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2013年 7月16日

    「法改正の必要、全くない」
STOP!生活保護切り下げ(上) 

元ケースワーカー 田川英信さん

 厚生労働省は、廃案となった生活保護「改正」法案を秋の臨時国会に再提出する方針です。法案では、これまで口頭でも認められた申請が原則として書面が必要となります。厚労省は「法律が変わっても申請は従来どおり。省令で対応する予定だ」と説明しています。しかし、現場の職員も含め、市民は制度の大元である法律を参照します。細かな通知まで見られず、口頭で申請できないと誤解される恐れがあります。

 例えば、2008年にそれまで実費が支給されていた「通院交通費」を、災害現場や離島からの緊急搬送などに限る局長通知が出されました。反対運動によって必要な交通費を支給できるよう「東京も『へき地』にあたる」「100円でも『高額』にあたる」と厚労省は解釈を変えました。しかし、現場は大混乱し、「都会は『へき地』ではない」「5000円以下は『高額』ではない」と、支給しない例が相次ぎました。通知そのものが撤回されていなかったからです。今回も同じことが起きるでしょう。

▼狙いは保護費減額だ

 「改正」では、申請には原則として諸資料を添付することも求められました。生活に困窮した人が窓口にやってきたとき、年金手帳、残高記録をつけた預金通帳、アパートの契約書、給与明細、診断書などの書類をそろえられる人は100人中1人もいません。最初から全てというのは、素人に棒高跳びをさせるくらいハードルの高いことです。

 現在は書類がそろってなくても申請を受け付け、食べる物がないなど緊急性が高い場合は、その日のうちに保護開始を決定したり、当座のお金を渡したりします。それは申請が済んだから出せたもの。行政は申請できるか分からない時点では出しません。

 不正受給が問題とされていますが、今でも福祉事務所は預金口座や不動産などの調査をきちんと行っています。預貯金の調査は、金融機関の事情で半年かかる場合もあり、調査が終わってから開始決定するのは現実的ではありません。申請時に資料の添付を義務付けることの本当の狙いは、生活保護費の削減です。

▼「扶養義務」は日本だけ

 親族への扶養義務の強化も盛り込まれていますが、効果は疑問。親族が社長であっても、会社は大赤字で本人の収入が全くなかったり、年収が1000万円あってもローンをたくさん抱えていたりすることは珍しくありません。扶養できるか徹底的に資産を調査すれば、親族間の人間関係は悪化します。

 扶養できるケースも極めてまれです。20~30件問い合わせて、ようやく1件が仕送りすると回答する程度。それも「月5000円」とか「ボーナスで2~3万円」とか苦しい生活の中での仕送りです。中には生活保護を恥だと思い、申請者に「首をくくれ」と言う人もいます。

 米国やイギリスでは、たとえ高額の収入があっても、成人した親子・兄弟関係で扶養義務は負いません。高い税金を払っているから、国がその税金で支えればいいという考えです。扶養義務とは本来、「社会的地位にふさわしい生活をした上で、余力があれば行うもの」であることを、政府は国民に知らせなければなりません。

 再提出される法案は、生活保護を受けようとしている人に対する嫌がらせ以外何者でもありません。今までと同じ対応を続けるのなら、法律を変える必要はないはず。行政の「水際作戦」を認めず、日本の貧しい社会保障を根本的に変えなければいけません。(連合通信)  
                  

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