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2013年 2月28日

「貸し渋り」防止へ監視を 
〈金融円滑化法が3月で終了〉上

当面は現行の運用を維持

 貸し渋りや貸しはがしを防ぐため、金融機関に対し、貸し付け条件の変更に応じることを定めた「中小企業金融円滑化法」が3月末で期限を迎える。金融庁は当面、現行の運用を維持する姿勢だが、行政指導が徹底されずに倒産が相次げば、日本経済へのダメージは計り知れない。しっかりとした監視が必要だ。

▼倒産が劇的に減少

 円滑化法は、長引くデフレ不況で苦しむ中小零細企業が、資金繰りに行き詰まることを防ごうと、2009年末にスタートした。

 それまでは、利息の軽減や元本の返済据え置きなど、貸し付け条件の変更を申し込むと、「不良債権」と扱われる恐れがあり、多くの中小零細企業が不況下でも重い負担を余儀なくされていた。

 これを改めるため、同法は金融機関に対し、(1)条件変更に応じる努力義務(2)実施状況の開示と当局への報告義務――を課すとともに、返済不能になった場合に信用保証協会が債務を肩代わりする制度の充実も盛り込んでいる。

 効果は大きく、これまでに中小企業総数の約1割にあたる約44万社が利用したと推計される。12年9月末までの利用実績は、申し込み件数の9割強という高い割合だ。

 帝国データバンクによると、09年から12年までの年間倒産件数は、1万3306件から1万1129件へ2割近く減少した。国際金融論を専門とする鳥畑与一静岡大学教授はここに、円滑化法の「劇的な効果」を指摘する。

 これが今年の3月末で終了する。

▼行政指導だけでは不安

 今後の対応への不安が高まるなか、昨年11月、当時の中塚一宏・金融担当相が談話を発表した。貸し付け条件を変更しても「不良債権」と扱わない枠組みは「恒久措置」とする内容。自公政権下でも当面この運用を維持する方針だ。

 とはいえ、金融機関の法的義務はなくなる。金融関連産別の担当者は「融資の現場では『円滑化法があるから申請には全て応じる』という対応ができたが、行政指導だけになると『必ずしも…』という意識が生じることも考えられる」と話す。貸し手側には、「政府の方針が今後変更され、ハシゴを外されるかもしれない」との不安もつきまとうという。

 金融業界の専門紙「ニッキン」は昨秋、都内にある従業員15人の零細企業が、メーンバンクである都市銀行に3度目の貸し付け条件変更を断られ、地元の信用金庫に肩代わりしてもらうことで決着したケースを報じ、類似案件の増加を指摘していた。

 都銀や地銀でつくる全国銀行協会は2月、4月以降もこれまでと同様の融資を行う姿勢を表明。不安の解消に努めているが、前述の担当者は都内零細企業で起きたようなケースは「今後じわりと増えるだろう」と語る。

▼中小の経営に追い打ちか

 同法の終了は労働運動の課題でもある。

 中小金属関係の産別では昨年以降、加盟組合で「一時帰休」件数が震災直後の水準を超えた。今後予想される電気料金の値上げや原材料高騰などのコスト増にも頭を痛める。そのうえに、資金繰り問題が追い打ちとなる事態は何としても避けたいところだ。

 全労連は再延長を訴える構え。同時に融資を滞らせないための行政の指導・監督の徹底を求める。

 円滑化法は、利用企業に対し「経営改善計画」の策定と達成を前提に、貸し付け条件の変更を受け入れる制度。柔軟な運用がされてきたが、今後、厳格化することも考えられる。「資金繰りに不安な企業は、労使が経営改善についてしっかり話し合い、知恵を絞ることが大切」と関係者は強調する。

 そして、忘れてはならないのは、中小零細企業の経営難の主因は長引くデフレにあるということ。融資の円滑化は側面支援に過ぎない。縮小した内需の回復・拡大による経済再生は待ったなしだ。

                             

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