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2013年 8月26日

    「米国の本音を見誤るな」
インタビュー連載〈参院選後の日本〉

外交評論家 孫崎享さん

 7月の参院選は、原発の存廃やTPP(環太平洋経済連携協定)参加の是非、消費増税の有無など、本来争点にすべき重要課題があったはずでした。しかし、安倍自公政権は「アベノミクス」と「国会のねじれ解消」を掲げて争点を隠し、大きく議席を伸ばしました。

▼争点隠し、沖縄で通じず

 それでも、私は沖縄選挙区の結果に注目したい。普天間移設などの米軍基地問題に対する争点隠しを試みた自民候補に、あくまで県外移設や基地撤廃を求める事実上の野党統一候補が勝ったからです。

 本土では成功した争点隠しが、沖縄県民には通じなかった。本土と沖縄の新聞報道の姿勢の違いも結果に大きく影響したのでしょうが、野党が他の選挙区でも結束できていれば、自公に勝てたかもしれません。

▼ハンドラーだけじゃない

 沖縄の選挙戦で垣間見えるように、安倍政権の外交姿勢は米国一辺倒です。

 今後も、集団的自衛権の行使や、自衛隊に米海兵隊の機能を加えるなどの軍事強化を進め、米軍が全国規模で計画中のオスプレイ飛行訓練も認めるでしょう。これは、大国化する中国を日本、韓国、フィリピンなどで包囲する戦略で、米のリチャード・アーミテージ元国務副長官らいわゆる「ジャパンハンドラー」の発想です。安倍さんは、彼らの思惑がすなわち米国の本音であると見誤っている節があります。

 米国の対アジア政策は今、二つの潮流がみられます。軍産複合体の業界はハンドラーと同じく軍事力で中国に対抗しようという考え。これとは別に、金融や産業界は中国と協調してG2(超2大国)として世界を仕切っていこうとの主張です。二つはいわばがっぷり四つの関係で、その時々の情勢で両面が現れてきます。

▼中国と協調望む大統領

 肝心なのは、リーダーのオバマ大統領は、中国との協調を極めて重視しているという点。中国の新指導者である習近平氏を招き、計8時間も会談を重ねたことからよく分かります。一方、安倍首相は6月のG8サミットで大統領との会談を望みましたが、実現しませんでした。

 オバマ政権は、日本に警告も発しています。

 7月26日にシンガポールで首相と会談したバイデン米副大統領は、「東アジアの当事国は互いに理解を深める行動を取るべきだ」と述べました。日本のマスコミはこの発言を中国への警告と伝えていますが、「米国は中国を刺激して東アジアを緊張することを好んでいない」と解釈する方が実は正しい。米メディアが、安倍政権のナショナリズム的な姿勢に否定的な論調であることもその証しです。TPPに日本を引き入れようとしているのは、経済的なメリットがあるからとみるべきでしょう。

▼ケネディ新大使に接触を

 米国の意向が、ジャパンハンドラーだけのものではないことが明らかになる日は近いでしょう。今秋に駐日大使に故ケネディ元大統領の娘であるキャロライン・ケネディ氏が就任するからです。

 キャロライン氏は、オバマ氏の大恩人といえる存在です。オバマ氏が1期目の大統領選で民主党候補の指名を得られたのも、今も米国民に影響力を持つケネディ家出身の彼女が「私の父のような人物」と支持を表明したからこそ。オバマ氏はその恩に報いようと駐日大使という重要ポストを与えたとみられます。

 彼女の素晴らしい所は、ブッシュ政権が進めたイラク戦争に開戦前から堂々と反対を主張したこと。筋金入りのリベラル派で、近年の歴代大使とは毛色が全く違う。私は、1972年の沖縄返還をまとめ上げたライシャワー氏の再来と受け止めています。

 新大使は、大統領と近い間柄なので、これまでハンドラーに握られていた日本に関する正しい情報が、大統領に直接伝わるはずです。行動力もあるので、沖縄や被爆地など各地を積極的に訪れることも期待できそうです。

 市民サイドとしては、彼女に何とかコンタクトを取り、米軍基地の現状や日本人の思いを伝えたい。それができれば、強圧的な対日政策を変える流れを強められるだけでなく、安倍政権の超タカ派的姿勢にもクギを刺すことにつながるでしょう。(聞き手 山本航)連合通信                

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