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2013年12月 5日

政権の巻き返しで難民急増
シリアレポート

フォトジャーナリスト 久保田弘信

 2011年1月26日に始まったシリアの内戦。その犠牲者は11万人を超えると言われ、隣国へ逃れたシリア人難民の数は220万人に達しようとしている。今年の2月潜入取材をした時は反政府系の自由シリア軍が優勢だった。その後、アサド政権の外交政策が功を奏し、ロシアはもとより、イランのイスラム急進主義勢力ヒズボラの力を得て戦局は反転、アサド政権側が圧倒的有利な立場に立った。(全てが手作りのテント村。子どもたちが簡易トイレを見せてくれた 写真使用の場合は「撮影=久保田弘信)

▲あえて市民を攻撃

 5月に2度目のシリア取材をした時、前回訪れた病院に大勢の兵士が出入りしているのに驚いた。しかも、兵士の多くが海外からのムジャヒディン(義勇兵)であり、病院が反政府勢力の拠点のようになってしまっていた。  

 現政権からすると、自由シリア軍をどれだけ攻撃しても海外からムジャヒディンが応援に駆けつけ、堂々巡りになってしまう。ならば、自由シリア軍を支援する村の一般市民を攻撃する方が厭戦(えんせん)気分を醸し出せると判断。市民が攻撃を恐れて難民化すれば自由シリア軍をサポートする母体もなくなり、結果として自由シリア軍の弱体化を図れるという作戦のようだ。  

エスカレートした現政権はついに無差別に人を殺す化学兵器の使用にまで手を出した。市民への危険度は格段に高くなり、これまでシリア国内に留まっていた人たちも周辺諸国へ逃れるようになってきた。

▲水も食料も不足 

 隣国ヨルダン最大の難民キャンプ「ザータリ」は急速に増える難民に対し、6万5000人まで収容できる設計で作られた。ところが、予想を上回る内戦の激化によってキャンプの人口は20万人近くにまで膨れ上がってしまった。   

食料、水、衣類、そして教育関係、その全てが不足し、シリア難民は過酷な環境で生活せざるを得なくなった。膨れ上がる難民を抱えきれないと判断したヨルダン政府は主要な国境を閉鎖した。それでも難民は砂漠を2泊3日かけて避難してくる。  

 難民キャンプでは支援が追いつかない。せっかく逃れてきたにもかかわらず、戦渦の続くシリアに戻って行く人が毎日数百人から数千人いる。それを上回る難民が連日キャンプにやってくる。

▲明るく健気な子どもたち 

 シリアのダラから来た家族は「難民キャンプに来ればなんとか生きていけると思っていたのに、食料の配給は2週間に1回だけ。水も清潔じゃなくて子どもたちはすぐに下痢をおこしてしまう。このままじゃ戦争が続くシリアに戻らなければならない」と涙を流した。  

 ザータリキャンプの環境や治安の悪さに業を煮やした一部の難民は同族で集まり、国境近くの空き地でテント生活をしている。難民キャンプを出てしまっているので国連からのサポートは受けられず、男性がヨルダンの街中に出稼ぎに出たり、NGOの細々としたサポートでなんとか生活を続けている。  

 テント暮らしをしている人たちは「ザータリキャンプは大き過ぎて治安も悪いし、支援が受けられない。ここは同族同士で助け合って生活しているから故郷と同じ感じで安心できていいよ。ただ、マレーシアの学生さんやヨルダンのNGOの支援が無くなったらシリアに帰るしかなくなるかもしれない」と話してくれた。  

 砂埃が毎日巻き上がる過酷な環境下の生活でも、子どもたちは健気と思えるほど明るい。ザータリキャンプと違って学校へ行くこともできないが、簡易トイレを作ったり、夏の暑さを乗り切るために簡易プールを作ったり、日々大人に交じって働いている。
 
▲日本こそ平和で役割を
 
 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、現時点でシリア難民を支援するには3000億円以上の資金が必要だ。日本政府も緊急支援金として新たに約60億円を支出する用意があるという。しかし、内戦が長引けば、世界経済に与える影響は計り知れない。

 ヨーロッパが通貨危機から立ち直りかけ、アメリカも経済不況をようやく乗り越えようとしている矢先のシリア内戦。日本が今後さらにシリア難民に支援金拠出を求められる事態も想定される。そんななか、シリア難民を支援するという対症療法ではなく、シリアの内戦を止めない限り世界経済に明るい未来はない。

 第2次世界大戦を機に不戦を誓った日本こそ、シリア内戦を終結させるため、和平交渉のテーブルづくりに積極的に関わるべきではないだろうか。そのためにも、まずはシリアで起きていることを知ってほしい。 (連合通信)
 

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