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2013年 7月27日

    「窓口で追い出され餓死寸前に」
STOP!生活保護切り下げ(下)

生活保護問題対策全国会議代表幹事 尾藤廣喜さん

 生活困窮者が福祉事務所の窓口で追い返され、餓死寸前になったり、甚だしい場合には、死に至るケースが近年、相次いでいます。生活保護は緊急を要する場合が多く、これまで野宿生活者が路上で行き倒れても、病院が「氏名不詳者」として福祉事務所に電話で連絡するなどの「口頭申請」が認められてきました。そうしなければ、命を奪われる場合もあるからです。今回の「改正法案」で政府が打ち出している原則「書面申請が必要」という考え方は、こうした保護を受ける権利の侵害そのものです。

 親族の扶養義務も強化され、福祉事務所が生活困窮者の親族に対し「なぜ扶養しないのか」と職場にまで問い合わせることが可能になろうとしています。事実上の扶養強制であり、家族間の私的な支え合いより国の扶助(公助)を重視しようという戦後の制度改革の流れに反するものです。

▼「扶養強化」は貧困強める

 貧困は自己責任ではなく、社会構造の問題です。そもそも、経営者は利益を最大限に高めるため、できるだけ賃金を低く抑えようとします。何の規制もなければ、労働者はすぐ、極端な貧困状態に陥ります。それを防ぐために、国は労働時間を規制して最低賃金や有給休暇を保障し、年金や生活保護のような公的給付を行って富の分配を是正しています。資本主義の矛盾を解決するためには、社会保障を充実しなければなりません。

 日本では昔から儒教の考えが強く、子どもが親の面倒をみる「孝」が非常に大切にされてきました。親は何の力もない未成熟な子どもを扶養し、また、夫婦はお互いを助け合わなければなりませんが、それ以外の家族間については、扶養義務を弱め、公的扶助を強めようというのが近代国家の精神です。

 昨年、お笑いタレントの母親が生活保護を受給していた件で非難が殺到しました。もし、家族同士で面倒をみることになれば、多くの貧困は家族の内部でそのまま放置されることになります。今回の「改正」法案の考え方は、古い時代への逆戻りにほかなりません。

▼年金・雇用・医療手厚く

 日本の社会保障はお粗末です。例えば、国民年金を受け取るためには原則として最低25年以上保険料を納めなければなりませんが、それでも月額4万円程度しか支給されません。また、最低賃金は一部の自治体で生活保護水準を下回っており、最低生活を保障した賃金になっていません。

 十分な年金が支給されるようになれば、生活保護利用者の大半を占める高齢者は保護を受けずに済みます。最低賃金がもっと引き上げられれば、保護に頼らなくてもまともな生活が送れます。スウェーデンでは、年金制度が発達しており、普通に生活する限り、高齢者や障がい者は保護を受ける必要はありません。イタリアでは、医療費や教育費が無料であるなど他の社会保障が充実しており、国の制度としては生活保護そのものがないのです。

 本来、生活保護の守備範囲はもっと狭くていい。雇用と医療をしっかり保障して、年金の給付額を増やし、雇用保険の守備範囲を広げれば、必ず保護費は減ります。年金が手厚いと国民は保険料をしっかり支払うはずで、そうなれば社会保障全体の公費負担部分はもっと少なくて済むでしょう。ところが、政府は年金の減額や解雇規制の緩和など真逆のことをやろうとしています。これでは生活保護は決して減りません。

                  

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