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データ集めはあくまで電力会社 |
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原発「新安全基準」 |
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原発「新安全基準」骨子案の大きな柱は地震・津波対策だ。福島原発事故の原因と向き合い、教訓を生かしていなければ意味がない。 原子力規制委の田中俊一委員長は1月30日の記者会見で、「時間的余裕は考えにくい」と述べ、電力会社が再稼働を申請しても、新基準の地震・津波対策は全てクリアしないと審査は通さないとした。本連載(1)で伝えたとおり、新基準施行後も一部の対策は済ませていなくても可となる。その猶予期間は「3~5年」(更田豊志委員)となるようだが、地震・津波対策ではオマケはなさそうだ。 ▼くせ者の活断層定義 対策の注目点は活断層の扱いで、原子炉建屋など重要施設(Sクラス)の真下に動く恐れがある地層のズレがあれば、「活断層」とみなして運転を認めないとした。Sクラスには防潮堤などの津波防護施設も含まれ、再稼働したい電力会社には難題が突きつけられた格好だ。 規制委はすでに6原発で断層を調査中だが、大飯原発(福井県)では専門家調査団が非常用取水路(Sクラス)の真下にあるズレを「地滑り面」とする見方もあり、結論が出ていない。骨子案がそのまま新基準となれば、大飯は即運転停止となるように思える。だが、この真下がくせ者だ。骨子案では「露頭」という表現が使われ、ズレが地表やその付近で目視できる状態を指しているのだ。 活断層が施設の地下深くに潜り込む場合、想定される揺れ(基準地震動)を調べて運転の可否を決める。だが、原子炉建屋の場合、真下を掘るのは危険だ。規制委事務局は「付近や地下構造の精密なデータを集める」と言うが、データ集めはあくまで電力会社。正しい判断につながるかは不透明だ。そもそも活断層の有無に関係なく、原発を強い地震が襲えば、07年の新潟中越沖地震で柏崎刈羽原発(新潟県)が重大事故になりかけた例もある。 ▼「40万年前」貫けず 活断層とみなす上でもう一つのポイントは、ズレがいつ起きたのかだ。骨子案では、旧基準の「約12~13万年前の活動性が否定できないもの」に付け加えて、「明確にならない場合は約40万年前までさかのぼって評価する」とした。 検討チームの責任者である島崎邦彦委員長代理は、骨子案づくりが始まった昨秋の段階では、国の地震調査研究推進本部の定義である40万年前とする意向だった。ところが、最終的には旧基準が残った。それでも多くのマスコミは「40万年前まで拡大」と伝えたため、事務局は報道向け説明会で「原則は12~13万年前」と修正を試みた。 この背景には、島崎氏が前出の断層調査のリーダーとして敦賀(福井県)、東通(青森県)の両原発に「活断層がある可能性が高い」と結論付けたことがある。電力会社や立地地域の首長らは反発しており、基準を厳しくすれば、さらに紛糾すると考えたとみられる。 だが、それはかえって紛糾の火種となりかねない。柏崎刈羽や泊原発(北海道)では約20~24万年前の活断層の存在が指摘され、西日本では12~13万年前の地層が残っていない敷地も多い。本当は活断層があるのに「ない」とする結論が出る恐れがあるのだ。 事務局は「12~13万年前をしっかり調べれば、それ以前もつかめる」とするが、それでも「なぜ40万年前まで調べないのか」との疑いは残る。そうなれば、「科学的に判断する」という規制委の本分はもう保てない。 ▼「運用が重要だ」 地震・津波対策がまとまった1月29日の会合で、検討チームの徳山英一高知大学特任教授は、島崎氏にお願いをした。「私は旧原子力安全委員会の検討にも加わったが、12~13万年前の定義の意味すら分からず、じくじたるものがあった。断層の学問は未熟なので、(新基準の)運用が重要になる。きちんとした審査のマニュアルをつくってほしい」。 今後の課題がこのセリフに集約されている。 |
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