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突出する「マンガで街づくり」 |
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復興の起爆剤になれるか? |
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3月にリニューアルしたミュージアム「石ノ森萬画(まんが)館」が、にぎわいを見せている。 漫画家・石ノ森章太郎さん(故人)の作品である「仮面ライダー」や「サイボーグ009」のキャラクターを立体模型や映像で楽しめる施設で、5月の大型連休には入場規制が掛かるほど。警備員の男性も「これまで1日1300人ぐらいが最高だったけど、2000人は来たんじゃないか」とうれしそうだった。 この盛り上がりは、石巻が復興するための起爆剤になり得るのだろうか。 取材した5月18日も、県外からの来場者をたくさん見かけた。 ▼近隣店舗にプラス効果 萬画館を訪れるために東京から夫婦で来たという男性(48)は、「仮面ライダー世代なので、とても懐かしかった。満足度は高い」と高く評価。岩手に向かう途中で立ち寄った兵庫県の女性(37)も「コアなファンでなくても楽しめる」と太鼓判を押した。 萬画館に来た観光客は、近隣の店舗にも足を伸ばしているようだ。精肉店主の佐藤和典さん(38)は、「食べ歩きできるメンチカツが萬画館目当ての観光グループによく売れている」とプラス効果を挙げた。 ▼市民は親しみ感じず その一方で、萬画館に全く親しみを感じない市民も少なからずいる。「行ったことがない」(29歳男性)「石ノ森作品を読んだことがない。世代が違うでしょ」(32歳男性)という声が聞かれるのだ。 萬画館が建てられたのは12年前の2001年で、今では駅周辺にキャラクターのモニュメントがあふれているにもかかわらずだ。市は「マンガで街づくり」に観光客誘致を託しているが、親しみを感じない市民からすれば、その事業がどうしても突出している感じがするらしい。事業関係者の一人は、そんな雰囲気を生んでしまった建設当時のいきさつをこう振り返る。 「2代前の菅原康平市長が、石ノ森氏との会談をきっかけにアイデア化したものを急いで始めたのが実情だったのです」 ▼「働きかけしなかった」 誤解されがちだが、石ノ森氏は県北部の登米市出身で、石巻には子どものころによく訪れ、その体験を後の作品づくりに生かしたという。市長はこのつながりに飛び付いて「マンガで街づくり」を進めたわけだ。この点について、石巻市職労の鷹見慶一郎副委員長に聞くと、「市民に向けてマンガに親しみを持ってもらえるような働きかけを十分にしてこなかった」との答えが返ってきた。 ただし、マンガによる地域活性化は成功例がある。水木しげるさん作「ゲゲゲの鬼太郎」のキャラクターの銅像を路地に置くなどした鳥取県境港市だ。 ▼若手店主の思いを聞いて モニュメントをたどりながら改めて石巻の商店街を歩くと、閑散としたシャッター通りが目に付く。 萬画館効果を認める精肉店主の佐藤さんも「今が転換期。単に店が並んでいるだけでは、もう商店街は生き残れない」と危機感を隠さない。そのために、若い店主が集まって「店ごとに集客できる魅力」を持てるアイデアを出し合う場を設けた。 何をもって復興とするかは人それぞれだが、やはり第一は自分や家族の生活再建だろう。しかし、そればかりを追い求めれば、最悪の場合は何も進まなくなり、やがて街は衰退してしまうかもしれない。佐藤さんたちのような試みも始まっている。市民が一丸となって、大きな復興の流れをつくれる日が早く来てほしい。 |
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