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2013年 6月 6日

問題噴出でも16年開始決定
共通番号制 

弊害抑える運動強めたい

 国が赤ちゃんからお年寄りまで一人一人に番号を振る「共通番号制度」が、2016年にも始まります。5月24日の参議院本会議で関連法案が可決、成立しました。

▼参院審議は11時間

 同9日の衆院可決を受けて、参院の委員会が審議した時間はわずか11時間。政府側が「個人情報の流出は防げない」と答弁したのに可決した衆院でさえ、23時間でした。傍聴した市民が「国を代表する議員としてレベルが低過ぎる」と嘆くのも当然です。

 国会審議では、制度の問題について論点は深まりませんでした。番号漏えいによるプライバシー侵害や、借金などのなりすまし犯罪の危険、初期投資3000億円に見合う利便性の有無や、行政機関同士が個人情報をコンピューターでやり取りすること自体の違憲性などです。

▼法人番号は無制限使用に

 弊害はさらに噴出しています。制度では、個人とは別に企業やNPO、市民団体、宗教法人などの各種団体ごとにも「法人番号」が与えられます。社員や職員に支払った給与額などを行政がつかむためといわれますが、政府は法人番号の使い道を「官民を問わず様々な用途で」とし、制限を設けていません。

 これでは社員はおろか企業もどこで番号が使われているのか分からず、いつの間にか情報が第三者に出回る恐れがあります。また、国が番号を通して各団体のカネの出入りを管理できるので、活動が監視下に置かれることになるでしょう。

▼早くも利用拡大の動き

 個人番号については、主に税務や社会保障に関する行政手続きに限る一応の歯止めがかかりました。ただ、法律には制度開始から3年後の見直しがうたわれ、マスコミはすでに「共通番号の利用範囲の拡大を検討していくべき」(5月26日付朝日新聞社説)と主張しています。政府も所得把握を名目に、金融機関などへの利用を視野に入れているとみられます。

 利用拡大といえば「国が社会保障費の抑制に番号を使うのでは」との懸念も。番号には医療、年金、雇用保険や生活保護などあらゆる社会保障の個人情報がひとくくりにまとめられるため、行政は給付の上限を設ける手続きが容易になります。政府は以前から、社会保障削減を意図した「個人会計(総合合算)制度」を検討してきた事実もあります。

▼弱者はハナから対象外

 政府は、番号制導入の目的に「真に手を差し伸べるべき人への福祉の充実」を挙げています。ここで押さえておきたいのは、番号は住民基本台帳を元に与えられる点です。

 つまり、職や住まいを失って住民登録から消された人や、ドメスティックバイオレンス(DV)などで住民票を移せない人には、番号が届きません。登録地ではない施設に入る高齢者や障害者、昨年の外国人登録制度廃止に伴って住民登録から漏れた外国人も同様です。政府は社会的弱者に手を差し伸べるつもりはないようです。

▼作業段階で新たな矛盾も

 政府は、窓口業務を担う自治体とともに、法整備やIT(情報技術)システムの構築を急ぎ、15年10月には番号を通知する紙を郵送します。その上で、翌年1月から市町村窓口で、IC(集積回路)チップと顔写真付きの「個人番号カード」を配る予定です。
 政府や自治体の作業はこれから。進むにつれて矛盾が出てくるでしょう。番号制に反対する市民団体は、自治体への異議申し立てなどをしながら問題点を広く伝えていく構え。無数のリスクを最小限にする運動が求められます。
                    

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