持ち帰り残業を指示していた。シール貼りは時給換算で180円にしかならない作業。抗議した女性副館長がその後雇い止めにされ、現在東京地裁で係争中だ。

 足立区労連の大滝慶司議長は「大規模なものから小規模なものまで行政サービスが企業の食い物にされている」と指摘する。

 歳出削減を進める国の政策の下、少子高齢化や地域経済の疲弊など、多くの自治体が財政の先行き不安に直面する。とはいえ、その処方せんが、民間営利企業への全面的な委託でいいのか。多くの危惧をよそに自治体を「市場化の実験場」にすることの是非が問われている。(おわり)
  
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