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2014年 5月16日更新

「戸籍」「国保」業務も民間へ 
東京都足立区は市場化の実験場?(上)
 
各業界大手が受託

 東京都足立区で、戸籍や国民健康保険、介護保険業務など住民サービスに直結する基幹業務の大部分を営利企業にゆだねる動きが急ピッチで進んでいる。利便性や住民の個人情報、法令との関係などの課題は未解決のままだ。

▲企画から民間にお任せ

 足立区は自治体の窓口業務や国保業務の全面的な委託に向けて、整備を進めてきた。既に、戸籍業務で今年1月、介護保険業務は4月に委託。来年4月からは国保業務を委託し、その1年後には全業務の9割の委託を予定する。課税業務も検討中だ。

 公権力の行使や区職員の判断が必要な業務をこれほどまで大規模に営利企業に委託する例はない。狙いは経費削減と「効率化」。同区は4月にまとめた外部化指針で、「人件費などの固定費を極力抑制しつつ、公共サービスの提供に必要な人員と財源を生み出す取り組みを強化することが求められる」と説明。効率的な運営を行うため、「可能な限り広範囲に外部化すること」を明記した。

 最大の特徴は、企画から業務分析、外注化の仕組みづくりまでの一式を区外業界大手企業にゆだねていること。戸籍業務は戸籍システムを手がける富士ゼロックスシステムサービス、介護保険業務は派遣大手テンプスタッフ、国保業務はNTTデータが受託。さらに、会計業務には派遣大手パソナの受託が4月に決定した。

 業務分析とは、例えば国保業務の場合、「資格取得」「郵送喪失届け処理」「公示送達」「電話対応」など約400もの作業に分類し、1年間に要した時間を積算。その中から公権力行使や判断業務の有無を調べ、委託の可否を選り分けている。

 NTTデータが同区に提出した資料では、「国保業務における全仕事量の90%相当が外部委託実施可能という結果となった」とし、マニュアル整備や業務習得など、全面委託までの工程を示す。企画から仕組みづくりまで全て民間にお任せという様相だ。

▲ノウハウまで売り物に

 外注化は経費削減に結びついているとも言えない。既に委託した戸籍業務の受注額は、1年9カ月で3億8500万円。削減予定の職員数はフルタイム換算で22人分で、コストは随分割高である。外注化の仕組みづくりの費用が含まれているためで、偽装請負とならないよう、フロアに間仕切りをする改装費用を含めれば4億円を超える。

 さらに、委託のノウハウも有料に。同業務を受注する富士ゼロックス社が作成した業務マニュアルについて開示請求したところ、条例上の期限ぎりぎりの60日目に区はようやく開示。一部は同社の「著作権」との理由で非開示とされた。

 区は受託企業との覚え書きで、業務マニュアルなどの成果物に関する著作権を規定。「代金の支払いと引き換えに発注者に転移する」としている。
 受託企業は外注化の仕組みづくりで儲け、人の派遣でさらに儲け、そのノウハウをも売り物にしようというのである。(つづく)
  
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