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2013年 1月24日

名ばかりのグローバル戦略 
アルジェリア人質事件が伝える/安倍政権のずさんな実態

対応遅れを自衛隊派兵に転嫁

 アルジェリアの天然ガス関連施設で日本のプラント企業「日揮」の駐在員らがイスラム武装勢力に人質に取られた事件は、海外ビジネスの厳しさを改めて突き付けている。同時にグローバル経済による成長戦略を描く安倍政権の実態も早々に見え始めてきた。

▼企業努力にタダ乗り

 それが最も示されたのは、情報把握の拙さだ。菅義偉官房長官は人質の安否について「状況把握に努める」と繰り返したが、日揮や現地の報道などからの2次情報しか発表できずじまい。対策本部長の麻生太郎副総理も「情報が乏しい」と嘆くばかりだった。

 1960年代から同国で事業展開する日揮にも「予想外」の事件であるとはいえ、海外での邦人の安全確保は政府の務め。その土台となる情報がろくにつかめないのでは、海外ビジネスを国策に掲げても民間企業の努力にタダ乗りしていると言うほかない。駐在員たちがサハラ砂漠の真っただ中にある現場で奮闘していた点を踏まえれば、なおさらだ。

▼悲劇横目に原発輸出
 
 ましてや安倍首相は、外遊先のベトナムで深刻な事件の発生を知っても戻ろうとせず、邦人殺害の一報を聞いて慌てて帰国した。持論の「強い安全保障」とは一致しないが、なおも首相はエネルギー獲得競争の末に起きた悲劇を横目にベトナムへ原発輸出を伝えた。そこには、国策によって起こり得るリスクや犠牲を十分見極めた形跡は見つけられない。

 マスコミには「現地で指示した」とかばうような報道もあるが、この事件は安倍政権の掲げる戦略がいかに粗末で、政府の対応も極めて無頓着であるかを教えてくれている。

 「今の自衛隊法では、海外で動乱が起きて邦人が空港や港湾までたどり着いた場合でも、安全が確保されなければ輸送できない」

 アルジェリア人質事件で、邦人駐在員の安否が心配されていた最中の1月20日、自民党の石破茂幹事長は記者会見で自衛隊法の改正を唱えた。日本人7人の死亡が確認された翌22日には、政府の菅義偉官房長官も同じ方針を明らかに。海外で大事件に巻き込まれた民間人を助けるには、自衛隊が海外派兵しやすくすべきというのだ。

▼英国は素早く民間機派遣

 日本と同じく民間人がこの事件に巻き込まれた国の対応を確認しておこう。

 毎日新聞の記事によると、イギリス政府は事件発生の翌17日にアルジェリア政府から武力解放に踏み切ったとの情報を得て、18日に現場の天然ガス関連施設の運営企業とともに航空機をチャーター。20日に救出者を帰国させた。米国も18日に空軍機を現場近くの都市に向かわせ、解放された人質を輸送した。

▼憲法改正に利用したい?

 一方、日本政府は21日になって政府専用機を現地へ派遣する準備に入った。英米とは情報入手の時点から一貫して大きく遅れている。英国が民間機を現地に送ったことからすれば、石破氏が問題の解決を自衛隊法改正に求めるのは見当違いで、悲惨な事件を憲法改正のテコにしたいのではと疑われても仕方ない。

 事件を受け、安倍政権は海外情報入手などを目的に米国のNSC(国家安全保障会議)の日本版組織をつくろうとしている。政権は、従軍慰安婦問題など過去の戦争加害の見解を変える方針を示してアジアなど各国から批判されており、NSCなどという野望は警戒されるばかりだろう。

                                

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