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貧困層との比較は違憲の恐れ |
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厚労省生活保護基準部会報告 |
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厚生労働省の部会が生活保護の水準引き下げを容認する報告書を出した。その根拠となったのは、一般低所得層の消費実態との比較数値である。しかし、この手法で憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」ができるのかどうか、大いに疑問だ。 生活保護は、憲法25条の「生存権」保障を具体化したもので、経済的困窮者の生活を支え、国が自立に向けた支援を行う制度。いわば国民の「命綱」だ。今回の引き下げは、国民全体の所得階層のうち、下位10%の消費実態と比べて保護水準の方が高かったためだという。一見もっともらしい理由だが、問題点が多い。 ▼生計費調査も無視 生活困窮世帯の中で実際に保護を利用できているのは約2割。保護を受けたくても、福祉事務所の窓口で追い返されたり、恥だと思って申請していない人が多い。低所得層の生活費より保護水準の方が高くなるのは当然だろう。 審議では、複数の専門家が独自の調査報告を行い、最低生計費として月16~21万円は必要とする研究成果を示した。現行の保護水準13万8839円(東京23区などの場合)は逆に引き上げるべきなのだ。ところが、報告書はこの成果をことごとく無視した。家財調査でも下位10%所得層のエアコンや携帯電話、学習机、パソコンなどの生活必需品の普及率は平均と比べてかなり低い。社会的・文化的生活レベルを保障しようとする視点が欠けたものと言わざるを得ない。 ▼不合理な手法変更 これまで生活保護水準については、(1)平均的一般世帯(2)低所得世帯(3)保護世帯──の消費支出の3つを比べて、その均衡が維持されるよう調整してきた。低所得層との比較だけで決めていたわけではない。しかも、下位10%との比較は07年の前回検証時、全委員が「慎重であるべき」と異例の見解を発表した経緯がある。今回の変更について報告書は何ら合理的な説明をしておらず、最初から引き下げを意図したものともいえる。生活がままならない貧困実態にまで保護水準を引き下げるのは憲法違反の恐れが強い。 生活保護水準は就学援助や住民税の非課税基準、自治体によっては国民健康保険料の減免基準にも連動している。国民生活に深刻な影響が及ぶのは必至であり、政府は貧困解消にこそ取り組むべきだ。 |
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