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2013年 9月30日

   生活保護に新たな「水際作戦」
危ない生活困窮者自立支援法案

モデル事業を9月から始めた自治体も

 安倍政権が秋の臨時国会に「生活困窮者自立支援法案」を再提出する。経済的に厳しい立場に置かれた人に自立を促そうというものだが、本来生活保護を受けられる人たちが新制度に流され、保護を受けられないという新たな「水際作戦」になりかねない。

 自立支援法案は、自治体が生活保護に至る前の段階で生活困窮者に対し相談を行い、早期の「自立」を促す仕組み。すぐにフルタイム勤務ができない人に清掃や廃品回収、農作業などの軽作業(中間的就労)に従事させ、徐々に復帰をめざす就労訓練を制度化するのが大きな柱だ。住まいのない失業者に住宅確保のための金銭給付も行うとしている。

 法案は、扶養義務の強化を盛り込んだ「改正」生活保護法案と一緒に通常国会に提出されていたが、審議未了で廃案となっていた。

▲狙いは保護費の削減

 支援の対象となるのは、生活保護に至る可能性のある困窮者であり、本来保護を受ける権利が妨げられる恐れがある。実際、自立支援制度のモデル事業を9月から始めた奈良市では、仲川げん市長が8月の会見で「安易に生活保護を受給する方を水際で止める」と述べ、生活保護の抑制が狙いであることを明言した。既にモデル事業は7月時点で69の自治体で始められている。

 訓練事業を通じて自立できればいいが、それも怪しい。雇用契約を結ばない「非雇用型」では、就労と訓練との線引きがあいまいなまま、困窮者がOJT(働きながら業務に必要な技能を身につけること)として、最低賃金以下で働かされる事態も懸念される。先行実施されているモデル事業では、「雇用型」を含めて派遣会社に業務を丸投げする自治体もある。ワーキングプア(働く貧困層)の温床といわれる派遣労働を通じて本当に自立できるのか疑問だ。

 生活保護の問題に詳しい森川清弁護士は「稼働年齢層を生活保護ではなく、就労に誘導するのが目的。同時に『改正』生活保護法案で高齢者に対する扶養義務も強化されるため、保護費の大幅な削減が狙われている」と指摘する。

▲貧困削減こそ必要だ

 本当に自立を支援するなら、就労に無理やり追い込むやり方では不十分。幅広く生活面を含めた自立を援助する必要がある。 根本的には、貧困を減らす取り組みが不可欠だ。そのためには年金や医療などを拡充し、低過ぎる最低賃金を引き上げ、雇用保険の普及拡大や正規雇用を増やすことが求められる。
 

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