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2013年11月21日

 情報隠し拡大の懸念消えず
特定秘密保護法案

二転三転する国会答弁

 特定秘密保護法案の国会審議で、大臣答弁の修正や閣僚同士で意見の食い違いが相次いでいる。依然として秘密の範囲が曖昧であることを露呈し、政府による恣意(しい)的運用への懸念が払拭(ふっしょく)できていない。

 安倍政権が成立をめざす秘密保護法案は、国の安全保障にかかわって特に秘匿が必要な情報を「特定秘密」に指定し、秘密を漏らした国家公務員や不正に知り得た人に最大懲役10年の罰則を科す内容だ。日米同盟強化を推進する安倍首相は「各国情報機関と情報や意見の交換を行うには、秘密を厳守することが大前提だ」と強調している。

▲閣内で見解食い違う

 最大の問題は、秘密の範囲が曖昧で時の権力者が国民の知るべき情報を隠ぺいできてしまうことだ。法案は、特定秘密の対象を(1)防衛(2)外交(3)スパイ活動(4)テロ活動の防止──に限るとしているが、何を秘密にするかは行政機関の長、つまり大臣の判断に委ねられている。指定の妥当性をチェックする第三者機関の設置もなく、原発やTPP(環太平洋経済連携協定)など政府にとって都合の悪い情報が隠されても、検証は不可能だ。

 そうした不安を裏付けるかのように政府答弁は迷走している。TPP交渉が特定秘密に当たるかどうかについて森雅子内閣府特命担当大臣は当初、「国家や国民の安全保障に関わる事項であれば秘密になる」と語ったが、後にこの発言を否定。ところが、岡田広内閣府副大臣が11月1日、「個別具体的な検討が必要だ」と述べ、秘密になりうる可能性を示唆した。第三者機関の設置についても、森大臣が「謙虚に受け止め、検討したい」と答弁した2日後に「今後の課題だ」と前言を翻している。

▲正当な取材活動も制限

 秘密が無制限に拡大されかねず、国民の「知る権利」や報道・取材の自由を侵害する事態につながる。法案は、国民の基本的人権を侵害しないよう配慮を明記しているが、仮に記者が内部告発で秘密を知り得た場合、逮捕される可能性がある。

 そうなれば権力による弾圧を恐れたマスコミが萎縮し、国民に真実を伝えることができなくなる。森大臣は「報道機関のオフィスに対し家宅捜査することはない」と断言する一方、谷垣禎一法務大臣は「検察が判断すべきだ」として、閣内の意見が分かれた。議論の拙速さは否めない。

▲戦争する国づくりが加速

 これまでの国会審議で自民党は、野党の修正協議に応じる姿勢を見せ、11月18日には首相関与の強化を求めるみんなの党と大筋で合意した。特定秘密の指定や解除について首相が指揮監督し、首相が指定基準の策定に関わった上で閣議決定を行う内容だが、特定秘密の対象は41万件にも上る。首相に個別の判断ができるはずがない。

 国会では、外交・安全保障の司令塔となる「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案」が審議されている。安倍首相は「NSCの機能を発揮させるためには秘密保護法が不可欠」と言っている。両法案が成立すれば、より米国と一体化した軍事協力体制が展開可能となり、国民が知らないまま戦争への道を切り開くことになる。

▲原発事故の反省生かせ

 今でも公務員には守秘義務が課されており、違反すれば罰則もある。法案の必要性はないはずだ。政府は福島第一原発の事故に対応する際、国民に必要な情報を十分に発信せず不信感を高めた。むしろ情報公開制度を推進すべきだ。「秘密」の拡大でなく、行政の透明性を高めて国民に情報を広く開示することが、民主主義の原則だ。
 

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