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重大事故の備えは十分か? |
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敷地外の対策はおろそかなまま |
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もう一つの原発「新安全基準」骨子案の柱は、重大事故対策だ。福島第一で起きた大量の放射性物質が外に漏れるトラブルである。 原子力の専門家は「シビアアクシデント(SA)」と呼んでおり、骨子案では「著しい炉心損傷」「原子炉格納容器の破損」「使用済み燃料の損傷」「航空機衝突によるテロ」を想定している。 深刻な事故やその被害を抑えるため、いずれも不可欠な備えが電力会社に求められた。ベントフィルターや水素爆発防止装置は、格納容器や原子炉建屋の破損を防ぐ。緊急時対策室や第2制御室は、まさに緊急時の拠点だ。 ただ、連載(1)と(2)で伝えたように、原子力規制委は7月予定の施行時に全てを施すことを運転の許可条件としない方針。テロに関する「特定安全施設」には、3~5年の猶予期間を与えられ、ベントフィルターも含まれそうだ。具体的には、福島第一と同じ沸騰水型原子炉(BWR)は2基、加圧水型(PWR)は1基の設置とあるうち、施行時に必要とされるのはBWR1基に過ぎない。 テロ対策も日本の原子力防災にない観点だが、問題は多い。米国の「9・11」のような旅客機ごと施設に突っ込んでくる場合に限られるのだ。重大事故対策をまとめたのは連載(1)で登場した更田チームだが、地震・津波対策チームから「飛行機は斜めにぶつかってくるが、北朝鮮のテポドンのようなミサイルは真上からくる。原子炉建屋はコンクリート製が多く耐えられない」(和田章・東京工業大名誉教授)と異議が出た。 ▼敷地外は手付かず すでにお気付きかと思うが、骨子案の内容は原発の敷地内だけだ。重大事故が周辺住民の暮らしを奪う罪深さがあるのは、福島の事故を見れば明らか。対策はどうなっているのか。 規制委は1月30日に、骨子案とは別に「原子力災害対策指針案」を発表した。原発の半径5キロ圏内の住民に甲状腺被曝を避けるヨウ素剤を事前に配ることや、5キロ圏外に災害対策拠点となるオフサイトセンターを置くこと、放射線モニタリング体制の整備などが盛り込まれた。30キロ圏の自治体が住民の避難計画をつくることも入る。 ▼「なぜわしが逃げるのか」 だが、それは簡単ではない(図表6参照)。ヨウ素剤は配る方法が決まらず、被曝を防ぐ薬として国の認可もいまだ受けていない。オフサイトセンターは5つの原発が5キロ圏内にあり、「別方向の30キロ圏外に代替施設を確保」という項目も全国で手付かずだ。 住民避難についてもそうだ。島根原発のある島根県は、30キロ圏の住民約40万人をバスなどで移動する計画を立てた。だが、受け入れる隣県との調整はこれから。どこへ逃げるのかは原発の状態や気象条件次第、という根本の課題も残されたままだが、県は「国の検討を踏まえて改正する」と向き合えずにいる。 同原発30キロ圏に住む男性(66)は、「わしはここで人生を送るつもりなのに、なぜ家を捨てて逃げなくてはならないのか」と怒りを隠さない。骨子案をとりまとめた31日の検討チーム会合でも、勝田忠広・明治大准教授が「避難を前提にした対策はよろしくない」と疑問を投げかけた。 少なくとも言えるのは、骨子案対策が完璧に取られたとしても、敷地外の対策がおろそかなままでは、重大事故対策は全く不十分ということだ。その点を置き去りにして原発を動かすのは住民無視であり、いかにも道理に合わない。 |
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