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2013年 2月18日

再エネ停滞、遠のく脱原発 
経産省の電力改革案

政権交代で先送り

 経済産業省の有識者会議が2月8日に電力市場の改革案をまとめた。小売り自由化や発送電分離など、従来の制度を大胆に変える内容だが、安倍政権は実施時期を当初の予定よりも先送りする方針だ。

▼3段階で刷新

 経産省案は3段階で市場を刷新するプランだ。

 第1段階の15年には「広域系統運用機関」が設けられる。現在は電力各社が受け持つ地域の需給を自前で調整するのが原則で、不足懸念があると、すぐ計画停電が持ち出されてきた。

 運用機関は、需給情報を集め、地域を超えて電力を融通する役割を担う。そのために必要となる、地域間の連系線や長距離をつなぐ送電網の整備計画を立て、全国的に効率よく電気が行き届くようにも取り組む。再生可能エネルギーのうち、風力は送電網の未整備が伸び悩みの原因だが、計画どおりに進めば、こうした問題もクリアされる。

▼小売り自由化の好影響

 第2段階は、16年に解禁される小売り自由化だ。

 今のところ、一般家庭はマンションの一括契約など特例を除き、市場新規参入組の新電力(PPS)などから電気を買えない。新電力のシェアは11年度で3・6%。電力会社の独占が続いている。

 自由化後は誰もが電力会社以外から電気を買える。企業や行政機関では電力契約を新電力に切り替える動きが出ているが、同じことが可能になる。消費者が選択肢を持てば、今までなかった事業者間の競争が生まれ、独占解消につながりそうだ。

▼発送電分離の利点多く

 第3段階は、18年から20年をメドに行う発送電分離だ。現在の電力会社は発電、送配電、小売りの3部門を持つが、これを「発電・小売り」「送配電」の別会社に分ける。先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)で、分離されていない国は日本とメキシコだけだ。

 昨年7月から再エネの全量を電力会社が固定価格で買い取る制度が始まったが、再エネ事業者の電気が送電網で送れない事例が相次いでいる。電力会社が「円滑な供給」のために接続を拒んでいるのが背景だ。ただ、今は需給の情報を電力会社が独り占めしているのが実態。他者はその理由が正しいのかを確かめられない。

 発送電分離が実現すると、第1段階で登場した運用機関が送配電会社を監視する。これで再エネ接続拒否は減りそうで、需給の正確な情報もオープンになることが見込める。分離とともに、電力会社が経費を電気料金に転嫁できる「総括原価方式」も廃止になる。今後原発の「新安全基準」施行されると、対策費がかさむのは確実だが、この転嫁も難しくなる。再稼働断念の可能性は高まるだろう。

▼今後骨抜きの可能性

 経産省は当初、改革案を電気事業法改正案に盛り込み、可能な限り早く行う予定だったが、第1段階だけを改正案に入れ、以降は付則に記載するにとどめる方針に変えた。改革が遠のいたのは自民・公明両党への政権交代が大きいとの見方が支配的だ。今回の法改正は、業界への配慮と「電力会社寄り」という批判をかわす狙いがあるようだ。

 だが、自民党は衆院選で「3年間で再エネを最大限導入」と公約した。今回の変更で、再エネ普及や脱原発をもたらす小売り自由化は3年後、発送電分離は最短で5年後。食い違いは明らかだ。これらの実行には法整備が改めて必要になるので、情勢次第で改革が骨抜きになるかもしれない。 

                             

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