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2013年 8月30日

    ロシアで「七三一部隊展」
同じ過ち繰り返さないために

「悪魔の飽食」公演も

 今年7月、ロシアの古都サンクトペテルブルクで「七三一部隊展」が開かれた。日本の「悪魔の飽食」合唱団のロシア公演に合わせて催されたもの。日本から持参したパネルにロシア語訳を付けた小さな展示会だったが、訪れた人たちは熱心にパネルに見入っていた。七三一部隊は日本人が起こした歴史ではあるが、それはロシア人自身の歴史でもある。

▼ロシア人もマルタに

 旧日本軍の七三一部隊は、第二次世界大戦中に中国東北部ハルビン郊外で、生体解剖や凍傷実験など残虐な人体実験を繰り返した細菌戦部隊。実験材料にされた人間はマルタ(丸太)と呼ばれ、中国人だけでなく多くのロシア人も犠牲となった。

 「悪魔の飽食」合唱団は、残虐な事実を伝えるために森村誠一氏が作詞し、池辺晋一郎氏が作曲した7つの組曲を男女混声で歌う。歌の中には、ガス室で殺されていくロシア人母子の悲哀をうたった曲もある。ロシア人犠牲者への鎮魂の歌だ。

 「ロシアでの公演は意義のあること」と、森村、池辺両氏は口をそろえる。ロシアは被害国でもあるが、日本兵のシベリア抑留など加害の歴史も併せ持つ。被害と加害、両方あって戦争の真実がある。さらにロシアは、旧ソ連時代のハバロフスク裁判で唯一、七三一部隊を裁いた国だ。

 合唱団の公演や「七三一部隊展」は、事実を知らせることで歴史を乗り越えようという思いが込められている。合唱団は9月に長崎でも公演する予定だ。

▼反戦の思い伝えるために

 「七三一部隊展」は、1993年に日本の市民の手で始まった。きっかけは、七三一部隊と関係の深かった東京・新宿区戸山の旧陸軍軍医学校の跡地で、医学実験の痕跡のある多くの人骨が発見されたことだ。部隊について説明するパネルや模型をつくり、現地の中国から遺品も借りた。これまでに全国61か所を回り、23万人が見学。「日本ジャーナリスト会議特別賞」を受賞したが、開始から20年の歳月が過ぎ、七三一部隊のことを知らない若者も増えた。

 8月29日から4日間、都内の明治大学リバティタワーで開く「七三一部隊展2013」は、若い人たちの見学を望んだものだ。展示には、新たに判明した細菌戦の証拠を盛り込んでいる。教科書には載っていない歴史の事実だ。この展示会と合わせてシンポジウムも行われる予定で、3人の中国人が来日して証言する。

 彼らは日本軍によって肉親を奪われ、戦後も過酷な人生を送ってきた。彼らの心が癒えることはなかったという。

 しかし、ある中国人の被害者遺族は、前出の「悪魔の飽食」合唱団の中国公演に招かれ、その加害の歌に心を打たれ、「日本人を許そう」と思ったという。加害の歴史を伝える大切さがそこにはある。(ルポライター 根岸恵子)
       

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