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2013年 2月 2日

「新安全基準」の骨子案固める 
拙速さの裏に再稼働の下心?

原子力規制委員会

 原子力規制委員会は1月31日、原発の「新安全基準」の骨子案を固めた。新基準は7月18日施行の見通しで、田中俊一委員長は「これで福島第一原発のような事故は起こらない」と断言した。本当かどうかは、骨子案の中身はもちろんのこと、検討作業の間に見えてきたものを確かめるべきだろう。4回にわたって検証する。

 昨年10月からほぼ毎週開かれた検討チーム会合は、1月31日で13回目を数えていた。仕切り役で規制委の更田豊志委員は、この日で矢継ぎ早な作業が一区切り付くことで気が緩んだのか、こんな発言をした。

 「骨子案を全部当てはめれば電力会社は対応に3、4年かかり、炉を止めたままだと新しい炉を始動するよりも別の懸念(トラブル)が起こる。原子力をやめるなら別だが、利用する限りは最も小さいリスクを取るのが重要だ」

 規制委は1月中の骨子案固め、3月末までの条文化、7月の新基準施行というシナリオをかたくなに守っている。「改正原子炉等規制法の7月施行時に合わせるため」(事務局の原子力規制庁)としているが、更田発言はそれが建前であると勘ぐりたくなるのには十分すぎた。案の定、傍聴していた市民からは「最も安全なのは原発を動かさないことだ」とヤジが飛び、チームの外部専門家である勝田忠広・明治大准教授も「早期に再稼働する議論に見られてしまう」といさめた。

▼対策義務に「抜け道」

 骨子案では、日本の原子力規制において初体験となる地震・津波や放射能漏れの重大事故(シビアアクシデント)への備えを義務付けた。格納容器の破損防止へ放射性物質の放出を抑えながら排気する「ベントフィルター」を複数設けることや、緊急時対策所(免震棟)の整備といった、国内ではほぼ取られていない対策も求めている。そのまま新基準となれば、電力会社は再稼働のために時間も金もかけなくてはならない。

 ただ、骨子案には“抜け道”がある。テロ対策に備える「特定安全施設」については「信頼性をさらに高めるもの」として、施行後も猶予するとしたのだ。ここにはベントフィルター1基分など、重大事故対策に深くかかわるものが含まれる。事務局サイドからは「緊急時対策所も猶予すべき」との意見さえ聞かれる。

 昨夏の大飯原発再稼働の際、政府はベントフィルターなどが必要としつつ後で設ければOKとした。抜け道ができれば二の舞いだ。それゆえ31日の会合では、勝田准教授が「できることは全てやるべき」と懸念し、それへの反論が冒頭の更田発言だったのだ。

▼とりまとめ日もミス連発

 更田チームは地震・津波対策を検討する別チームと比べても拙かった。専門家6人のうち勝田氏らを除く4人は電力会社から寄付を受けていた。電力会社には2回ヒアリングした一方、原発に批判的な学者へは案をとりまとめるまで一度もなかった。31日の最終案でも番号の記載ミスがあり、専門家が記述の分かりにくさを次々指摘。事務局の責任者が、更田氏の認識と違う説明をして、両者が問答する場面もあった。

 原発に批判的な市民団体は1月23日に事務局へ抗議し、更田氏にも伝えるよう求めた。だが、担当者はメモをほとんど取ることもなく「パブリックコメント(意見公募)が2回あるので出してほしい」と言うばかり。パブコメは2月に1回目があるが、期間は約2週間しかない。

 次回からは骨子案の具体的な中身を見ていく。 
                                

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