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時の問題/集団的自衛権、憲法解釈で容認 |
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改憲への新作戦開始 |
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安倍政権が改憲に向けた新たな作戦に乗り出します。憲法9条を根拠に集団的自衛権の行使を禁じてきた政府見解を解釈で変えるもので、9条の条文を変えずになし崩しにする狙いです。首相は、私的な諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)を近く再開させ、年内にまとめられる予定の報告書をテコに実現させる構えです。 ▼日米同盟強化狙う 集団的自衛権とは、同盟国などが武力攻撃を受けた際、それを自国への攻撃とみなして武力を行使できる権利。国連憲章では各国が持つ自衛権の一つと認められていますが、日本政府はこれまで戦争の放棄、戦力・交戦権の否認を定めた憲法9条に違反するとして、行使を禁じる見解を示してきました。 安倍首相や安保法制懇の主なメンバーは、「日本が武力攻撃を受けた際、米国は日米安全保障条約により日本の防衛に当たるが、逆の場合、集団的自衛権を行使できない日本は米国を守る行動が取れないのは不平等だ」というのが持論。中国との尖閣諸島、韓国との竹島をめぐる領有権問題や北朝鮮の核ミサイル実験で高まる東アジアの緊張感に備えようと、「不平等」を解消して米国との同盟関係をより強め、周辺諸国をけん制したいというのです。 ▼参院選受け路線変更 安倍首相が昨年末の再登板からまず掲げたのは、自民の改憲草案をもとに憲法を条文から丸ごと変えることでした。このためには、衆参両院で3分の2の議員による発議が必要でしたが、7月の参院選で自民は大勝したものの、他の改憲政党が伸び悩み、改憲勢力は参議院で3分の2を得られませんでした。そこで首相は、集団的自衛権行使を認めさせることで憲法9条を事実上変える路線に変更したとみられます。 ▼行使のケース具体化 その足固めは着々と進んでいます。 8月下旬に議論を再開する安保法制懇は、もともと第1次安倍政権下で置かれ、2008年には憲法9条の解釈を変更して集団的自衛権を行使すべきとした報告書をまとめていました。報告書では行使できるケースとして「公海上での米艦船の防護」「米国を狙った弾道ミサイルの迎撃」「国連平和維持活動などにおける他国軍への駆け付け警護」「後方支援」の4つの類型を提言しています(表参照)。 これだけでも、仮に公海上で米艦船を防衛目的で戦闘を行えば、相手からの報復や反撃として国内の自衛隊基地が狙われる恐れがあります。にもかかわらず、法制懇は、集団的自衛権を行使できる範囲を拡大するよう報告書に盛り込もうとしています。具体的には、「安全保障上、日本と密接な関係がある国が攻撃を受け、日本に重大な被害が及ぶ時も行使できる」(座長代理を務める北岡伸一国際大学長の共同通信のインタビュー)というものです。 ▼国民無視許されぬ 条文を変える改憲は、96条の規定で国民投票に最終判断が委ねられますが、政権が今回目論む解釈変更では国民は直接意見を言う場が一切ありません。この点について、政府の法の統一見解をつくる内閣法制局で長官を務めた山本庸幸氏は、8月20日の最高裁判事就任の記者会見で、「解釈変更による集団的自衛権の行使は難しい。国会と国民の判断に基づく改憲が適切」と異例の指摘をしました。 一方、山本氏の後任となる小松一郎新長官は、前回の法制懇報告書づくりに携わった人物。行使容認の解釈を後押しするのはほぼ確実です。政府見解を変えれば、それを実行できるよう軍備拡張の動きが加速するのは必至。ついには本格的な改憲へ進み、自民改憲草案が掲げる国防軍創設が現実のものとなるでしょう。戦争参加に道を開きかねない重要な問題を、国民の預かり知らぬところで決めることは許されません。 |
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