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2013年 4月 8日

生活保護を「監視対象」に 
兵庫・小野市の適正化条例

偏見助長のパフォーマンス?

 生活保護を利用する人たちが過度にギャンブルに興じることを禁じ、発見した市民に通報を求める条例が、兵庫県小野市で4月から施行された。市は「保護費を浪費して生活困窮に陥るのは誰もがおかしいと思うこと。制度の信頼を取り戻したい」としているが、専門家からは「保護利用者の監視は人権侵害。保護を必要とする人が申請を尻込みしてしまう」と懸念する声が上がっている。

▼市、パチンコ禁止を否定

 「福祉給付制度適正化条例」が市議会で可決された3月27日。蓬莱(ほうらい)務市長は、市のホームページ上で「当たり前のことを当たり前に言える環境を整えた」とアピールした。全国から寄せられた2000件の意見のうち6割が賛成だといい、「熱い激励のコメントを頂戴して大変心強く感じた」と制定の意義を強調した。

 兵庫県中南部にある小野市の人口は約5万人で、生活保護を利用しているのは約120世帯だ。

 条例は、生活保護や児童扶養手当などの福祉制度について、保護費や手当を不正受給したり、パチンコや競輪、競馬などに生活が維持できなくなるまで浪費することを禁じている。罰則規定こそないが、ギャンブル行為や生活困窮者を見つけた市民に通報を求め、警察OBを含む適正化推進員が指導や相談を行うと定めている。

 市によると、4月2日時点で「生活に困っている人がいる」との通報が1件寄せられた。市担当者は「条例の目的は、保護を必要とする人を地域住民と一緒になって支援することだ。パチンコに1回行っただけで指導はしないし、浪費によって家賃が払えないなど生活が維持できなくなった場合が対象になる」と説明している。

▼「保護者には逆効果だ」

 こうした市側の主張に対し、「生活保護など福祉制度の利用者の生活全てを監視対象にするのは、明らかに人権侵害だ」と異議を唱えるのは、法律家などでつくる「生活保護問題対策全国会議」事務局長の小久保哲郎弁護士だ。

 法律では、保護利用者が節約や生活の維持・向上に努めるよう定められているが、保護費の使い道は「原則本人の自由」(小久保氏)。行政が口出しすべきことではない。

 パチンコや公営ギャンブルへの浪費で安定した生活ができない人は、依存症や何らかの障害を抱えている可能性が高いという。そのため、「本来はケースワーカーが、必要な治療やリハビリを受けられるよう医療機関などにつなぐべきだ。市民に通報を奨励しても隠れてパチンコをする事態も考えられ、むしろ逆効果だ」と批判する。

▼「申請諦めさせかねない」

 そして、小久保氏が最も懸念するのは、「生活保護などを受けられるはずの経済的な困窮者に対し、申請を諦めさせるメッセージになってしまうこと」。行政の福祉制度に頼れば、自らの生活が監視されることを恐れて、申請を思いとどまらせることになりかねないというのだ。兵庫県弁護士会も条例可決の27日に「生活保護などに対する差別偏見を助長する恐れがある」という声明を出し、市に廃止を求めた。小久保氏はこう苦言を呈す。

 「生活苦の人が増える中では、生活保護費がパチンコなどに使われていることに反感を持ってしまいがちだ。条例はそうした感情をあおるパフォーマンスではないか」 
                         

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