京都府職員労働組合 -自治労連- Home 情報ボックス 府政NOW 京の写真館 賃金 料理 大学の法人化



2013年 5月11日

町民「戻っても仕方ない」 
福島・双葉町の区域再編

これで本当に復興なのか?

 福島原発事故で警戒区域に指定されている福島県双葉町が、5月28日に再編されることが決まった。これについて、前町長の井戸川克隆氏はインタビューでこう断じた。

 「今の時期に区域再編なんて、まるで狂気の沙汰。原発から出る汚染水の問題も解決していないのに、(年間被曝量)20ミリシーベルトで住民を戻そうとする行為。人権を全く無視しているとしか思えない」

 井戸川氏は昨年12月、政府の区域再編を頑なに拒み、議会から全員一致で不信任を叩きつけられた経緯がある。再編決定までの流れは、政府に反対した人間を排除するようだった。

▼町の提言、国避ける

 双葉町では5月28日午前0時、全20地区のうち人口の4%(約250人)に当たる中野・両竹・中浜の3地区が「警戒区域」から「避難指示解除準備区域」に変わる。3地区はその日に立ち入り禁止区域バリケードを外され、自由に出入りできるようになる。

 町は4月24日、国が提示した区域再編案を認めることを正式に表明し、政府が再編日程を出すのを待っていた。大型連休明けの5月7日には、政府の原子力対策本部の審議官と町長、議長、副議長が会談。その結果、ついに再編が動き出すことになった。町側は会談で「避難指示解除準備区域の環境整備」や「住民に対する賠償や生活支援の継続」など7項目にわたる提言をしたが、審議官は明確な答えを避けた。

 それでも現町長の伊沢史朗氏は言う。「双葉郡内(の自治体で)一番遅れていた再興がようやく進んだ」

▼賠償額も抑えられ

 区域再編により、双葉町は人口4%だけが切り離される。3地区の住民は、東京電力からの賠償金も他の町民より低く抑えられ、例えば5人家族の場合、家財の賠償額だけで最大195万円の差が出てしまう。

 「一律同じ保障にしてもらいたい」と話す住民は多い。58歳の男性は「4%だけ帰還できても(家が津波で流されて)何もないのだから戻っても仕方がない」とこぼし、80歳の女性も「若い人には戻ってほしくない。井戸川前町長が言っていることが正しい」と言い切った。

▼「すぐ戻りたい」は1割

 政府は、事故から6年後の2017年に、全町一律で避難指示を解除するという。だが、町が実施した町民アンケートでは、「戻るための条件」の一つに「放射線が十分に低くなること」を挙げた人が75・3%もいた。さらに「そもそも町に戻りたいとは思わない」が30・4%だったのに対し、「自宅の補修・改善、インフラ復旧が終わればすぐに戻りたい」と答えたのは10・3%にとどまった。

 今後、町民が「戻りたい」という意思を持てなければ、除染もインフラ整備も無駄になる。今回の区域見直しが果たして本当に町の復興につながるのだろうか。

                         

府職労ニュースインデックスへ