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2014年 5月16日更新

効率・利便性が犠牲に 
東京都足立区は市場化の実験場?(中)
 
早くも露呈した弊害

 自治体基幹業務の民間営利企業への委託に舵を切った足立区。だが、早くも弊害が露呈している。

 東京法務局は3月、同区の戸籍業務への現地調査をもとに、「委託の範囲を超えている」と事務改善を求めた。戸籍業務は市区町村長(に任用された職員)が行うべきとする戸籍法に違反するとの指摘だ。「従来(自治体が行うべき)判断業務とされた領域であっても外部化を展開することは可能」とする足立区の考え方を否定したのである。

 従来は庁内の一本の指示系統で行われてきたところに、別の企業が入り込むことによる問題も生じる。

 「戸籍異動業務」の場合、委託先社員が「受付」から「(申請書類の)要件確認」「住所照会」などを行った後に、区職員が受理するかどうかを判断する。区職員は決済だけを行うが、その前後でトラブルが生じても、委託先社員に直接は指示できない。違法な偽装請負となるためだ。

 そのため、従来は5分で済んでいた証明書発行が、委託後には3~4時間待たされる事態が生じている。「不慣れな窓口担当者と、奥にいる職員とが直接やりとりできないことに業を煮やした住民が、『私が直接言ってあげる』と間を取り持とうとした」という冗談のような話も。

 委託先が判断業務を行えば戸籍法違反となり、区職員が委託先社員に指示すれば偽装請負になる。法違反を避ければ、効率と利便性が犠牲になるというジレンマに陥っているのだ。

▲縦割りの弊害も

 行政を縦割りで委託することの弊害も指摘される。

 この問題を追及してきた額賀和子区議(共産)は、「国保の滞納問題一つとっても、所得を確認して減免申請したり、生活保護につないだりする。マニュアル化で解決するものではない」。区職員で足立区労連の大滝慶司議長も「住民の多くは問題が整理されないまま来庁するため、さまざまな制度の窓口につなぎながら、複雑な問題を解決していく。しかし、民間委託で縦割りになればそうもいかない。住民の権利の問題だ」と指摘する。

▲悪用への歯止め乏しく

 個人情報への懸念も見逃せない。自治体は個人情報の宝庫。家族構成や病歴、所得や税、滞納状況など、いわば「ビッグ・データ」が眠る。

 こうした情報が貧困ビジネスの手に渡り、悪用される恐れはないか。過去には社会保険の情報が委託先の下請け企業から流出した事例もある。

 さらに、受託企業はこの膨大な情報を入手できる立場にある。漏えいには刑事罰を伴う罰則が条例で定められているが、受託企業が住民の情報を取り込むことに効果的な防止策はない。区は「特定委託業務調査委員会」を立ち上げ、地方公務員並みの罰則強化を検討しているが、「ごまかしに次ぐごまかし。区は『第三者の視点で個人情報が守られているかをチェックする』と言いながらも、流出は『防げない』と認めている」と額賀区議は批判する。

 罰則強化策については、パブリックコメントを4月中旬から1カ月間募集し終えたところ。見切り発車の感は否めない。(つづく)
  
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