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2013年 1月21日

引き下げ認める報告書を了承 
生活保護費で厚労省の部会

「生活できない」と怒りの声

 厚生労働省の生活保護基準部会は1月18日、生活保護水準の引き下げを容認する報告書をとりまとめた。夫婦と子ども2人世帯の保護水準が、所得の低い同じ4人世帯の生活費を14・2%上回っていることなどを根拠にしている。同省は今年4月の実施を予定するが、法律家や利用者からは反対の声が上がっている。

 生活保護の利用者数は2011年7月に過去最高を更新して以降、増加傾向が続き、昨年9月時点では213万人に。これに対し政府は増大する保護費の抑制を検討。5年に一度、保護水準の検証を行う同部会で一昨年から、食費や光熱費など日常生活に必要な支出に対する「生活扶助」の見直しを進めていた。

▼子育て世帯ほど、影響大

 報告書は、所得を高い順から並べて下位10%の低所得世帯の消費実態と現行の保護水準を比較した結果、60歳未満の各世帯で保護水準の方が高かった。子育て世帯など世帯人数が増えるほど乖離(かいり)が大きくなる。一方、高齢世帯については、保護水準が低所得世帯を下回った。報告書を受け、厚労省は水準引き下げの検討を進める。

 同日開かれた同省の別の部会では、「保護の有期化」や「親族への扶養義務に関する説明責任の強化」、「医療費の一部自己負担」について、賛否両論を併記した報告書案も示された。

▼餓死・孤立死の増加も
 
 事実上、水準引き下げを求める報告書に対し法律家や保護利用者は反対の声を上げている。

 「生活保護増加の背景にある貧困と格差の拡大に手を付けないで、水準を切り下げようとするのは本末転倒だ」。こう語るのは、「STOP生活保護基準引き下げアクション」呼びかけ人の一人である宇都宮健児弁護士。本来ならば保護を利用できる世帯のうち、「実際に利用しているのは厚労省の推計でも2割前後だ」。残りの8割近くは、保護を受けずに貧困状態で生活しているのが実態で昨年、全国各地で経済的に困窮した人が餓死・孤立死する事例が相次いだ。「利用を抑制して水準を引き下げれば、餓死・孤立死がさらに増える」と懸念する。

 生活保護を利用している30代の女性は「冬場はガス代のやりくりが大変で厚着をしたり、風呂もシャワーだけで済ませたりしている。洗濯機が壊れても買い替えはできない」と決して楽ではない暮らしぶりを明かす。精神疾患の悪化で失業し、生活保護を受けた。仕事を少しずつ始めているが、立ち直れたきっかけは仲間とのつながりだったという。基準が引き下げられれば「(交通費などを減らすため)友人や仲間とのつながりもなくなる。元気になる力を奪われてしまう」と漏らした。

 昨年7月まで保護を受けていた埼玉県川口市在住の高野昭博さん(57)は「生活保護は出口が見えないのが一番つらい。当時でも生活はギリギリだった。水準が切り下げられれば生活できず、自立への気持ちを維持できなくなる。切り下げは反対だ」と語った。 

                                

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