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それでも荒波に挑む人たち |
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一本釣り漁を引き継ぐため |
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![]() ) ▼ご当地グルメ開発 店を案内してくれた市観光協会の古澤慎一郎事務局長によると、日南伝統の一本釣りで捕ったカツオは、生きたまま急速冷凍されるので鮮度が高い。これに比べて大型船の巻き網漁によるカツオは、捕まった時に多くが死んでしまうため、鮮度は落ちてしまう。 観光協会はこうした特徴に改めて注目し、観光と地元漁業を盛り上げる一手として、一本釣りカツオのブランド化に力を入れ始めている。 その試みの一つが、七輪であぶったカツオをご飯に乗せて食べる「カツオ炙(あぶ)り重」だ。2010年から市内10店舗のメニューにしたところ、3年連続で3万食を突破し、12年には県内のご当地グルメコンテストで見事優勝した。 古澤事務局長に「ご当地グルメ」の開発に成功した秘けつを聞くと、「全店舗の関係者が集まる月例会を開いて、味の維持と向上に努めている」。今年12月には、日本カツオ学会などが主催する「カツオフォーラム」の日南開催も決まった。ブランド化の道は広がりつつあるようだ。 ▼自然と共に「持続可能」 自然と共生する漁であることも、環境面が重視される今にふさわしい。 一本釣り漁師の岩切孝次さん(63)によると、一本釣りの魅力は「カツオと人間の知恵比べ」。学術的な表現に言い換えると、生態系に優しく持続可能な漁だ。 群れごと網で囲んで有無を言わさず仕留める巻き網漁とは違い、一本釣りはエサに見向きもしない群れもいるので、成否はカツオの気分次第でもある。どのようにしてエサを食いつかせるか、掛かった後は10キロにもなる巨体をどうやって釣り上げるか。「そこに漁の面白さがあるし、明日の資源までは奪わないことになる。だから数百年も続いている」(岩切さん)。 ▼「漁業と並ぶ基幹産業を」 その一方で、「漁業と並ぶ基幹産業を育てなくては」という意見もあった。日南市役所職員労働組合の甲斐洋一朗書記長は、「若者がやりがいを持って働ける職場が少ないから過疎化が進む」と語る。 書記長は打開のカギとして、医療介護分野を挙げた。「首都圏の老人福祉施設はどこも満員。過密する地域のお年寄りを日南へ招き、医療介護に特化して雇用をつくる」というアイデアだ。都市とのアクセスは悪いが、自然が多くて気候も安定している。かつては新婚旅行のメッカでもあった環境が、高齢者が落ち着いた老後を送るのに適しているのは間違いないだろう。 ▼将来へ引き継ぐために 日南の豊かな自然は、そこに住む人々の心にも影響を与えている。 一本釣り漁師の渡辺義一さん(71)は「みんなで大きくなろうという相互扶助の精神がある」と話す。それこそが、一本釣りの水揚げ量が18年連続日本一を支えてきたのだという。燃油高、資源枯渇、後継者不足――。そんな荒波の状態でも、漁師以外の人たちからも盛り立てようと奮闘する人たちが現れていることが誇りでもある。 「船乗りになりたい」 渡辺さんが、地元の小学校で漁師の魅力について話した時、児童からはこんな感想が寄せられた。児童の多くは、漁師の息子や孫たち。将来の担い手候補たちの思いが変わらないようにするのが、自分たちの務めだと感じている。 |
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